• 2025/11/25 掲載

米・ウクライナ・欧州、ジュネーブ協議で米提案の和平案を修正

共同声明でウクライナ主権保護を強調

ビジネス+IT

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米国とウクライナ、欧州は23日、スイス・ジュネーブでの協議後、ロシアとの戦争終結に向けた米提案和平案を修正した「精緻化された和平枠組み」をまとめたとする共同声明を発表した。欧州側も別途、国境の不可侵や軍事力維持などウクライナの主権保護を和平の前提とする立場を示し、ロシア寄りと批判されてきた原案の見直しが進んでいる。
米国とウクライナは11月23日、スイス・ジュネーブで行った協議を受けて共同声明を出し、ロシアとの戦争終結に向けた米国主導の28項目の和平案を修正した「精緻化された和平枠組み(refined peace framework)」を作成したと明らかにした。声明は詳細には踏み込んでいないが、両国が当初案を見直すことで一致したことを示し、欧州各国からの強い批判を受けて軌道修正に動いた形となっている。

この共同声明に合わせ、ゼレンスキー大統領はスウェーデンで開かれた会合にビデオ演説し、ウクライナは米国を含むパートナーと協力し、「自国を弱めるのではなく強化する妥協点」を模索し続けると述べた。また、ロシアが引き起こした戦争の代償をロシア側が支払うべきだとし、凍結されたロシア資産の活用に関する決定が重要だと強調した。今回の協議を「極めて重要な局面」と位置づけ、外交努力が再び活発化していると評価している。

一方、欧州委員会のフォンデアライエン欧州委員長は23日の声明で、「いかなる和平案も、第一に殺戮を止め、戦争を終わらせるものでなければならないが、将来の紛争の種をまいてはならない」とした上で、ウクライナの主権保護に関する三つの要素を列挙した。具体的には、①ウクライナの国境は武力によって変更されてはならない、②主権国家としてウクライナ軍に将来の攻撃に対して脆弱となるような制限を課すことはできない、③ウクライナの平和を確保する上で欧州連合(EU)の中核的役割が完全に反映されるべきだとした。また、ウクライナには自らの将来を選択する「自由で主権的な権利」があり、欧州への道を選んでいると強調した。

今回の修正協議の背景には、先に米国とロシアの特使がまとめた28項目の和平案がある。この原案は、クリミアやルハンシク、ドネツクなどロシアが占領する地域を「事実上のロシア領」として扱うことや、ウクライナ軍の規模に上限を設けること、ウクライナに事実上のNATO非加盟を憲法に明記させることなどを含み、多くのロシア側の要求を受け入れる内容だったと報じられている。また、凍結されたロシア資産約2,000億ドルの一部を米ロの共同事業や米国主導の復興投資に振り向け、米国がその利益の大きな割合を得る仕組みも盛り込まれていたとされる。この案はウクライナ政府や欧州諸国から「ロシア寄り」とみなされ、強い反発を招いていた。

こうした状況を受けて、英国・フランス・ドイツなど欧州主要国は、米案に対する修正案を作成してジュネーブ協議に臨んだ。欧州側の文書では、ウクライナ軍の兵力上限を米案の「60万人」から「80万人」に引き上げることや、領土問題については現行の前線(ライン・オブ・コンタクト)を基準とする停戦線を引き、主権や領有権の最終的な扱いは後の交渉に委ねることなどが提案されたとされる。また、NATO第5条をモデルとした米国による安全保障保証を設けること、凍結ロシア資産はロシアによる賠償が行われるまで凍結したままとし、ウクライナ復興の補償原資として扱うべきだと主張している。

ジュネーブの週末協議では、米国務長官ルビオ氏とウクライナ側高官が米案のほぼ全ての項目を協議したとされる。ウクライナ大統領顧問はAP通信に対し、領土に関するポイントは首脳レベルでしか決着できないため先送りされた一方で、ウクライナ側が以前から求めてきた安全保障の保証について、米側が「大きな柔軟性」を示したと述べた。ドイツのメルツ首相は、今回の協議により米案は「重要な部分で修正された」としつつも、依然として多くの論点が残っていると説明している。

米国内では、トランプ大統領が当初「ウクライナは27日までに和平枠組みを受け入れるべきだ」と期限を示して圧力をかけていたが、ルビオ国務長官は期限は絶対的なものではないと述べ、協議継続の余地を強調した。トランプ氏は協議後、自身のSNSで「ロシアとウクライナの和平交渉で大きな進展が起きている可能性がある」と記し、前向きな姿勢を見せている。一方でロシア大統領府ペスコフ報道官は、ジュネーブ協議後の修正案について「公式な文書はまだ受け取っていない」と述べ、メディア報道だけを根拠に内容を評価する考えはないとした。

戦場では、協議と並行してロシア軍によるウクライナ第2の都市ハルキウへの無人機攻撃が続き、市民に死傷者が出ている。ウクライナ側はロシア本土への無人機攻撃を継続し、ロシア国防省はモスクワ方面に向かった無人機を迎撃したと発表した。フォンデアライエン委員長は、こうした状況を踏まえ「殺戮を止めることと同時に、将来の侵略を抑止できる持続的な平和」が必要だとし、ウクライナの主権と防衛能力を損なわない枠組みが不可欠との認識を示している。

現時点で公開されている情報からは、米国とウクライナが共同声明で「精緻化された和平枠組み」の作成を確認し、欧州側も国境の不可侵や軍事力維持、EUの関与、将来の進路選択の自由といった原則を通じて、ウクライナの主権保護を和平の条件として打ち出していることが読み取れる。一方で、領土問題やNATO加盟の扱いなど最も敏感な争点は依然として未解決であり、ロシアを含めた本格的な停戦合意に至るかどうかは今後の協議に委ねられている。

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