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  • 2026/09/14 掲載

Power Appsは「プロ開発」、kintoneは「利用者開発」──伊藤忠丸紅鉄鋼の“いいとこどり”ツール選定戦略

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鉄鋼製品などの輸出入および販売、加工などを手掛けている伊藤忠丸紅鉄鋼では、海外を含めた多くの事業会社との情報共有を加速させるための業務基盤づくりに取り組み、BPR(Business Process Re-engineering)をはじめとしたグループ全体の業務効率化やITリテラシー向上に努めている。業務基盤の中核的なソリューションとしてkintoneを採用した経緯について、IT推進部グループシステムサポートチーム長 宮﨑 良太氏およびデジタル戦略室 菅谷 賢吾氏にお話を伺った。
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伊藤忠丸紅鉄鋼
【業務内容】 国内外の鉄鋼関連事業投資、鉄鋼流通
【利用用途】 顧客案件管理、アンケート、ワークフローなど


【課題】事業会社との情報共有をテーマに、アジャイル的なアプローチで環境整備を目指す

事業会社との情報共有が課題に

 2001年に2つの総合商社の鉄鋼部門が分社・統合して設立された伊藤忠丸紅鉄鋼。鉄鋼製品の輸出入や三国間取引、国内外の鉄鋼関連事業投資など、鉄鋼流通のフロントランナーとしてグローバルに事業を展開している。鉄鋼業界全体でデジタル化の遅れが課題となるなか、同社は経営戦略・人総本部の傘下にデジタル戦略室を設置し、CDOを中心にBPR推進やデジタルリテラシー向上、ペーパーレス化などに取り組んできた。

 なかでも以前から大きなテーマだったのが、事業会社との緊密な情報共有だ。「イントラネット中心の情報基盤はありましたが、双方向での円滑なコミュニケーションが十分に実現できておらず、現場からは情報共有を密にしたいという要望が寄せられていました。経営層からもBPRやペーパーレスへの言及があり、新たな環境づくりが求められていたのです」と宮﨑氏は語る。

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伊藤忠丸紅鉄鋼
IT推進部グループシステムサポートチーム長
宮﨑 良太氏

 新たな環境づくりでは、いち部署から草の根的に小さく始め、徐々に広げていくことを意識した。要件を固め切るウォーターフォール型より、アジャイル的に進められる環境をイメージしたという。「各本部で使い方が異なるため、汎用的に整備できる環境を望んでいました。将来的な拡張性を確保しつつ、小さくはじめることにしたのです」と宮﨑氏。そこで、最終的に現場でも内製開発できる環境を目指し、ノーコード・ローコードツールを中心に選定を行うことになった。

【選定】遅々として進まないプロジェクト、体制変更でプロジェクトをドライブ
 当初は海外のソリューションをトライアル導入したものの、使い勝手の面で現場展開が難しかった。「SIerに依頼し体制を組んでスタートしたのですが、要件が絞りきれず、現場からも意見が出しづらい。実際に利用して初めて画面イメージの差異が判明するなど、うまく適用できなかったのです」と宮﨑氏。

 打開策として注目したのがサイボウズのキントーンだった。「数年前からサイボウズ デヂエを活用しており、数十万件以上のデータが溜まる社内ツールに育っていました。デヂエのサポート終了も控え、新たなものが必要だと考えていたのです」。キントーンを試すと使いやすい印象を持ったが、当初は外部SIerにアプリ開発を委託する前提だったため、画面や要件のやりとりに時間がかかり、プロジェクトが思うように進まなかった。「せっかくのノーコード・ローコードツールなのだから、求めるスピードで進めたかった」と宮﨑氏は当時を振り返る。

 そこで同社が主体となってキントーン活用を加速できる体制を整えるべくサイボウズに相談し、オフィシャルパートナーで伴走支援も可能なコムチュアを紹介された。「開発を依頼するというより、社内展開も含め何かあれば相談に乗ってくれる“キントーン先生”として支援いただけないかとお願いし、快諾いただきました。基幹システムにSAPを導入していたため、SAP連携の実績がある点でも適していると感じたのです」と宮﨑氏。こうして、キントーンをグループ全体へ拡張していける新たな環境を、コムチュアとともに整備することになった。

