• 2025/10/24 掲載

NEC・富士通ら続々参入「物流DX」…だが業界は警戒? 裏に潜む「データ囲い込み」の罠

連載:「日本の物流現場から」

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未だに人海戦術とアナログが幅を利かせている物流業界。だが、裏を返せばデジタル化による生産性向上・省人化の余地があるとも見なせる。その期待からか、多くのさまざまな物流ソリューションプロバイダーが参入し、また共同輸送・中継輸送などをマッチングするプラットフォームが誕生しつつある。しかし、一部の政府関係者、識者、物流事業者などからは、そうしたソリューションプロバイダーに対し、ある懸念の声も上がっている。本稿では、課題だらけの物流業界で進められているDXの実態に迫る。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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物流業界で続々と始まる物流協調プラットフォームはどんな懸念が上がっているのか
(Photo/Shutterstock.com)

限界を迎えた「単独での改善活動」

 現在、荷主企業を中心に「物流は、もはや競合領域ではなく協調領域である」という考え方が広まりつつある。あらゆる分野で人手不足が社会課題となる今、個社での改善活動は限界を迎えており、競合他社とも手を取り合って、広い視野で効率化や生産性向上を模索する必要があるからだ。

 そのために必要とされる要素の1つが、物流協調プラットフォームである。

『協調領域における共通プラットフォームの構築』。ITシステムの刷新には莫大なコストと時間がかかる。そこで、企業の競争力に関わらない協調領域については、個社が別々にシステム開発するのではなく、業界ごとや課題ごとに共通のプラットフォームを構築することで早期かつ安価にシステム刷新につなげることができると考える(割り勘効果)

 これは2018年に経済産業省が発表したDXレポートの一説であり、特定の産業を意識したものではないが、物流協調プラットフォームの必要性にそのまま当てはまる。実際に、数々の取り組みがすでに動き出している。

NECやヤマトなど、続々始まる「物流協調プラットフォーム」

 2025年3月、NECはメディア向けに「業界・業種を超えた共同輸配送プラットフォームの推進と展望」という発表イベントを開催した。かいつまんで説明すると、複数の企業が抱える物流ビッグデータを探索し、共同輸送できるマッチングを見つけ出す取り組みだ。

 NECでは、2024年4月~2025年3月にかけて、東名阪を中心に約10社で本プラットフォームを利用して共同幹線輸送を実現。今後、この取り組みを拡大し、2027年3月には約70社まで参加企業を増やし、また対象エリアの拡大、モーダルシフトへの対応なども目論んでいるという。

 ほかにも国の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、スマート物流実現への実証実験の1つとして、各社が蓄積してきた物流データと一部の商流データを共有し、可視化するためのオープンなデータ基盤となるSIPスマート物流基盤プラットフォームを構築・検証していた。

 またヤマトホールディングス傘下のSustainable Shared Transportは、2025年1月、富士通の物流データ基盤を活用し、共同輸配送システムの稼働を開始した。この取り組みでは、富士通およびヤマトホールディングスが、SIPスマート物流プロジェクトを介して得たノウハウが投入されている。

 このように、運送案件や輸送リソースなどの物流データを共有し、共同輸送・中継輸送を推進して、輸配送の効率化を目指そうというデータドリブンな取り組みが拡大しているのだ。 【次ページ】業界が警戒する「ベンダーへの懸念」とは
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