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  • 2026/08/26 掲載

7名で2,000名を支える──ガラパゴス化した開発基盤を変えた「可視化改革」のリアル

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 金融システム開発を手がけるシンプレクスでは、1,500~2,000名規模の開発組織を抱えながら、技術選定から開発プロセスまでを現場に委ねる強い裁量文化を持ちます。その自由度が競争力の源泉である一方、チームごとに異なる開発基盤が乱立する“ガラパゴス化"という課題も生まれていました。

 その結果、各開発基盤での生産性が不透明になっており、改善活動に繋げられていませんでした。その状況を変えようとしたのが、システムディベロップメントコンピテンシー(技術者による全社横断組織)に組成されたタスクフォース です。

 感覚や定性的な声に頼らず、定量データで開発パフォーマンスを可視化し、現場が自発的に改善へ動く仕組みを作る。金融ならではの厳格なセキュリティ要件という高い壁を越えながら、その挑戦を推進した西山氏・山中氏・前田氏の3名に話を伺いました。

<プロフィール>

西山 健太郎氏
シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー プラットフォームエンジニア

2023年中途入社。全社の開発基盤(GitHub・CI/CD)の運用保守チームでマネジメントを担当。7名体制で2,000名規模の開発者を支えながら、開発生産性の可視化と開発者体験の向上と生産性可視化の推進に取り組む。

山中 健輔氏
シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー プラットフォームエンジニア

2021年入社。銀行向け大規模プロジェクトの開発環境・デプロイ基盤を担うコアチームに所属し、6名体制で数百名のユーザーを支える。

前田 貴史氏
シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー エンジニア/技術広報

2010年新卒入社。現場プロジェクトを担当しながら、技術広報として社外への情報発信を牽引。外部イベントへの積極的な参加を通じて、技術広報として会社の認知向上にも従事。

7名で2,000名の開発基盤を支える現実

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シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー プラットフォームエンジニア
西山 健太郎氏

── まず、シンプレクスの開発組織の規模感を教えてください。

西山氏:全社で1,500~2,000名規模の開発者がいます。私たちプラットフォームチームは、その全員が使う開発基盤(GitHubやCI/CDの実行環境)を、7名で運用・保守しています。

── 7名で2000名規模を支えているんですね。それは相当なプレッシャーではないですか?

西山氏:ただ、シンプレクスには各プロジェクトの現場に裁量を委ねる文化があって、技術選定も開発プロセスも基本的には現場が決めます。なので私たちが全部面倒を見るというよりは、現場が自律的に動ける基盤を整えることが役割です。

ただ、その裁量の大きさが、別の課題を生んでいました。

── どのような課題でしょうか?

西山氏:各チームが同じような問題を抱えながら、それぞれ独自の解決策を持つ、いわゆる“ガラパゴス化"が進んでいました。現場ごとに最適化された結果、全体としては非効率になっている。しかも、どのチームがうまくいっていて、どのチームに課題があるのかが、外から見えない状態でもありました。

山中氏:私のプロジェクトでも実感していました。資材管理においてはGitLabのメトリクスしかなく、JIRAもオンプレミスで動いているため、詳細な数値計測が難しい。何かを改善しようにも、現状を定量的に把握する手段がない。そういうもどかしさをずっと感じていました。

前田氏:現場にいると特に感じるんですよね。「このチーム、なんか詰まってそうだな」という感覚はあっても、それを裏付けるデータがない。感覚で動くしかない状態が続いていました。

── その状況を変えようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

西山氏:一番大きかったのは、メンバーが個別に取り組む改善アクションの効果が見えず、再現性のあるサイクルを回せないことでした。定性的な声だけではなく、主観に頼らない「共通の物差し」として業界でも認知されているFour Keysを用いて、200以上あるプロジェクトのパフォーマンス差分を定量的に見える化しようと考えました。

山中氏:私はそもそも、何かしたいことや異常が発生してから、それが解消されるまでのリードタイムが、そのままビジネスアジリティに直結すると思っています。だから、そのリードタイムを計測できる状態にすることには、ずっと関心がありました。西山さんの取り組みを聞いて、「これは自分のプロジェクトでもやってみたい」と思いましたね。

── 最初はどのように可視化を進めていたのですか?

西山氏:最初はFour Keysを可視化するツールを自作していました。ただ、単一のリポジトリ単位でしか計測できず、複数チームにまたがる横断的な可視化や権限管理の面でどうしても限界がありました。作り続けることの運用負荷も積み重なっていった。

── 自作の限界を感じていた、と。

西山氏:そうです。そのタイミングで出会ったのがFindy Team+でした。開発生産性をテーマにしたカンファレンスで活用事例を知り、「これなら自作の限界を超えられるかもしれない」と感じました。GitHubとの連携で手軽に導入でき、複数チームを横断して可視化できる点が、自分たちの課題にフィットしていると思ったんです。

前田氏:私も同じイベントに参加していたんですが、他社の事例を聞けば聞くほど「うちでもやらなければ」という気持ちが強くなっていました。西山さんが動き始めたとき、「一緒にやりましょう」とすぐ思えたのは、そういう下地があったからですね。

現場の共感と経営層の承認を、同時に取りにいった


── Findy Team+の導入を決めてから、社内推進はどのように進めたのですか?

