海外拠点が「不正の温床」に…ブラックボックス化を解消「クラウド型ERP×AI」の正体
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今も昔も変わらない「海外展開の共通課題」
海外展開に際し、情報収集などの面で以前よりハードルが下がっているのは確かだが、一方で今も昔も変わらない共通の課題もある。それが、財務・会計といったバックオフィス業務のブラックボックス化だ。
結果、日本本社が状況を正確に把握することは困難になる。売上は増えているのか、利益は出ているのか、事業は伸びているのかそうではないのか……などなど。正確な数値を把握できなければ、経営判断は勘と経験に頼らざるを得ない。
ではなぜブラックボックス化が起きるのか。
海外展開するには、当然だが、最初に海外拠点を作らなければならない。そこで、社内の営業力に長けた優秀な人材が責任者として赴任することが多いが、その責任者は財務や会計などのバックオフィス業務、現地の税制や商習慣には必ずしも精通していない。このため、現地のローカルマネージャがこうした業務をサポートするのが一般的だ。
こうして海外拠点の土台作りがスタートするが、責任者は数年で交代することが多い。このため、バックオフィスに関わる業務がローカルマネージャの属人的なナレッジとして継承され、ブラックボックス化が進みやすいのだ。
長年、海外展開する企業をシステム面で支えてきたビジネスエンジニアリング 執行役員 プロダクト事業本部 副事業本部長 クラウドビジネス推進本部 本部長の関口 芳直氏は、こう指摘する。
「2、3年で交代する駐在員にとって、『慣れるのに1年、施策を考えるのに1年、実行し始めた半年で交代』というサイクルでは、根本的な改善に着手するインセンティブが働きにくいです。結果として、『現地経理マネージャーが出してくる数字は信頼するものの、その数字がどのような要素で構成されているかは分からない状態』が継続し、さらに深刻化していきます」
不正取引の温床に…ブラックボックス化「見えざるリスク」
このため、現地で最もメジャーなシステムが利用されやすい。現地での人材確保の面で有利になるが、バックオフィス業務のブラックボックス化がさらに進みやすくなる。
バックオフィス業務やシステムのブラックボックス化と、それによって起きる経営判断に必要な情報の欠如は、海外進出を目指す企業が直面する大きな課題だ。
「海外拠点の財務状況が分からない、もしくは月に一度は報告が上がってきても、それが本当に正しいかどうか分からないとなると、不正取引の温床になるリスクがあります。それを防ぐために、我々にお声がけいただくケースも少なくありません」(関口氏)
さらに、年々厳しくなるセキュリティについて指摘するのが、同社 プロダクト事業本部 クラウドビジネス推進本部 GLASIAOUS推進部 部長の鈴木 將路氏である。
「最近は海外拠点でもクラウドやスマートデバイスを業務で使うのが当たり前になってきました。このため、特にB2B領域におけるセキュリティ要件がますます厳しくなっています。システムを選定する際にも、機能の前にまずはセキュリティ要件を満たしているかどうかが問われます。しかも、国・地域によって要件が異なるので、それに適切に対応することも欠かせません」(鈴木氏)
課題解決のカギ握る、「GLASIAOUS」と「コンソーシアム」の存在
特にアジア圏での利用が多く、タイ、ベトナム、インドネシアなどの7つの言語と主要国の国別要件に対応。もちろん、海外展開で必要になる販売、在庫、購買、債権・債務、会計などのバックオフィス業務をカバーし、セキュリティ関連の各種認証も取得している。
ビジネスエンジニアリングが掲げるビジョンは、単なるシステム提供にとどまらない。約30年にわたる知見を基盤に、日本企業、特にリソースが限られる中堅中小企業が直面するガバナンス構築という構造的課題を根本から解決することを目指している。
テクノロジーの力で国境を越えた経営の透明性を高め、日本企業が本来の強みである事業創造に集中できる環境を構築すること、それが同社の使命である。そして、そのビジョンを具現化する中核となるのがGLASIAOUSなのだ。
中でも注目したいのが「GLASIAOUSコンソーシアム」である。ここに、海外拠点管理に強い理由が隠されている。同社 プロダクト事業本部 GLASIAOUS推進部 シニアコンサルタント 春山 雄一郎氏は、次のように説明する。