Power Appsは「プロ開発」、kintoneは「利用者開発」

 同社は Microsoft 365 を全社的に利用し、業務アプリの開発基盤としてPower Appsも併用している。そのため、キントーンとPower Appsは「誰がつくるか」で役割を分けているという。「利用者が自分でつくるアプリはキントーン、ベンダーに構築してもらうものはPower Apps、と使い分けています」 と宮﨑氏は説明する。

 その違いはアプリ数にも表れており、現場が内製するキントーンは数百規模、外部構築が中心のPower Appsは一桁少ない。Power Appsが担うのは、全社で回す基幹業務寄りの仕組みで、正確性や制度対応が問われ、利用者が個別に手を加えるものではない。一方キントーンは、各部門が自分たちの業務に合わせて作り、自ら直しながら育てていく領域を受け持つ。

 利用部門の内製開発にキントーンが向く理由は、その手軽さにある。「キントーンは初めてでもある程度のアプリができますが、Power Appsはコーディングが必要な部分もあり、変数のような概念も知らないといけません」と宮﨑氏。機能拡張の手段にも差があるという。「追加機能の開発は運用を考えるとコーディングではなくプラグインを活用したい。日本語対応のプラグインはキントーンに豊富ですが、Power Apps向けはほとんど海外製で日本語対応が少ないです。学習コンテンツも日本語ならキントーンが圧倒的に多く、『動画を見ておいて』と言える環境があるかどうかは、利用者にアプリ開発を任せる際の手離れの良さに直結します」。

【効果】保守まで現場で完結する内製文化と、BPRの強力な武器としてのkintone

「つくって終わりではない」──保守のしやすさが採用の決め手

 内製ツールとして大事なのは構築時の簡単さだけではない。宮﨑氏がむしろ最も重視するのは「保守のしやすさ」だ。「業務アプリはつくって終わりではありません。変えたいときに自分で変えられない状態だと困るのです。この点でもキントーンの簡単さを評価しています。大幅な仕様変更が少なく、製品アップデートの影響がユーザーに及びにくいのもありがたいです」

 個人開発に依存すると、担当者の異動とともにメンテナンスができなくなるリスクもある。そこで同社では、つくったアプリの運用・保守は作成部署が責任を持つ体制とした。アプリ作成権限は原則ユーザーに付与せず申請制とし、IT推進部が用意した空アプリを各部署が編集して作り込む。今ではほとんどの部署から申請が上がるという。「数百のアプリがあっても、それぞれ責任者が明確なので回っています。困ったときはもちろんIT部門が支援します」と宮﨑氏。コムチュアも“キントーン先生”として、アプリの相談や開発アドバイスなど、内製を後押ししている。かんたんで保守まで自分たちで完結できることが、全社規模での内製文化の定着を支えている。

情シスは縁の下から支える──SSOでシステムの違いを意識させず、データ連携で効果を後押し

 IT推進部は、利用部門が内製に集中できるような環境整備も行っている。同社は特定のベンダーや製品に依存せず、各製品の“いいとこどり”をする方針で、柔軟に組み合わせて活用している。それを支えるのが認証環境だ。社内ユーザーはMicrosoft Entra IDと同期し、SSO(シングルサインオン)でログインできる。「各製品のログインを介さず、アクセスできるため、利用者から見ると、これはkintoneで構築されている、Power Appsで構築されている、とはあまり気にしていないのが実態です」と宮﨑氏。ユーザーに製品の違いを意識させない仕組みがあるからこそ、各製品の長所を組み合わせる“いいとこどり”が成り立ち、内製アプリもスムーズに浸透していく。

