- 2026/08/17 06:50 掲載
【単独】再現可能? トヨタ出身社長に聞く、年10億円を生んだ「生成AI活用」成功法則(2/2)
生成AI活用でも「人を減らさない」ワケ
昨今はAIの進化によって人間の仕事が奪われるという論調もある。しかし、旭鉄工はAIによる人員削減を目的としていない。「人を減らすためにAIを利用するのではなく、人がやらなくて済む仕事をAIにやらせています。そうすれば、人は付加価値の高い仕事に取り組めます。それに工場における改善も、現場で人がやらなければいけません」
データの収集や整理、定型的な文書の作成などをAIに任せても、設備の配置を変える、作業手順を見直す、現場の従業員と調整するといった改善は、人間が実行する必要がある。
「製造現場における労務費の削減は限界がありますが、付加価値向上なら上限がありません。AI活用における成果を考慮すれば、付加価値の向上を目指した方が良いでしょう。付加価値を高めるために人が活動するのが旭鉄工の哲学であり、AIファースト経営です」
旭鉄工が重視しているのは、あくまで付加価値の向上である。AIはそのための手段にすぎない。人がやらなくても良い仕事をAIに任せ、人間は判断、創造、改善といった本来取り組むべき仕事に集中する。
2026年6月に出版した木村氏の著書『AIファースト経営』からも読み取れるが、企業独自の哲学を明確にし、それを現場の行動にまで落とし込むことが、AIファースト経営の本質と言えるだろう。
旭鉄工の事例を自社で「再現する方法」
旭鉄工の事例を、自社でも参考にしたいと考える企業は多い。そうした企業に対し、木村氏は「AI活用を始める際、最初から大規模な全社展開を目指すべきではありません」と助言する。まずは、小さな暗黙知を形式知化することから始めるべきだという。たとえば、管理職が部下から報告を受けた際、どのような点を確認し、どのようなアドバイスをしているのかを書き出す。その判断基準を整理してAIに参照させれば、「AI上司」を作ることができる。
部下は、上司に書類を提出する前にAI上司に内容を確認してもらう。明らかな誤りや不足を事前に修正できれば、上司と部下の双方に発生する手戻りを減らせるという。
「企業の生成AI導入において、最初から全社展開するのは失敗する可能性が高いでしょう。失敗と言っても、結果的にうまくいかなかっただけです。ある方法に挑戦して、ダメだと分かります。それを大げさに捉える必要はないと思います」
旭鉄工では、小さく試すための意思決定も迅速に行う。
「現に旭鉄工では数十万円から100万円程度の予算なら、稟議書は必要ですが、厳しいチェックまでは行いません。稟議に時間をかけて遅れてしまうよりも、実際に試してみた方が良いという考え方を徹底しています」
生成AIのような新しい技術は、導入前に効果を正確に予測することが難しい。それにもかかわらず、事前に厳密なROI(投資収益率)を求めすぎると、不確実な数字を理由に取り組みが止まってしまう可能性がある。
「ROIを問うのは簡単です。そしてROIを計算しても、やらない理由に使われてしまう。やらない理由を探しても仕方がないと思います」
木村氏は、費用対効果の検証そのものを否定しているのではない。導入前の試算に長い時間をかけるのではなく、失敗しても影響の小さい範囲で実行し、その結果を次の判断材料にするのが良いと話しているのだ。この試行錯誤の速さが、旭鉄工のAI活用を支えているのだろう。
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