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  • 2023/11/30 掲載

EVシフトで先進国“最低”のお寒い「日本」、世界との差は“ヤバい”が明るい兆しも?

Seizo Trendキーパーソンインタビュー

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現在、ICE(内燃機関)自動車からEVへのシフトが世界で急速に進んでいる。そんな状況でも、反EV勢も多い自動車大国の日本は世界に差を付けられる「お寒い」状況が続く。基幹産業である自動車製造が衰退すれば、現在500万人以上とされる自動車関連産業の就業者は路頭に迷い、日本経済の壊滅も懸念されるだろう。そこで今回、2000年代から日産自動車やインテルなどでモビリティ関連の事業開発と政策推進を行ってきた名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授の野辺 継男氏に、世界各国のEVトレンドなどについてどこよりも詳しく語ってもらった。
聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:井上猛雄、写真:大参久人

聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:井上猛雄、写真:大参久人

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名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授 野辺 継男(のべ・つぐお)氏

1983年早稲田大学理工学部応用物理学科卒業後、日本電気に入社。1988年ハーバード大学 ビジネススクール留学、同大学院PIRPフェロー。2001年ソフトバンクのオンラインゲームの子会社など複数ベンチャーのCEOを経て、2004年日産自動車に入社し、Vehicle IoTの開発や事業立ち上げを統括。2012年インテルに転職、自動運転やモビリティサービスの事業開発と政策推進を担当。2014年から名古屋大学で客員教授を兼務し、自動運転技術を開発中。

EV最新動向:航続距離は伸長も日本のインフラは…

 まず最近のEVの定義から簡単に説明したいと思います。

 現在EVというと、バッテリーのみで走る「BEV(Battery Electric Vehicle)」と、バッテリーとエンジンを搭載しプラグで充電できる「PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)」の2種類を指します。以前は燃料電池自動車の「FCV(Fuel Cell Vehicle)」もEVの分類に含んで議論されていましたが、現在は事実上含まれません。また、プラグで充電できないハイブリッド車もEVには含まれません。

 ご存じのように初期のBEVでは、ガソリン車等のICE(Internal Combustion Engine)車ほど長い距離を走れませんでした。しかし近年、航続距離は大幅に改善しています。10年前はBEVをフル充電しても100~200キロメートル程度の走行しかできませんでしたが、2016年に登場したテスラのモデルSが300マイル(483キロメートル)を初めて超え、いまBEVは平均で400キロメートル程度走れるようになっています。

 ICE車は燃料満タンでおおむね600キロメートルほどなので、BEVは3分の2程度まで近づいており、2025年頃までにはより軽量でエネルギー密度の高いバッテリーを搭載した、よりエネルギー効率の良いBEVが登場します。手頃な価格のモデルでもガソリン車の航続距離に近づき、さらにはICE車を超えていくものと考えられます。

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EVの最新動向について語る野辺氏

 一方、充電インフラの不足は世界中でいまだに現実問題として存在しています。中でも、日本でEV購買に対する不安を持たれておられる方々の40%が充電インフラの不足を挙げており、海外と比較してその比率は非常に高い状況です。

 通勤や買い物など日常的な走行距離であれば特に支障ありませんし、郊外、さらに地方では一戸建ての家屋も多く、夜間自宅で充電すれば問題ない方も多いと思われますが、長距離旅行の際などには引き続き不安が残ります。欧米中ではEVの販売拡大に伴う充電インフラの増強は、政府の公共事業としての意味合いも強く、徐々に改善されていますが、日本国内でも積極的な充電インフラ増強を期待したいところです。

EV最新動向:BEVとICEの価格差は「さらに縮む」

 世界中でまだ充電インフラに不安が残る中、現在は航続距離で心配しなくても済むように、ICEとEVの両方の機能を持つPHVを購入する傾向が高まっています。2023年1月から9月の販売台数累計はBEVが650万台でPHVが280万台であり、昨年同期比でそれぞれ33%、47%増加しています。

 ただし、PHVはバッテリーが小さい割にBEVより高コストである傾向にあります。さらに、バッテリー技術の高度化によりBEVのエネルギー密度が上がり、また省エネ、回生エネルギーといったエネルギーマネジメント技術も高度化して、素材や製造方法の低コスト化、充電インフラの拡大といった今後の方向性を鑑みると、中長期的にはPHVの伸び率は下がると見込まれています。

 次に価格帯でみると、BEVのほとんどは現在、500万円以上の高価格帯の高級車に属しています。米国での売上を見ると、高級車販売に占めるBEVの割合は32%であるのに対し、非高級車でのBEVの割合は1%強で、市場でもこれは問題視されています。ただし、中国、欧州、東南アジアなどでは2022年から、200万~300万円台の新車が続々と登場しており、徐々に廉価なBEVも拡大しつつあります。

 その上で、最近の米国の傾向として顕著なのは、多くの方々がBEVを「まだ手の届かない車」と認識している上で、フォードやGMなどの大手自動車会社から期待されたBEVの出荷が予定通りには進んでいないこともあり、価格の安いハイブリッド車のシェアが拡大しています。

 BEVのコストに大きく影響するバッテリーについては、2022年に高騰したリチウムやコバルト等の価格が2023年、大幅に下落しました。また製造技術の革新も相まって2025~2026年頃には電池容量1キロワットアワー当たりの価格が100ドルを切るもの(現状は1キロワットアワー当たりの価格は中国では127ドルで、北米と欧州の価格は24%と33%高い)と予測されています。そうなると、ようやく補助金抜きでBEVとICEの価格差がほぼなくなると予測されています。 【次ページ】テスラとBYDが圧倒、米国で「トヨタ待望論」も?
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