• 2026/02/09 掲載

フォードやGMより「一枚上手」?マツダのEV発売延期は「後退じゃない」と言えるワケ(2/2)

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マツダのHVシフトは「後退じゃない」と言えるワケ

 こうした環境の中で、マツダが自社開発の次世代EVを少なくとも2029年まで延期し、当面はハイブリッドを優先する方針が報じられた。マツダCEOの毛籠勝弘氏(Masahiro Moro)は、EV比率の見通しを従来の「2030年に25~40%」から「25%を下回る」と語ったとされる。

 北米はマツダにとって収益源だが、同社の初期EVであるMX-30は電池容量が小さく航続距離が短いことが弱点となり、販売は限定的だったと報じられている。次世代EV SUVの開発自体は進めつつも、米国での関税や税額控除の扱いが不透明になり、2025年後半に販売インセンティブが失効したことが需要に影響したという見立てもある。マツダが投入時期を2027年から2029年以降へずらしたのは、技術の停滞というより、政策と需要の時間軸が読みにくい市場で「採算が立つ投入点」を探す動きと捉えるべきだ。

 この判断を「後退」と断じるのは早い。中堅メーカーのマツダにとって、EV専用プラットフォームや電池調達網を前倒しで整える投資負担は重い。需要が政策や金利、残価で大きく振れる局面では、台数を積み上げても利益が残らないリスクが高い。

 そこで、まずは販売が読みやすいSUVの主力領域でHV・PHEVを厚くし、収益と顧客基盤を確保したうえで、専用EVを投入する「時間を買う」戦略が合理的になる。実際、マツダは既にCX-50 HybridやCX-70/CX-90のPHEVなど電動車の裾野を広げており、人気SUVのCX-5向けに自社ハイブリッドを2027年に投入する計画も報じられている。EVを止めるのではなく、主力商品で電動化比率を引き上げながら、専用EVの投入時期を市場成熟へ合わせる構図だ。

マツダの動きにみるEV市場「3つの論点」

 ここまで見てきた米国EV市場の失速と大手の投資修正、マツダのHV重視は同じ線上にある。

 第一に、需要が鈍る局面では、設備稼働率の低下が損益を直撃する。EV専用の工場・部材構成は柔軟性が低く、売れ筋が変わると固定費の吸収が難しい。第二に、販売はインセンティブに影響されやすく、施策の有無が四半期ベースで台数を動かす。Cox Automotiveが示した2025年Q4の急落は、その象徴である。

 第三に、投資の焦点が「台数」から「利益が出る電動車」へ移っている。フォードが大型EV SUVを中止し、GMが能力目標の再掲を避けたのは、需要に合わせて投資を最適化するためだ。

 部品サプライヤーにとっても示唆は大きい。EV一本足の設備投資は需要変動の影響を受けやすい一方、HV・PHEVは当面の量が見込みやすく、電池やモーター、電力変換などの部材需要は「伸び方」が変わる。完成車メーカーが複線化を進めるほど、サプライチェーン側には生産の切り替えや共通化、在庫管理の高度化が求められる。需要の山谷を前提に設計することが前提になる。

 各社がどの市場で、どの価格帯で、どの電動パワートレインを組み合わせ、変動に耐える収益構造を作るのか。いま起きているのはEVの否定ではなく、投資と需要の時間軸を合わせ直す再編であると捉えるべきだろう。

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