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  • 2026/03/02 掲載

日本生命「パンク寸前」からの逆転劇、FAQ閲覧を24倍にしたサービスデスク刷新の秘訣

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約7万人の従業員を抱える日本生命保険(以下、日本生命)で、サービスデスクが「パンク寸前」の危機に直面していた。DX推進でシステムが増え続け、問い合わせは年間13万件超。さらに追い打ちをかけたのが、7年に一度の大規模システム刷新だ。過去の経験則から、問い合わせは1日最大2000件へと激増することが確実視されていた。15名のコアスタッフでは到底対応できない──この絶体絶命の危機を、日本生命はどう乗り越えたのか。変革を牽引したIT統括部の片岡 真一氏に、プロジェクトを支援したNTTテクノクロスの鈴木 貞弘氏が話を聞いた。
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日本生命のサービスデスク刷新、そのポイントとは

7万人が利用するサービスデスクがパンクする?

NTTテクノクロス 鈴木 貞弘氏(以下、鈴木氏):今回、日本生命さまのサービスデスクの刷新をご支援させていただきました。そもそもサービスデスクの刷新を必要とされていた背景について、お聞かせください。

日本生命保険 片岡 真一氏(以下、片岡氏):我々が運営するサービスデスクは約15名のコアスタッフで約7万人の従業員からの問い合わせを受けていました。その問い合わせ数は2021年度で年間約13万件に上っていました。その後も、DXの推進や働き方の多様化に伴って社内システムが増え、問い合わせはさらに増え続けていました。

 加えて、2026年には7年に一度の大規模な情報システム基盤刷新が迫っていました。これは、全職員の端末やITインフラを全面的に入れ替えるものであり、過去の経験から1日300~400件の問い合わせが1000~2000件と4~5倍に増大することが見込まれていました。この事態に備えるには、サービスデスクの仕組みを早急に刷新する必要があったのです。

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問い合わせ件数の増加で対応が困難になることが想定された

鈴木氏:従来のサービスデスクには、どのような課題があったのでしょうか。

片岡氏:問い合わせや申請の窓口が複数に分かれていて、どこに問い合わせたらいいのか、どこに申請したらいいのかが分かりにくい仕組みになっていました。FAQもありましたが、検索しないと必要な情報が出てこないため、ユーザーにとっては自己解決が難しく、結果としてサービスデスクに直接聞いたほうが早いというのが実態でした。

鈴木氏:なるほど。利用者目線で見ると、問い合わせ先が不明確で、FAQも活用しづらい状況だったと。その改善がポイントだと考えたのですね。

国内の大規模事例がなくても「飛び込めた」理由

鈴木氏:サービスデスクの刷新では、最終的に「Salesforce Employee Service」を選択されました。その理由は何だったのでしょうか。また、特に気に入った機能もあればお聞かせください。

片岡氏:いくつかのソリューションをユーザビリティ、コスト、開発体制などの観点で比較して、Salesforce Employee Serviceを選択しました。特に開発においては、我々システム運用部門だけで対応できるノーコードの開発環境が魅力的でした。もちろん、セールスフォースの豊富な知見を持つNTTテクノクロスの支援が受けられることも大きかったと思います。

 たとえば今回導入したSalesforce Employee Serviceは新製品ということもあり、ユーザーテスト中に「提供された機能が想定した挙動と異なる」こともありました。こういった課題についても、セールスフォースに限らず海外製のパッケージをこれまでに多数扱ってきたNTTテクノクロスの経験から、全体のオペレーションに影響を与えない代替案の提供をいただきました。また、大幅な改修を必要としないように、利用部門との機能提供の仕様に関する調整を含む「QCDバランス」を担保する調整を実施いただいたことで、プロジェクトを安心して進めることができました。

 機能としては、問い合わせの入力中に関連するFAQがリアルタイムに表示される「ケースデフレクション」が、ユーザーの自己解決を促進できるという点で魅力的でした。また、AIを初めとする先進的な機能を活用できることも、Salesforce Employee Serviceを選択した理由の1つです。

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日本生命保険
IT統括部 課長代理
片岡 真一氏

鈴木氏:Salesforce Employee Serviceを選んでいただいた当時は、まだサービスのリリース直後で国内の大規模導入実績がない状態でした。そうした環境でほぼ「ファーストペンギン」として飛び込むことへの不安はありませんでしたか。

片岡氏:もともと日本生命は、システムに対しては慎重な会社です。ただ、以前からCRMとしてのセールスフォースは活用していましたので、それほど不安はありませんでした。すでに利用実績があるため、Salesforce Employee Serviceによってその機能が拡張されるという感覚でした。もちろん、セールスフォースとのパイプが太く、実績が豊富なNTTテクノクロスに支援していただけることも心強かったですね。

 たとえば、ファーストペンギンならではのハードルとして、「事前に想定していた機能が予定通りリリースされない」といったことがありました。そのときも、NTTテクノクロスがセールスフォース社とのつながりを活かして、米国本社の製品責任者などの関係者たちとリリース時期の確認や機能提供の有無をタイムリーに確認していただけたことで、システムの完成イメージに近づけることができました。

バラバラだった窓口を統合して「ITエントランス」に一本化

鈴木氏:新しいサービスデスクのシステムの全体像について、改めて説明していただけますか。

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NTTテクノクロス
ビジネスイノベーション事業部
プリンシパルエバンジェリスト
鈴木 貞弘氏

