株式会社日立産業制御ソリューションズ 提供コンテンツ

  • 2025/06/23 掲載

日立産業制御ソリューションズ社長が語る、「OT×デジタル」でめざす“次の”安全、安心、快適な社会

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日立産業制御ソリューションズは、日立グループの中で産業・流通・社会インフラ分野における中核的な役割を担う企業だ。特に医薬、自動車、ガス、化学などの製造現場の運用に必要な設備・システムや、水道、道路、警備、交通などの社会インフラを最適に動かすための運用・制御、さらに各現場で稼働するエッジデバイスの開発技術を含めた「OT(Operational Technology)」に強みを持つ。そんな同社が、今後の成長のカギとして掲げるのが「OT×デジタル」だ。同社 取締役社長 上田元春氏に、その狙いと今後の戦略について聞いた。
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株式会社 日立産業制御ソリューションズ
代表取締役社長
上田元春氏

50年にわたり培ってきたOTのノウハウと3つの事業の柱

 当社は、日立製作所の産業分野向け情報制御システム事業部門やグループ会社など、5つの事業体が統合する形で、2014年に設立された会社です。前身組織のルーツをたどると約50年にわたって、製造業や社会インフラの分野で「制御システム」に携わり、現場の運用を支えるOT(Operational Technology)の技術と知見を蓄積してきました。

 当社の現在の事業の柱となっているのは「産業ソリューション事業」「社会・公共ソリューション事業」「コネクティブエンジニアリング事業」の3つです。

 「産業ソリューション事業」では、大手企業から中堅企業のお客さまに対して、制御に関わるソリューションを提供しています。たとえば、ガスや食品、化学などのプラント用システムの他、医薬や自動車製造現場向けの「MES(Manufacturing Execution System)」と呼ばれる製造実行システムなどが該当します。

 「社会・公共ソリューション事業」では、上下水道、道路、電力、交通といった社会インフラの制御システムに加え、警備分野では高速で人物を検出・追跡するシステムなど、人々の暮らしの安全や安心を支えるための幅広い技術を展開しています。500サイト以上の納入実績があり、安全安心快適な社会づくりに貢献しています。

 「コネクティブエンジニアリング事業」は、いわゆる「組み込み開発」の領域です。もともとは家電に組み込まれるマイコン(電気機器の制御のための電子部品)から始まり、携帯電話やスマートフォンを経て、現在では自動車業界の車載ソフトウェアまで広がりました。自動車業界の自動運転、電動化、画像応用などで培った技術でシステムコンサルティングからエンジニアリングまで幅広く支援しています。

 現在、自動車業界は「CASE(注1)」と呼ばれる潮流の中で、大きな変革期を迎えています。自動車が持つ各種機能のソフトウェア化が進む中で、自動運転、EV(電気自動車)、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル:ソフトウェア定義型自動車)、さらには車内エンターテインメントなど、これらを支える技術やソリューションの提供にも力を入れています。

※注1:Connected(コネクテッド:自動車のIoT)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング・サービス:所有から共有へ)、Electric(電動化とカーボンニュートラル)の4つの領域の頭文字を組み合わせた言葉

OT×デジタルでめざす「次の安全・安心・快適な社会」

 現在、「OT×デジタルでワクワクする未来をつくる」というパーパスを掲げて、当社は事業を展開しています。これまで50年にわたり培ってきたOTの技術や知見は、当社の最大の強みと言えます。そこに生成AIをはじめとする最新のデジタル技術を掛け合わせることによって、「次の安全・安心・快適な社会」の実現を目指します。

 もちろん、今の社会が不安定だというわけではありません。しかし、これまでの社会では経済性や効率性が重視される一方で、現場で働く人々の「働きがい」や「幸せ」、つまり“ウェルビーイング”はあまり重視されてこなかったのではないかと感じています。

 現場で働く人々のウェルビーイングの向上こそが、これからの企業にとってますます重要なテーマになると考えています。その実現に向けて、「OT×デジタル」の技術が大きな力になると確信しています。

 日本社会が現在直面している課題のひとつに、少子高齢化による深刻な労働力不足があります。労働力不足の問題はいずれ、道路や上下水道などの社会インフラのメンテナンスにも重大な悪影響を及ぼします。残念ながら、すでにインフラの老朽化に伴う事故が発生している状況にあります。

 さまざまなリスクの高まる社会インフラ領域において、当社は長く携わってきた実績があります。特に画像処理技術に強みを持っているため、たとえば高速道路のトンネル内の設備など、広いエリアを限られた人数で担当するような、予防保全の分野で当社は貢献できると考えています。

 日本社会の課題としては、ベテラン社員の定年退職の増加によって、貴重な技術やノウハウが失われ、事業継続が困難になるというリスクの高まりもあります。さらに、技術やノウハウは人に宿るものですが、人は察知や判断の精度のばらつきがどうしても出るものです。たとえ熟練者でも、その日の体調や環境によって判断結果が変わることは珍しくありません。

 熟練者の技術やノウハウなどのナレッジのデジタル化によって、察知や判断のばらつきを抑え、再現性を高めることが可能になります。その結果、経験の浅い方々を支え、判断のブレを抑えられるようになり、技術継承の断絶を極小化することができます。

 さらに、現場で働く人々の労働環境は、危険と隣り合わせということも珍しくありません。高所や閉所での作業、機械や危険物に囲まれての作業、厳しい温度環境の中での作業などは存在します。

 これまでは人の意識によって、注意喚起や危険回避行動を行って事故の発生を防いでいましたが、労働災害は今でも後を絶ちません。極度のストレス状態の中での作業が継続することで、現場で働く人々の心理的負担は大きいものでした。

