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  • 2023/06/19 掲載

Luup岡井氏が描く「10年後の社会」が凄い? 電動キックボードが街にもたらす経済効果とは

Seizo Trend創刊記念インタビュー

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2023年7月、電動キックボードなどの扱いを含む改正道路交通法が施行される予定で、「免許必須」から「不要」に変わったほか、ヘルメット着用は「努力義務」になり、利用可能な年齢は「16歳以上」に変更されるなど、ルール整備が進んだ。改正法をキッカケに新しいモビリティの普及に期待が集まる一方、安全性などの点を疑問視する声も上がっている。そうした課題を乗り越え、電動キックボードを日本社会に普及させていくことができるのだろうか。Luupの代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏に、『LUUP』が未来をどう変えるのか、普及・拡大に向けた課題などについて話を聞いた。
執筆:森口将之、編集:中澤智弥、写真:大参久人

執筆:森口将之、編集:中澤智弥、写真:大参久人

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Luup 代表取締役社長兼CEO
岡井大輝 氏
東京大学農学部卒業。戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスデューデリジェンスを主に担当。その後、Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。

10年後の電動キックボード事情

 今後、モビリティカンパニーのビジネスモデルは、少なくとも製造したモビリティの売り切り型ではなくなっていくと予想しています。スマートフォンがそうだったように、デバイスを普及させたり、無料のアプリケーションを提供した後に、追加で有料コンテンツをダウンロードしてもらったり、より便利なサブスクリプションサービスを提供するなど、追加の課金も見据えてマネタイズするモデルになっていくでしょう。

 その上で、モビリティ企業はいくつかの方向性に分かれていくと考えています。たとえば、移動中の“楽しさ”を提供するために、移動中のエンタメを充実させることに注力する企業も出てくるでしょう。ここで言う、企業が提供するエンタメとは、非日常的であり希少性の高い体験価値、つまり「そこでしか体験できない」という価値になります。そのため、一部であっても需要を持った消費者に選ばれることを目指すアプローチになるかと思います。

 一方、未来の社会インフラとなるモビリティを開発・提供していくという企業の方向性もあるかと思います。インフラを目指すというアプローチは、利用者の数を極限まで増やすことで成立するビジネスであるため、希少価値の高い体験価値を提供するアプローチとは異なります。

 人々の短距離移動を支える社会インフラになることを目指し、小型モビリティのシェアリングサービスを展開する当社は、「乗る楽しさ」といった体験価値を提供したいわけではなく、社会にとって当たり前の存在(希少性の低い存在)になることを目指しています。

 とはいえ、当社の開発・提供している電動キックボードは、人々にとって目新しい乗り物であり、過渡期であるがゆえに、現段階では「乗る楽しさ」を利用者の方々に感じていただけているようです。しかし、10年後の未来では、社会にとって電車のような、当たり前に普及している移動手段となっていたいと考えています。

鉄道に並ぶインフラになれるか? Luupの考える戦略

 過去、鉄道網の発展とともに街の開発が進み、あらゆる経済効果を生んだように、10~20年後には電動マイクロモビリティのシェアリングサービス『LUUP』があることによって駅から離れた立地の場所に住むことも苦ではなくなり、駅近だけが選択肢ではなくなるような街の発展を促す可能性があると考えています。それが、結果としてあらゆる産業に大きな経済効果をもたらすことになるかもしれません。

 そうなれば、『LUUP』の利用料をもっと下げ、さらに普及させていくことができるでしょう。鉄道の料金があれほど安いのも、鉄道周辺に発展した街の経済効果があるからこそです。

 そうした社会インフラを形成していくにあたって重要になるのが安全性です。たとえば、100台のモビリティを提供する企業と1万台の企業では、使えるコストが違ってきますが、安全性を確保するためには同じレベルの投資が求められます。

 つまり、安全性が必要条件となる社会インフラを提供するには、企業としてある程度の規模が求められることになります。あまり企業規模が大きくならないのであれば、大きいところと合併しなければならないわけです。これはLuupも同じです。

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『LUUP』を社会に普及させるために、乗り越えなければならないポイントについて語る岡井氏

 Luupは、これまで『LUUP』の提供を東京23区内などの大都市に集中してきました。これは、実証実験に参加し、安全性の検証を政府とともにやってきたという経緯から、短期間に大量の移動データを取る必要があったからです。Luupはスタートアップの小さい会社で予算もなかったため、人がたくさんいる地域でやらないと検証できなかったのです。

 とはいえ、地方都市や観光地、離島などの自治体や企業からの問い合わせが増えており、今後はこうした地域でも『LUUP』を増やしていこうと考えています。地方や離島は、基本的に移動に困っている人が多い上に、『LUUP』のような運営者がいなくても成立するインフラのほうがコストが低く、採算が合いそうということから、問い合わせいただくことが増えています。

 また、季節によってモビリティに対する需要が大きく変わる地域の課題に対しても、Luupは車両や車両を設置するポートを簡単かつ柔軟に動かせるため対応できると考えています。 【次ページ】Luupはどう解決する? 問題だらけ「道路事情」とは

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