片岡氏:システムについては、前述したように問い合わせ入力中に関連するFAQが表示される機能を実装することで、ユーザーの自己解決を大いに促進できました。また、サービスデスク刷新に合わせてバラバラだった窓口を「ITエントランス」という1つの窓口・組織に統合しました。これにより、システムと組織の両面からユーザーが迷わない体制、担当者の業務負荷を軽減できる仕組みを実現できました。

鈴木氏:今回、システムの開発は日本生命さまのシステム開発・運用を担うニッセイ情報テクノロジーさまが担い、NTTテクノクロスはそれを支援する体制でした。我々の支援についてのご評価をいただけますか。

片岡氏:日本生命のことを、細かいところまでよく理解していただけていたと思います。先述したような問題が起きたときも、自分ごとのように真摯に対応していただけました。

鈴木氏:ありがとうございます。今回のプロジェクトでは、日本生命さまの業務を支援していたメンバーも体制に入り、システムと業務の両面で支援させていただきました。7万人が利用する大規模なシステムの刷新ですので課題も少なくありませんでしたが、何とかプロジェクト成功までご支援させていただくことができました。

数値に表れた劇的効果と生み出された“自己解決文化”

鈴木氏:サービスデスクシステム刷新の具体的な効果についてお聞かせください。

片岡氏:今回のプロジェクトでは、成果を把握するために3つの指標を用意しました。1つはFAQの参照回数です。従来は1017件/月だったのが2万4242件/月と約24倍に増えました。2つ目は定型的な質問の照会数です。これは、本来は自己解決してもらいたい質問の数を調べたものですが、124件/日から61件/日と約51%減少しました。3つ目は二次要請の作業時間です。これはユーザーから問い合わせを受けたサービスデスク担当者が問題を解決するために要した時間のことで、約46%削減できました。

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FAQの参照回数は大幅に増加し、単純質問の照会数は激減。ユーザーの自己解決が進んだ

鈴木氏:いずれも目覚ましい数値ですね。ユーザーの自己解決率が上がり、担当者の業務負荷も大幅に低減されたことがよく分かりました。他にも注目すべき成果はありましたか。

片岡氏:サービスデスク担当者によるOPナレッジ(社員が参照可能なFAQ)の更新頻度が、22件/月から61件/月と約2.7倍に増えました。従来はFAQを登録してもあまり見てもらえなかったのですが、新しいシステムではFAQを参照するユーザーが増えて自己解決できていることが明確になったことで、担当者が積極的に登録するようになったのだと思います。

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オペレーターの視点でも業務負荷が下がり、OPナレッジの更新頻度も激増している

鈴木氏:担当者のマインドも変わったということですね。

片岡氏:そのとおりです。今回の開発では、サービスデスクの担当者も画面設計に積極的に参加するアジャイル的な手法をとりました。そのシステムがリリースされて、現実にユーザーである従業員の自己解決に貢献できていることが実感できたことで、スタッフには“自分たちのシステム”という意識が芽生え、育っていると感じます。FAQの登録数が増えているのも、その現れだと思います。その意味で「自己解決文化」を育むよい循環が生まれつつあると感じます。

 ちなみに親しみを持って利用してもらえるよう「ITエントランス」用にイメージキャラクターも作りました。名前は「えっちゃん」といいます。また、問い合わせの入力画面には、四季のイラストも添えられているんですよ。

鈴木氏:「堅い、慎重」というイメージが強い日本生命さまですが、こうした遊び心は素敵ですね。ほっこりします。

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「自己解決文化」を育む好循環が生まれつつある

生成AI、AIエージェントを活用した今後の展開

鈴木氏:サービスデスクの今後の展開についてお聞かせください。

片岡氏:生成AIの活用を検討しています。現在は作成したFAQを表示しているだけですが、問い合わせの入力中にその意図や目的を理解して、さまざまな情報を参照・統合したうえで先回りして回答する仕組みを考えています。さらに、FAQそのものを作ることにも生成AIを活用できるのではないかと思います。

 また、最近、イベントで見た「Agentforce Voice」(注1)にも興味を持ちました。文字を入力するだけでなく、音声で会話するだけで必要な手続きや操作をAIが実行し、問題が解決できるようになると素晴らしいですね。ぜひ活用してみたいと思います。

注1:セールスフォースが開発した自律型AIエージェント「Agentforce」の音声版

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鈴木氏:サービスデスクやコンタクトセンターの領域と生成AI、AIエージェントはとても親和性が高いですね。また、Agentforce Voiceにも注目していただいて、ありがとうございます。我々はNTTグループですので、音声領域は得意としています。たとえば、NTTの研究所で開発した音声認識技術は解析が難しいとされる方言にも対応しています。ぜひ、ご提案させてください。最後に、今後、我々に期待されることがあれば、お聞かせいただけますか。

片岡氏:今後も最新の技術を紹介していただき、日本生命にとってどういう価値があるのか、どう役に立つのかを、第三者の目線で教えていただければと思います。

鈴木氏:我々はいわゆるベンダーではありますが、製品ありきではなく、常にお客さまの目線でご提案することを重視しています。今回はSalesforce Employee Serviceでしたが、決してセールスフォースの製品だけにこだわっているわけではありません。今後も「日本生命さまにとって本当にこのサービスでよいのか、この機能は必要なのか」を常に考えながら、ご提案・ご支援していきたいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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