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- 2023/11/02 掲載
中国の自動車輸出「日本超え」の舞台裏、その行く末は「日本の黄金時代」と同じのワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
データでわかる「中国製EVの世界進出」
日本の報道では「EV=中国」の構図がことさらに強調されるため、輸出全量がEVのような印象がある。実際には、2023年上半期のPHV(プラグイン・ハイブリッド)を含むEV輸出は全数量の1/3にすぎなかった。残り2/3は内燃機関(ICE)自動車である。
とは言え、金額ベースで見ればEVが全体の52%と、EV輸出で儲ける構造は明確だ。特に、2021年までICE車の輸出金額はEVを上回っていたが、EVの輸出額が急激に伸び、2022年に逆転した(図2)。
さらに興味深いことに、中国製EV輸出のおよそ半分は、欧米の自動車メーカーの製品であり、純粋な中国ブランドは半分程度にすぎない(図3)。
資本で攻める「中国のしたたかな戦略」
翻って、欧州における中国製EVの輸入に目を転じてみよう。たとえばドイツでは、2023年1~6月期に新車登録されたEVのうち、中国製は全体の11.2%に相当する3万2000台であった。下の図4は、それらの中国製EVブランドの内訳だ。これら中国製EVのうち、スウェーデンのポールスターが24.7%とおよそ1/4を占め、英国のMGが23.1%、米国のテスラが21.8%、ルーマニアのダチアが9.9%、ドイツのスマートが6.1%、ドイツのBMWが5.6%となっている。一方、中国固有ブランドは全体の8.8%にすぎない。
その一方で、資本関係から図4の内訳を見てみると、1位のポールスターはその親会社がボルボ・カーズ・グループであり、ボルボの株式の8割は浙江吉利控股集団(ジーリー)が保有している。2位のMGは上海汽車グループ(SAIC)の支配下にあり、6位のスマートはジーリーと独メルセデス・ベンツの合弁子会社だ。
つまり、ドイツで販売される中国製EV全体の91%以上は欧米ブランドだが、同時に全体の53.9%は中国資本が所有する欧州メーカーが生産したものであることがわかる。BYDなどの中国ブランドを海外でも広める一方で、中国資本の欧州ブランドを用いて中国製EV全体のシェアを高めているのだ。
ここに、欧州ブランドを借りて世界市場の攻略を目指す中国のしたたかな戦略が見てとれる。こうした中、中国と欧米との関係に変化が見られ始めたことで、中国には戦略の転換が迫られているようだ。 【次ページ】中国&欧米、「共存共栄」から「敵対」関係へ
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