- 2025/08/27 掲載
補助金廃止でいよいよ「EV終焉」か…購入希望も「たった16%」の全然“冴えない”未来(2/3)
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
EVが不人気である本当の理由
先の調査でEVを購入したくない理由(複数回答)について見てみると、「バッテリー修理費がかさむ」(62%)、「価格が高い」(59%)、「長距離の旅行に適さない」(57%)、「公共の充電スタンド不足」(56%)、「運転中のバッテリー切れの懸念」(55%)が挙げられている。一方、EV失速の理由について識者の分析では、「トランプ関税によるEV新車価格の値上がり」や「連邦補助金の打ち切り」「テスラの総帥であるイーロン・マスク氏の政治的な問題行動」が挙げることが多い。
だが、「EVを購入したくない」「EVをとても購入したくない」との回答は2024年3月の前回調査時に、すでに急増している。
加えて、マスク氏が経営するテスラの市場シェアは2020年前半に80%を超えていたが、2022年に本格的な急低下を始めていた。マスク氏が大統領選で共和党トランプ候補の支持に回る2024年7月にはすでに50%を切っていたのだ(図3)。

そのため、消費者のEV購入意欲における「トランプ関税」「マスク氏の行動」「税額控除打ち切り」の影響は、実は軽微ではないかと思われる。それ以前の問題として、AAAの調査結果に見られるように、EVの性能や利便性に対する基本的な信頼感を失っているのだ。
【図で比較】EV・ガソリン車・HVの「コスパ」
AAAが2024年9月に発表した「毎年2万4140キロメートル(1.5万マイル)を走行した場合の年間の所有コストと1マイル(約1.6キロメートル)あたりの燃費コスト」をEV、ガソリン車、HVの3種で比較した調査では、EVは必ずしも優位ではない(図4)。
一方で、クルマ所有の全体的なコスパ計算でみた場合に、補助金をはじめ、メーカーやディーラーの販売奨励金(リベート)、さらに低金利ローンの役割は小さくない。EVの性能や利便性がいまだ発展途上にある中、トータルの所有コストを押し下げ得る連邦EV購入補助金は、価格比較の文脈においては決定的な意味を持ち得る。
米下院を5月下旬に通過し、7月に上院で可決された「トランプ大統領の大きく美しい法案」こと大型減税・歳出法案には、バイデン前政権時の2022年8月に成立したインフレ削減法が定め、2032年12月31日までの支給が予算化されていたEV購入税控除を、7年前倒しで2025年9月30日に終了する内容が含まれている。
【次ページ】EV補助金の廃止はどう影響?
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