• 2026/06/15 掲載

パワポ資料が消えた…MIXI「生成AIフル活用」がエグすぎる、年10億円削減の衝撃の裏側

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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会社全体で生成AIを活用できれば、絶大な成果が得られるはず。皆がそう考えるが、実際にこれを実現したのがMIXIである。なんと、生成AIの利用率が99%、月間削減時間は約1万7600時間、年間コスト削減額は10億円という驚異的な成果をたたき出したからだ。システム開発からデザイン、知財法務まで、あらゆる業務が生成AIによって根本から変わりつつある。しかも、その効果は単なる効率化にとどまらず、採用基準や人事評価にまで波及しているという。このような全社展開による大きな成果はどのようにして実現したのか。AIの展開を取りまとめる取締役 上級執行役員の村瀨 龍馬氏に話を聞いた。
取材・執筆:マスクド・アナライズ

マスクド・アナライズ

AIスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。現在は独立して、イベント登壇、研修・セミナー開催、書籍執筆、企業向け生成AI・ChatGPTの導入活用支援などを手掛けている。支援実績は北海道庁、日立製作所、JR西日本、シーメンスヘルスケアなど。著書に「会社で使えるChatGPT」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」がある。

書籍「会社で使えるChatGPT」発売中

  撮影:大参 久人
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MIXI 取締役 上級執行役員 村瀨 龍馬氏

生成AI活用でぶち当たった「3つの壁」

 MIXIでは生成AIの登場以前から、AIにおける研究開発を進めており、スマホゲームやアプリなどで活用してきた実績がある。しかしChatGPTの登場以降は経営における影響も考慮して補助を出すなど普及を狙ったものの、進まなかった経緯がある。村瀨氏はこう振り返る。

「AIの普及が進まなかった3つの障壁として、『データの登録などで安全な利用における懸念』『個人だけの利用にとどまり周りにスケールしない』『法律や知財における不安』がありました」

 AIを会社全体で取り組むのは、MIXIに限らず失敗や苦労は避けられない。当初は村瀨氏を中心に全社横断組織「AI推進委員会」を発足し各部署に状況をヒアリングするという、現場からのボトムアップ型による普及を進めていた。

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【画像付き記事全文はこちら】生成AI活用について語る村瀬氏

 しかしボトムアップ型の限界に直面。そこで、取締役や部室長の全員が参加する合宿を実施して、自ら手を動かし、生成AIとの対話も繰り返しながら、「部室ごとに現状の課題を洗い出し、それをAIでどう変えていくか」を議論した。その上で、各部門のリーダーが「自部署をAI前提の働き方へ転換する」方針や具体的な活用方針を宣言し、持ち帰ったという。

 さらにAIによる施策において、実施した量と完了した量を毎月計測するなど、トップ主導の下、全AI活用に向けた環境を整備。全員がAIを使いこなせることを目標に掲げた。急激な変化が求められるため、社内での反発も想定されたが、これは杞憂に終わったと話す。

 「MIXIが他社さんと比較して恵まれている点は、従業員が素直だったことです。みんなが、AIは効果が出る技術だと理解してくれていたからでしょう。加えて、ガラケーがスマホに移り変わったように、我々は変わらなければいけない時期を体験しています。そこにトップダウンの意思表明と効果を実感したボトムアップが合致して、AIの利用率を3カ月で99%にすることができたと思います」

 ちなみに残りの一部は、個人情報や他社IPなど慎重な取り扱いが必要な情報を扱う業務、またはスポーツチームの会場運営など現場性の高い業務が中心だという。
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パワポ資料が消えた?「10億円削減」の中身

 同社では、ChatGPTとGeminiはEnterprise版を契約しており、Claudeも含めて常に最新バージョンを利用可能。これはAIの性能が短期間で入れ替わるため、常に最高のツールを使えるように環境を整えるためだ。

 一方で、AIにおける費用対効果が気になるところだが、MIXIでは十分な成果を出している。結果としては、あらゆる取り組みの積み重ねにより、年間で10億円削減という成果を達成した。ではどのような取り組みで年10億円の削減に至ったのか。

 王道で言えば、システム開発におけるプログラミングや、デザインにおけるクリエイティブなどでの効果が挙げられる。この点は、スマホゲームによるガチャの結果画面や、時間経過を表現したイメージ映像(タイムラプス)などで工数削減を実現した。

 また、動画像生成が可能なAIのAdobe Fireflyで、コンテンツ制作の費用を削減。従来は1カ月程度かかる作業が、数日で完了した事例もあるという。さらには、外注先に依頼していた作業も自社で制作することで時間と予算の削減につなげた。

 大きく変わった業務として村瀨氏は、知財法務を挙げる。知財法務は複雑な契約などの確認に手間がかかり、社内から迅速な対応を要望される場面もある。そこで、知財法務の担当者がAIを活用して、専用ツールを自作するようになった。

 以前はエンジニアに開発を依頼し、仕様をまとめて完成させても、要望とズレてしまうことがあった。知財法務の専門知識におけるギャップもあり、担当者が望むものを作るには大きなコストと時間がかかる。

 一方、担当者自身が開発することで、業務に合わせて最適なものを作れるようになったという。もちろん情報管理などのセキュリティ対策は、専門部署が入念に対応している。このような情報の扱い方や業務の進め方における変化も、成果として挙げている。

 「以前はバラバラだった社内の情報が整理されて、AIによって自分たちが解釈しやすい形で対話できるようになりました。いわば物事を理解する仕組みが変わった印象です。また、PowerPointによるスライドを作る必要がなくなり、文章が中心になりました。お陰で見栄えの良いグラフが掲載された資料を作る手間がなくなり、文書やデータをAIに読み込ませて把握したい部分だけを取り出せるようになりました。このような見栄えの良い資料から文章が主体になった点も成果と言えます」 【次ページ】AI前提で変わった「採用基準と人事評価」
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