西山氏:まず動いたのは、現場の共感者を増やすことです。社内には「システムディベロップメントコンピテンシー」という横断的な技術組織があって、そこに所属する技術感度の高いメンバーに個別に声をかけていきました。一人ひとりにインタビューをしたり、Slackのチャンネルに投稿して反応を見たりしながら、地道に仲間を探していきました。

── 現場への働きかけと並行して、上長や経営層への説明も必要だったかと思います。

西山氏:上長には、Findyの方からいただいた資料をそのまま使うのではなく、「こういう課題があって、こういう効果を期待している」という内容を自分たちでまとめて説明しました。さらに上の経営層に対しては、「情報リスク管理委員会」の活動の一つである、新しいSaaSの利用や予算を審査する会議の場で、取り組みの意義を説明しました。

── 経営層への説明で、工夫したことはありますか?

西山氏:「Findy Team+を使いたい」という話だけでは予算は取れません。だから「これからはメトリクスを見ながら開発組織を改善していく時代になっている」という流れを、まず理解してもらうことから始めました。ツールの話よりも、なぜ今この取り組みが必要なのかという文脈を丁寧に伝えた形です。

── 経営層の反応は?

西山氏:「こういうものを見ていかないとダメだよね」という言葉が返ってきて、取り組み自体が高い評価を得ることができました。時代の流れとして、経営層もすでに感じていたものがあったのだと思います。ただ、そこで終わりではありませんでした。

社内のセキュリティ監査基準を満たさないということで、一度導入が見送りになったんです。経営層の理解は得られていたのに、セキュリティの壁で止まってしまった。ただ、諦める気にはなれなかったので、Findy側と再度コミュニケーションを取り直して、セキュリティガイドラインの整備や監査基準を満たすための調整を一緒に進めました。時間はかかりましたが、最終的にすべての要件をクリアして利用にこぎつけました。

前田氏:あの期間は長かったですよね。ただ、西山さんやFindy Team+の営業の方が諦めずに動き続けていたので、周りも「いつかは実現できる」という感覚でいられました。

山中氏:セキュリティ要件の厳しさは、金融系プロジェクトをやっている自分にはよくわかります。それを突破してくれたことで、「うちのプロジェクトでも安心して使える」という確信が持てました。

「使いたい」組織と「使うべき」チームは違った

── セキュリティ審査を突破して、いよいよ導入が始まりましたね。最初はどのチームから始めたのですか?

西山氏:社内で「使ってみたい」と手を挙げてくれた3チームでトライアルを行いました。結果から言うと、3チームともプロジェクトのフェーズや状況がFindy Team+の機能とうまくかみ合わなかった。最終的にわかったのは、3チームともすでにケイパビリティが高く、ツールがなくても自分たちで改善できるチームだったということです。

── 「使ってみたい」と手を挙げたチームが、実は課題のないチームだった、と。

西山氏:そういうことです。新しいものに関心を持つ人は、もともと技術感度が高くてすでに一定のレベルに達していることが多い。「やってみたい」という声を優先した結果、改善の余地が少ないチームに入れてしまった。チーム選定の難しさを痛感しました。

前田氏:私が関わったチームは3名規模で、全員がアジャイル経験者でした。プルリクのレビューも高速で回っていて、Four Keysで計測してみたら数値がすでにかなり良かった。「どこを改善すればいいんだろう」という状態になってしまいました。

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シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー エンジニア/技術広報
前田 貴史氏

── それは完全な失敗だったのでしょうか?

前田氏:見方を変えると、「この状態がイケている状態なんだ」というベンチマークが得られた収穫でもありました。他のチームに「こういう状態を目指そう」と示せる事例ができたとも言えます。

西山氏:「導入したいと思っているチーム」と「導入が効果的なチーム」は必ずしも一致しない 。この学びが、次のステップへの大事な判断材料になりました。次は「ブランチ戦略やパイプラインに課題を抱えているチーム」「改善の意欲はあるが、何から手をつければいいかわからないチーム」を意識して探すようになりました。

山中氏: そのタイミングで西山さんから声をかけてもらいました。私のプロジェクトはまさにメトリクスが取れない、パイプラインが整っていないという課題を抱えていたので、「ぜひやりましょう」と即答しました。

数値が暴いた、見えていなかった構造問題

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シンプレクス
システムディベロップメントコンピテンシー プラットフォームエンジニア
山中 健輔氏

── 山中氏のプロジェクトへの導入が始まりましたが、どのような状況でしたか?