「会計や人事給与などの仕組みや慣習、税制などのルールは国・地域によって異なります。このため、各国の会計分野に強いプロフェッショナル企業とIT関連企業を組織化し、市場のニーズを共同で検討して製品やサービスに反映する仕組みを構築しました。それが『GLASIAOUSコンソーシアム』です」(春山氏)
コンソーシアムで「AI前提」の業務プロセス実現へ…
同社では「業務プロセス自体をAI前提で再設計する」という明確なAI戦略がある。それは、単なる「AI機能の追加」ではない。こうした戦略の下、すでにGLASIAOUSにはさまざまなAI機能が実装されているが、GLASIAOUSコンソーシアムはこれらの開発に大きく関わっているのである。
「各国の税制対応はもちろん、法律上は問題ないが『ずっとやってきたオペレーション上のルール』への対応まで機能化しています。人材流動性の高い海外市場において、AI前提の組織体制は人材流出への対応力を高めると同時に、ブラックボックス化した現地オペレーションから必要な情報を吸い上げ、次期駐在員へのスムーズな引き継ぎを支援できます」(鈴木氏)
AI機能は、GLASIAOUSコンソーシアムの会員であるマイクロソフトが提唱する『AIアイデアソン』(注1)というアプローチでアイデアを出し、それを基に開発。開発した機能はコンソーシアムで評価し、その結果を基にブラッシュアップしている。
「ただAI機能を作るといっても、何から作ればいいのか、どんな機能が本当に役立つのかという疑問があります。我々は業務プロセスに焦点を当て、実際の現場で何に不安やフラストレーションがあるのかを洗い出すところから始めています」(関口氏)
AIアイデアソンから生まれた、もしくは開発中の主要なAI機能が次の3つである。
- GLASIAOUS Copilot
- GLASIAOUS Vision Copilot(AI-OCR)
- GLASIAOUS Analytics Copilot
注目すべき「3つのAI」、作業時間1/3の特大効果も
「GLASIAOUS Vision Copilot」は、いわゆる「AI-OCR」である。請求書をはじめとするさまざまな紙の書類をスキャンし、デジタル化してシステムに取り込む機能だが、通常のAI-OCRと異なるのは背後で各国の慣習やルールを学習したAIが働いている点だ。
「たとえば、ベトナムでは数字の区切りにピリオド(.)、小数点にカンマ(,)を使います。このためベトナムの請求書や領収書を一般的なAI-OCRは正しく認識できません。しかし、GLASIAOUS Vision Copilotであれば、ベトナムの書類であることを認識した上で、正しくデータを読み取れます」(鈴木氏)
こうした各国の慣習、ルールが学習されているため、言語が異なっても書類の読み取り精度が非常に高い。実際に、GLASIAOUS Vision Copilotによってシステムへの入力作業時間が1/3に短縮できた事例もあるという。
「GLASIAOUS Analytics Copilot」は、マルチAIエージェント機能だ。まだPoC(Proof of Concept:技術検証)段階ではあるが、複雑な業務の自動化、経営や財務の戦略立案・実行の支援を目指している。春山氏によれば「AIがより身近になった時に、ERPはどうなっているべきかを考えて、AIが正しくERPと連携できるようにエージェント機能などを含めて、機能の設計・開発しています」とのことだ。
自動化だけでない「重要視点」
「GLASIAOUS Vision Copilotによって入力作業が1/3になりますが、同時にデータが積み上がることで読み取り精度が向上し、ミスも減っていきます。そのメリットについて現場の方々に話を伺うと、心理的負担の低下を挙げる方が非常に多いのです。こうした『人の不安を和らげる、低減する』という観点でAI機能を検討・開発することも重要だと思います」(関口氏)
ビジネスエンジニアリングでは、今後もGLASIAOUSのAI機能を強化していく計画だ。現在は業務の効率化がメインだが、その先には業務の完全自動化、さらに経営戦略や意思決定の支援までも見据えている。
「将来的にGLASIAOUSは、入力業務から意思決定までを支援できる有能なアシスタント、パートナーのような存在となり、人間の役割はより付加価値の高い業務へシフトできるようになっていきます」(関口氏)
それはつまり、冒頭に述べた海外展開を目指す日本企業が直面する課題が解決することを意味する。海外展開を成功させるカギは、もはや現地任せではなく、AIを活用したデータドリブン経営への転換にある。関心があれば、ぜひ同社にお問い合わせいただきたい。