 データ連携もIT推進部が下支えする。業務アプリで他システムのデータが必要な場合は、Power Automateを中心に、一部はAsteria Warpなどのデータ連携ツールでキントーンと連携。キントーンのデータをPower BIで可視化するAPI連携も内製で対応している。「現場が注力すべきは業務改善そのもの。データの受け渡しはIT推進部で引き取り、利用部門が成果を出しやすい状態をつくっています」と宮﨑氏は語る。

グローバルに広がるkintone活用、アンケートから販売管理まで

 現在はキントーンアカウントが社員数およそ900名を超える規模で運用され、ゲストスペースを含めた利用者数は1500名以上。社内にとどまらずグループ会社やグループ外の取引先まで柔軟に連携できるのが強みで、宮﨑氏は「Microsoft 365はライセンス契約に紐づくため、グループ会社ごとに契約や認証環境が分かれます。その点、キントーンはゲストスペースがあるので、柔軟な連携が可能です」と説明する。日本だけでなくアメリカ、中東、アフリカ、ヨーロッパなどグローバルで活用されている。

 ワークフロー系を中心に、SAP連携アプリや案件・顧客情報の共有アプリなど数百規模のアプリが稼働している。具体例として、約100社のグループ会社にIT利用状況やCO2使用量、財務会計情報などを尋ねるアンケートアプリがあり、以前はExcelをメールでやり取りして手集計していた作業が、入力するだけで集計でき大幅に時間短縮された。マスタ設定で社名などの表記揺れもなくなり、複数言語対応や前年回答のコピーなど現場のメリットも大きい。このほか、各種申請承認、SAP情報を活用した貿易関連書類の作成、顧客・商談管理から見積・販売管理まで幅広く使われている。

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複数言語のアンケートアプリ

業務改善を競い合うBPR Cupで、全社に内製文化を広げる

 特徴的なのが、各部署が業務改善を競い合う「BPR Cup」だ。キントーンやPower BI、Power Automateなどを駆使して改善を進め、優秀事例は表彰される。自発的な社員は施策がなくても自ら申請してアプリをつくる一方、忙しい営業部門などは手が回りにくい。BPR Cupはそうした部署を掘り起こし、上長も巻き込んで業務改善の取り組みを本人の評価にもつなげる仕組みだ。「業務改善に熱心な部署とそうでない部署で差が開きやすい。忙しいほど改善に着手できない負のスパイラルに陥るので、遅れている部署を早めに後押しすることが大事です」と宮﨑氏。経営層の評判も良く、継続を望む声が寄せられている。

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BPR Cup 表彰式の様子

円滑な情報共有と作業品質の向上を実感

 キントーンによるデジタル化で、情報の一元化や業務の可視化、ミス削減による品質向上、ペーパーレスなど多くの効果が現場から報告されている。BPR Cupで表彰された事例では、顧客・商談管理への活用で年間約800時間の工数削減を実現。「Excelの中にしかなかった情報を手軽に共有できるようになったのが大きい。異動が多いので引き継ぎも簡素化できています」と宮﨑氏。権限管理の細かさも「会社や個人ごとに設定でき便利」(菅谷氏)と評価する。コムチュアの伴走支援やサイボウズの啓蒙コンテンツ・CMによる認知拡大にも、現場展開を後押しするものとして感謝の声が上がる。

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伊藤忠丸紅鉄鋼
デジタル戦略室
菅谷 賢吾氏

 今後も申請ベースで内製アプリを着実に増やしながら、その先に見据えるのが生成AIの活用だ。AIについても、 Microsoft Copilot にChatGPTやGeminiを併用するなど"いいとこどり"の活用をめざす。AI活用を推し進める土台として、現場が内製で生み出す構造化データを蓄積し、必要に応じてデータの連携・整備を進めていく考えだ。内製で築いた基盤が、同社のデジタル化の次の一歩を支えていく。

・kintone製品サイト
 https://kintone.cybozu.co.jp/for-enterprise/

kintoneを利用した業務効率化や他製品との使分けについて、お気軽にご相談ください。
・kintone導入相談
 https://pg.cybozu.co.jp/kintone-contact-us.html

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