- 2026/09/04 06:50 掲載
【単独】DXは禁句、紙も残す…福岡の運送会社が見つけた、中小企業DXの「意外な正解」(2/3)
連載:「日本の物流現場から」
DXは禁句? その「明快な理由」とは
「実は社内ではDXという言葉を使わないように心がけてきました」と、陽佑氏は振り返る。理由は明快である。「DX=システム導入」だと思われ、「止めるべき仕事を洗い出す」ことに発想が向かわないことを避けたかったからだ。入社後、陽佑氏は業務の棚卸しを行い、業務の簡素化と効率化、標準化に着手した。
「『以前、社長から依頼されたから』といった理由で継続していた業務が散見されました。こういった業務、従業員の立場ではなかなか『止めましょう』とは言い出しづらいですよね。なので『なぜこの業務が必要なのか?』という目的を再検証し、不要だと判断したものについては、私の方から社長をはじめとした担当者の上長に申し入れました」(陽佑氏)
柳川合同が目指したのは、最新システムを次々に導入することではなく、まず「そもそも、この仕事は必要なのか」を問い直すことだった。実際、営業所ごとに異なっていた給与計算のプロセスを標準化し、二重三重に発生していたチェックを削減。FAXや電話中心だった案件管理もGoogleスプレッドシートに置き換え、荷主との情報共有を効率化した。
ただし、陽佑氏自身が高度なデジタル技術を駆使して、すべてを変えたわけではない。むしろ「自分が動く」ことを抑え、従業員が自ら改善できるようサポーターに徹した。IT研修もタイピングやショートカットといった基礎から始め、現在では従業員自身が業務アプリを作るまでになっている。
紙のほうが効率的なら紙を残し、デジタル化そのものを目的にしない。企業の実情に合わせて無理なく改善を積み重ねることこそ、「デジタルの奴隷」にならない中小企業のデジタル化における1つの最適解と言えそうだ。
陽佑氏が手掛けた「2つの改善事例」
- 給与計算のプロセス 営業所によって異なっていた運用プロセスを標準化したという。
- Googleスプレッドシートを用いた案件管理 一般論だが、運送業界ではFAXや電話を用いた仕事の依頼などが常態化している。当然、やり取りには手間がかかる上、「聞いた」「聞いていない」のような伝達ミスが発生し、さらなる業務負担を生む悪循環となっていた。
たとえば、関東エリアでは燃料データやフェリーの利用実績、その他経費などの最終確定データがそろってから給与計算を行っていたが、本社では現場サイドの希望により毎日仮データを計上して計算していた。
このやり方では、二重三重のチェックが必要となるなど、より大きな手間が発生する。そのため、月次の給与計算は確定データがそろってから1度だけ行うように業務プロセスの標準化を図ったそうだ。
同社では、Googleスプレッドシートを使ってこれらのプロセスをデジタル化した。まず荷主が、用意されたスプレッドシートに貨物や運行経路などの情報を入力する。柳川合同でこれを確認し、受諾する場合には担当する車番やドライバーの情報を共有するようにした。
こうすれば荷主側・運送会社双方の負担を軽減できる上、入力された情報は請求管理などにも活用できるとあって、とても好評だそうだ。
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