藤森氏:省エネルギーに資する革新的デバイスのことです。そこで我々は、日立製作所が保有する独自技術の「環境発電エネルギーマネジメント回路」を活用し、ビーコン自体を自活させるクリーンビーコンを考え、事業の公募に加わりました。エネルギーマネジメント回路により、屋内照明の非常に微小なエネルギーでも短時間で起動し、動作しながら蓄電することができます。これにより、無給電で電池交換不要であり、かつ、夜間や停電時にも対応するメンテナンスフリーのビーコンが実現できるのです。
もう1つ現状の問題点は、ビーコンを敷設しても特定用途にしか使えないことです。新サービスを始めるには、また違うビーコンを置かなければなりません。非常にナンセンスな状況です。そこで我々は、共通のオープンプラットフォームを構築し、この問題を解決したいと考えました。ハードウェアメーカーもビーコン敷設事業者も、このプラットフォームに対応していただければ、ここでビジネスを始めたい多くのユーザーが集まってきて、サービスが普及すると考えました。
──今回のプロジェクトは共同参画ということですが、あらためて各社の役割について教えてください。
藤森氏:まず日立製作所は、先ほどご紹介したクリーンビーコン自体の開発・製造を担当します。また、このクリーンビーコンを利用した、ヒューマン・ナビゲーションの実証実験を弊社が行うことになっています。この実証実験に使用する技術も日立製作所同社が保有しているものです。この技術も同社が保有しているものです。たとえば百貨店の入口から顧客をフロアーまで案内したくても、建屋にGPSが入らなかったり、Wi-Fiを用いたサービスも電波が干渉したりして、なかなかベストなサービスを実現できていませんでした。それが、ビーコンを使って顧客の位置を捕捉し、スマートフォンの各種センサーで方向を予測することで、ナビゲートが可能になります。
このヒューマン・ナビゲーションのミドルウェアを日立製作所から提供してもらい、弊社でアプリを開発することになっています。弊社の役割は、オープンプラットフォームの構築と、その上で稼働する複数アプリによって、マルチユーザーで利用できることを実証することです。
またサイバー創研は、NTT研究所からスピンアウトした人たちが設立したベンチャーで、通信系のプロ集団です。より多くのハードウェアメーカーやソフトウェアベンダーにクリーンビーコンをご利用いただけるように、標準化を進める役割を担っています。海外では、ビーコンの規格はiPhoneのiOS7から採用されたiBeaconを利用するケースがほとんどのようです。ただし、日本国内ではセキュリティの関係でいろいろな要求があり、各社でiBeaconではない独自のカスタマイズした仕様になっているものも多くあります。サイバー創研では、こういったビーコンのプロトコル策定や、国際標準化に向けた取り組みなどを行っていきます。
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