 当社がめざす「次の安全・安心・快適な社会」では、現場で働く人々の"心理的な安心"も重要な要素だと考えています。「OT×デジタル」の力によって、危険の察知や回避行動を自動化できれば、安心な作業環境が実現できるはずです。

「OT×デジタル」を実現するための重要なポイント

 「OT×デジタル」を実現する上で重要なのは、「データに基づいた意思決定やアクション(データドリブン)」でしょう。

 これはOTと非常に相性の良い考え方となります。たとえば、OTの領域では、機器に取り付けられたセンサーから取得したデータに基づき、配管や設備のバルブの開閉を操作することはすでに当たり前に行われています。

 これまでOT領域で行われてきた「データ→制御」というサイクルに、最先端のデジタルを掛け合わせ、データの価値を高めることで、OT領域でこれまでにない高度なアクションを導き出すことが、当社が「OT×デジタル」でめざす世界なのです。

 これは、日立製作所が提唱している「Lumada(ルマーダ)」の考え方から来ています。Lumadaは、お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称です。



 Lumadaでは、日立のドメインナレッジと強化したAIによる価値創出をめざしています。具体的にはデジタル化した機器・システムなどの「デジタライズドアセット」から集めたお客さまのデータを、お客さまの運用に関する知識(ドメインナレッジ)とAIを組み合わせた「デジタルサービス」を通して分析します。その結果、得られた新たなデータやノウハウが「デジタライズドアセット」にフィードバックされることで、機器・システムや現場をさらに高度化させます。「OT×デジタル」を通して当社がめざすのは、このサイクルを確立させていくことです。

 もちろん、それは簡単なことではありませんし、具体的なゴールの姿は業種によっても異なります。したがって、今後はお客様の業種ごとに最適なユースケースを数多く作っていくことが重要になると考えています。

 たとえば、当社には医薬品・医療機器メーカー向けとして、多くの導入実績と高いシェアを誇る製造・品質管理システムの「HITPHAMS(注2)」、製造ラインを構成する複数の設備の情報を一元管理して監視・制御する「DI-PF(注3)」といったシステムがあります。複数の設備を一括管理することで、「すべてのデータがライフサイクルを通じて一貫性を保ち、完全かつ正確である」という医薬製造に求められる基本的な価値を起点に、新たな価値を創造しようとしています。

※注2:日立の医薬品・医療機器製造業向け製造・品質管理システム
※注3:データインテグリティプラットフォーム

 同様に、自動車や食品、化学など、さまざま産業分野で、「OT×デジタル」そしてLumadaの具体的なユースケースを作っていかなければなりません。

 当社だけではなく、日立製作所が掲げる「One Hitachi」で日立グループが一丸となり、さまざまなお客さまと協力・連携しながら、プロジェクトを進めていきたいと考えています。

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日立産業制御ソリューションズHPのトップページ https://www.hitachi-ics.co.jp/

生成AIを活用した"匠の伝承"の取り組み

 「OT×デジタル」を推進する上で、生成AIは、欠かすことのできない重要なテクノロジーだと考えています。実は当社は、1990年代のニューラルネットワークを皮切りに、AI技術(深層学習、組合わせ最適化問題など)の研究を進め、AI活用のソリューション提供にも長年取り組んできた実績があります。

 もちろん、最新の生成AIについても、さまざまな取り組みを展開しています。たとえば、現在は生成AIを活用した図面レビューを利用する設計の効率化に取り組んでいます。具体的には、設計図面をAIに読み込ませ、問題のある箇所や改善点を指摘してくれるシステムを開発していきます。従来はベテランの職人、いわゆる"匠"と呼ばれる高度なスキル・経験を持つ職人でなければ判断できなかったことであっても、かなりの精度で再現できるようになっていきます。

 当社には、現場に近いOT領域での膨大なデータを蓄積しています。データと生成AIを組み合わせることは、さまざまな可能性があり、今後の成長には欠かせないものだと考えています。

 また、生成AIの利用を「あたりまえ」のものとするために、社内に「Generative AI センタ」という専門部門を作り、積極的に研究開発・実装を進めています。さらに、生成AIに関する社内コンテストを開催するなど、できるだけ多くの従業員が日常の業務で生成AIに触れ、どんな活用ができるイマジネーションを膨らませる機会を作る取り組みも積極的に推進しています。

めざす「売上1,000億円」までの道筋

 会社全体としては、今後、日立グループとして大きな成長が見込まれていると考える「バイオ医薬品」「バッテリー」「半導体」「データセンター」の4つの分野に注力していく考えです。

 この4つの分野に対して、当社の事業の3つの柱である「産業ソリューション事業」「社会・公共ソリューション事業」「コネクティブエンジニアリング事業」を掛け合わせ、新しいビジネスを創造していく、というのが基本的な戦略となります。

 もちろん、当社の事業はバッテリー製造そのものと直接関わっているわけではありませんが、バッテリーを製造している企業、その部品や素材を作っている企業、といったようにバリューチェーンを細かく分解して見ていくと、当社が貢献できる領域が見えてくるのです。

 たとえば、バッテリーであれば、素材を作る過程では化学プラントの制御技術が必要ですし、バッテリーを組み立てる過程ではFAの制御や検査の技術が必要になるはずです。当社が培ってきたOTの技術・知見は、こうした領域で必ず貢献できると考えています。

 そのために、あらゆる業界で多様な技術や経験を持つ3つの事業部から将来を担う人材を集め、4分野のバリューチェーンのどこに当社の勝機があるのかをしっかりと見極めたうえで、計画を立て、具体的なプロジェクトに落とし込みを進めています。

 「OT×デジタル」の成長戦略を積極的に推進することで、2030年に全社売上1,000億円を目指したいと考えています。
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今後の日立産業制御ソリューションズの取り組みに注目したい
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