山中氏:セキュリティ要件が非常に厳しい環境で、外部ツールとの連携が簡単にはできません。GitLabのメトリクスしか取れない状態で、課題管理ツールもオンプレミスで動いていました。Findy Team+のAgent機能を使って、セキュアな環境でもメトリクスを収集できる仕組みをまずつなぎ込むことから始めました。

── データをつなぎ込んでみて、何が見えてきましたか?

山中氏:最初に気づいたのは「Four Keysが正常に計測できない」ということでした。デプロイ頻度やリードタイムを見ようとしても、数値がおかしい。原因を掘り下げていくと、そもそものブランチ戦略に問題があることがわかってきました。

── ブランチ戦略の問題というのは?

山中氏: 私たちのプロジェクトでは、マスターブランチにコードをマージしてもリリースされるわけではなく、リリース後に改めてマージするという運用が残っていました。Gitというツールを使いながら、Gitの本来の価値を活かしきれていない状態です。その結果、メトリクス上ではリードタイムが数週間に見えても、実態は2週間スプリントで想定外の事象があってリリースを一度キップしただけ、ということが起きていました。数値が現実を正確に反映していなかったんです。

── それはメトリクスを見ても意味がない、ということにはなりませんか?

山中氏:逆です。「Four Keysがまともに計測できない状態は、開発プロセスが健全でないサインだ」という気づきになりました。可視化することで、問題の根っこが浮かび上がってきた。これはFindy Team+を入れなければ、おそらくずっと見えないままでした。

── その気づきは、チームにどんな変化をもたらしましたか?

山中氏:ブランチ戦略を見直す議論がチームの中で自然に生まれました。さらに大きかったのは、メンバーの視点が変わったことです。数値を見る習慣ができたことで、「このリードタイムが改善されたとして、それはビジネスにどうつながるのか」という問いが生まれてきた。生産性が高いことと、ビジネス価値を生み出していることは必ずしも一致しない。そういう視座がメンバーの中に芽生えてきました。

西山氏:外から見ていても、山中さんのチームの変化は感じていました。ツールを入れることで議論の土台ができて、チームの意識が変わっていく。まさにそういう動きでしたね。前章でお話しした最初の3チームの経験と並べると、「どんな状態のチームに入れるか」でこんなに違うのか、と改めて実感しました。

良い変化を、全社へ。そしてAIエージェントへ

── 今後、この取り組みをどう広げていく予定ですか?

西山氏:まずは全社への横展開です。メトリクスを見て課題のあるチームに能動的に関われる、いわば開発組織全体のオブザーバビリティ(観測可能性)を高めていきたい。今はまだ介入するための仕組みが整っていないので、そこを作ることが直近のテーマです。

前田氏:200を超えるチームのパフォーマンスが可視化されると、「あのチームの取り組みが良いな、真似したい」という伝播が自然に起きてくる。トップダウンで標準化を押し付けるのではなく、良い変化が横に広がっていく組織にしたいんです。

山中氏:現場の良いところは残しながら、課題だけを潰していく。データがあることで、「なぜこの標準に合わせる必要があるのか」を納得感を持って説明できるようになります。

── AIエージェントの活用についても検討されていると聞きました。

西山氏:今、各プロジェクトがパイプラインをそれぞれ構築・管理しているのですが、そのコストをプロジェクトに持たせたくない。基盤として統一した形で展開できる状態を作りたい。その中でAIエージェントをどう組み込むかは、次の大きなテーマです。

山中氏:セキュリティ要件がクリアできる環境が整いつつあるので、そこは追い風です。エージェントが使える環境で何ができるか、具体的にトライしていきたいですね。

技術の先に、ビジネスへの貢献を見据えられる人と

── 最後に、シンプレクスという組織の魅力と、一緒に働きたいエンジニア像を聞かせてください。

西山氏:新しい技術や取り組みへの感度が高いメンバーが揃っていることが、一番の魅力だと思っています。AIエージェントの活用にしても開発生産性の可視化にしても、世の中の変化を素早くキャッチして社内に取り込んでいく動きが自然に生まれる。加えて、私たちのような基盤側の仕事に対しても、現場のメンバーがリスペクトを持って接してくれる。そういう組織の空気感が、日々の仕事のやりがいにつながっています。一緒に働きたいのは、そういう環境の中で自分をどんどん成長させていきたいと思っている人ですね。

山中氏:私が大切にしているのは、「自分の決めたゴールに対して真摯に向き合えるか」という点です。技術への興味はもちろん大事ですが、その先に何を実現したいのかが重要だと思っています。エンジニアという仕事はクライアントの収益を上げ、業務を効率化し、社会に価値を届ける仕事です。そういう広い視座を持ちながら、自分のミッションに対してしっかり向き合える人と一緒に働きたいですね。

前田氏:私からは「外に出ることを恐れない人」を挙げたいです。山中さんが話してくれたように、課題を解消するためのヒントは社内だけにはない。外のコミュニティやイベントに積極的に参加して、学んだことを持ち帰る。その姿勢がシンプレクスをもっと強くしていくと思っています。

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