実際、流通・サービス業でも、現段階では価格競争の下で販売単価や客単価の値下がりが加速している。その結果、生産量や業務量には大きな変化がないにもかかわらず、売上が年々低下していくという悪循環に陥ってしまっているわけだ。
「こうした状況の中、『可能な限りコストダウンしよう』とか『従業員の生産性を向上しよう』、あるいは『不良を減らし、歩留りを上げよう』『サービスレベルや品質を上げよう』といった活動を試してはいるものの、そういったノウハウが蓄積されておらず、どうやったらいいのかわからないという経営者の方が多いようです」と松本氏は語る。
中堅中小企業が直面するこうした課題の解消に向けては、以前から情報システムの活用が有効であると強調されてきた。しかし実際には、多くの企業が様々な要因からそうした要請に応えきれずにいる。それはなぜなのだろうか。
「まず挙げられるのが、要員がいないという問題でしょう。情報システム自体、ほとんどの中堅中小企業に浸透してきていますが、その管理となると、総務や経理の担当者が本来の業務と兼務する形で対応しています。そうした状況では、新たなシステムを導入したり、現行システムを強化するといったことまで手が回りません」とNECの柳田 真氏は指摘する。
実は中堅中小企業の経営者の多くは、自社のIT活用のあり方やシステムがすでに陳腐化していることを理解している。しかし、このままシステムを“塩漬け”にして使い続けるのか、どこかで踏ん切りをつけて、クラウドなど新たなIT環境に移行するのかといった点も含め、どうすべきかがわからずに頭を抱えているのだ。
「とはいえ、仮にそうしたことをベンダーやコンサルに相談しようとしても、技術の話になるととたんに難しくなってしまうし、システムの構築や相談に高い費用を取られるのではないかという不安もつきまといます。そこで、多くの中堅中小企業の経営者が、安心してそうした相談に乗ってもらえる相手がほしいと考えているのです」と日本能率協会コンサルティングの横川 省三氏は語る。
売上が下がっている。ただ、IT活用も相談する相手もいない。こうした状況を解決するために、どのようなアプローチが求められるのだろうか。