- 2025/12/24 掲載
BYDのシーライオン6、日本でPHEVを「今売り出す」市場戦略が“さすが”だった(2/2)
競合はトヨタの「あの車種」か
BYDとテスラ、メーカーとしての違いの1つが、テスラはEVのみであるのに対し、BYDはEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)を販売している点だ。BYDの世界販売台数を見てみると、2024年の内訳では、EVが41.5%、PHEVが58.5%で、実はPHEV販売のほうが優勢である。今回発表されたシーライオン6は、そのPHEVであり、日本市場に同社として初のPHEV導入となる。
では、そんな同モデルは、具体的にどんな特徴を備えるのだろうか。
シーライオン6は、SUV(スポーツ多目的車)のPHEVだ。BYDのSUVは、EVのATTO 3(アット・スリー)が最初の1台として日本で発売され、後にシーライオン 7が売り出された。車体寸法による車格として、シーライオン6は、その2台の間に位置し、PHEVという新たな価値を提供する。
競合車は、トヨタRAV4 PHVや、三菱アウトランダーPHEVと言えるのではないか。
PHEVがプラグインハイブリッド車の意味であることから、ハイブリッド車(HV)の一種だと思うかもしれない。しかし、世界的に電動車といった場合、そこにHVは含まれない。電動車というとき、充電機能を持ち、ある一定の距離をモーターのみで走行できることを前提としている。
シーライオン6は、車載のリチウムイオンバッテリーを満充電にすると、100km(2輪駆動車)をモーターのみで走行できる。
HVは、発進のときなどある程度モーター走行できる車種があるが、そのまま連続して数十kmを走り続けることはできない。
ガソリンエンジンでの発電など手助けを必要とする。また、充電機能を持たないので、電動車の枠組みに入らないのである。
日本市場で持つ「PHEVならでは」の強みとは
シーライオン6導入の背景にあるのは、EVにまつわる日本の消費者、あるいは国内媒体の報道で、走行距離への不安、充電に対する懸念、価格の割高感といった3大否定要素が、いまだに解消していないからだ。PHEVなら、バッテリーの充電電力を使い切ってもHVとして継続走行でき、シーライオン6の場合、のべ1000kmを超えるという。
また充電器を見つけられなくても、ガソリンを給油すれば続けて走れる。
販売価格は、車格が下のアット・スリーより安い398.2万円(2輪駆動車)からの値付けだ。競合他社のPHEVと比べても、4輪駆動車同士の比較で80万円以上安い。しかも、これまで販売されてきたBYDのEVを知れば、「安かろう、悪かろう」のはずはない。
かつて、BYDを含め中国製EVが売り出されたとき、日本では「中国はエンジンのような複雑な動力を自らつくる技術がないから電気にした」と侮蔑する声があった。
だが、シーライオン6はガソリンエンジンを搭載し、圧縮比15.5、熱効率43.04%と、世界最高水準の性能に遜色ない。しかも、世界7位の販売台数である。
こうした現状は、日本企業が白旗を上げる日は遠くないどころか、すでに後塵を拝していると捉えることができる。企業としての歴史の長さに関係なく、その成長の軌跡から学べることは多いのではないだろうか。
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