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  • 2015/09/01 掲載

なぜビーコンは広がらないのか? O2O時代の主役を担える可能性を探る

リアライズ・モバイル 藤森 和香子氏

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リアライズ・モバイル・コミュニケーションズは、日立製作所とサイバー創研と共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)による「クリーンデバイス社会実装推進事業」の委託先に採択され(注1)、「クリーンビーコンを用いたヒューマンナビゲーション社会実装実証事業」に着手するという。この新しいプロジェクトのリーダーである同社の藤森 和香子氏に、今回の実証実験の狙いや、具体的なサービスのイメージ、今後の展望などについて話をうかがった。
(聞き手:編集部 中島 正頼)

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リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ
ソリューション事業部 シニアマネージャー
藤森 和香子氏

ビーコンは便利で面白いが、なぜ広がらないのか?

──まず今回のプロジェクトをスタートした背景について教えてください。

藤森氏:Bluetooth Low Energy(以下、BLE)による近距離無線技術を用いたビーコン(Beacon)が、ここのところ注目を増しています。「iBeacon」という名称でアップルがiOSに搭載したことでも有名ですね。ビーコン機器を活用し、スマートフォンなどにクーポンを配布したり、位置情報を取得するといったサービスが始まっています。

 すでに我々も、ビーコンを活用したサービスとして、奈良県で外国人向けの観光アプリを提供しています。しかし、こうしたビーコンのビジネスを始めるためには、自社でビーコンの発信機器を購入し、それを敷設して、受信側のアプリを開発しなければなりません。

──そのさまざまなコストがネックになると?

藤森氏:その費用対効果は、まだ実証の域から脱していないというのが我々の感想でした。奈良県のプロジェクトは、皆さんが大変喜んでくれましたが、やはりサービスを維持していくのは大変です。ビーコンの電池を交換するメンテナンスの問題や、コンテンツの更新などで、どうしても費用がかかります。ビーコンは便利で面白い機器ですが、このままでは世間には広がっていかないという危惧がありました。そんなとき、NEDOの「クリーンデバイス社会実装推進事業」の公募があり、日立製作所などと協力して、今回のプロジェクトを始めようという話になりました。

メンテナンスフリーで使えるビーコンをオープンプラットフォームで

──ここで言うクリーンデバイスとは何でしょうか?

藤森氏:省エネルギーに資する革新的デバイスのことです。そこで我々は、日立製作所が保有する独自技術の「環境発電エネルギーマネジメント回路」を活用し、ビーコン自体を自活させるクリーンビーコンを考え、事業の公募に加わりました。エネルギーマネジメント回路により、屋内照明の非常に微小なエネルギーでも短時間で起動し、動作しながら蓄電することができます。これにより、無給電で電池交換不要であり、かつ、夜間や停電時にも対応するメンテナンスフリーのビーコンが実現できるのです。

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クリーンビーコンの特徴。機器自体で自活でき、電池不要、メンテナンスフリーで利用できる。屋内照明、蓄電による夜間動作も可能

 もう1つ現状の問題点は、ビーコンを敷設しても特定用途にしか使えないことです。新サービスを始めるには、また違うビーコンを置かなければなりません。非常にナンセンスな状況です。そこで我々は、共通のオープンプラットフォームを構築し、この問題を解決したいと考えました。ハードウェアメーカーもビーコン敷設事業者も、このプラットフォームに対応していただければ、ここでビジネスを始めたい多くのユーザーが集まってきて、サービスが普及すると考えました。

──今回のプロジェクトは共同参画ということですが、あらためて各社の役割について教えてください。

藤森氏:まず日立製作所は、先ほどご紹介したクリーンビーコン自体の開発・製造を担当します。また、このクリーンビーコンを利用した、ヒューマン・ナビゲーションの実証実験を弊社が行うことになっています。この実証実験に使用する技術も日立製作所同社が保有しているものです。この技術も同社が保有しているものです。たとえば百貨店の入口から顧客をフロアーまで案内したくても、建屋にGPSが入らなかったり、Wi-Fiを用いたサービスも電波が干渉したりして、なかなかベストなサービスを実現できていませんでした。それが、ビーコンを使って顧客の位置を捕捉し、スマートフォンの各種センサーで方向を予測することで、ナビゲートが可能になります。

 このヒューマン・ナビゲーションのミドルウェアを日立製作所から提供してもらい、弊社でアプリを開発することになっています。弊社の役割は、オープンプラットフォームの構築と、その上で稼働する複数アプリによって、マルチユーザーで利用できることを実証することです。

 またサイバー創研は、NTT研究所からスピンアウトした人たちが設立したベンチャーで、通信系のプロ集団です。より多くのハードウェアメーカーやソフトウェアベンダーにクリーンビーコンをご利用いただけるように、標準化を進める役割を担っています。海外では、ビーコンの規格はiPhoneのiOS7から採用されたiBeaconを利用するケースがほとんどのようです。ただし、日本国内ではセキュリティの関係でいろいろな要求があり、各社でiBeaconではない独自のカスタマイズした仕様になっているものも多くあります。サイバー創研では、こういったビーコンのプロトコル策定や、国際標準化に向けた取り組みなどを行っていきます。

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クリーンビーコンの標準化の内容と検討方針。ハードウェアやプラットフォームについて、合計12社でWGを設置して検討中だ

【次ページ】 コンビニや駅で導入が進めば一気に広がる可能性も

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