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  • 2019/10/07

“2025年の崖”で深刻化するIT人材不足、「プロジェクトマネジメント人材育成」の極意とは

もし2025年までに、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を達成できなければ、毎年12兆円の経済損失が発生するという衝撃的な試算が経済産業省から発表された。ユーザー企業は老朽化したレガシーシステムを刷新し、DXを強力に推進していく必要があるだろう。しかし、ITを支える人材は圧倒的に不足している。そのような状況で、現場の旗振り役としてのプロジェクトマネージャー(PM)をどのように育成していけば良いのだろうか。

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「2025年の崖」から転げ落ちないためにも、プロジェクトマネージャーの育成は急務である
(Photo/Getty Images)

迫る「2025年の壁」、“ITマネジメント人材育成”が急務であるワケ

 昨年、経済産業省から発表された「DXレポート」は、IT業界に少なからぬインパクトを与えた。このDXレポートが衝撃をもって受け入れられたのは、DXを達成しなければ、最大12兆円の経済損失が2025年以降に毎年発生するという試算だった。

 現在、約8割の企業が老朽化したシステムを抱え、それがDX推進の足かせになっている。このまま企業がレガシーシステムを引きずると、メンテナンスコストだけでなく、システムトラブルも起き、さらなる機会損失も含めて12兆円では済まない損失のリスクが潜んでいる。

 かつて日本のお家芸であった「カイゼン」が裏目に出て、システム改修が困難になっているケースもある。それを標準パッケージで使えるようにしたり、既存システムをクラウド化したり、基幹系のSAP R/3をSAP HANAへ移行するなど、問題も山済みになっている。

 こうした問題を解決するために、多くのプロジェクトが立ち上がったとしても、そもそもユーザー企業にはIT人材が不足している。いまユーザー企業のIT人材は圧倒的に少なく、その7割がIT企業側に集中しているという状況だ。

 あと5年間で、ベンダー依存のマネジメントから脱却し、内部で対応できるプロジェクトマネージャー(以下、PM)を育てる必要に迫られている。
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2025年の壁を乗り越えるために企業がすべきこと。PMや若手人材の組織的な育成が急務だ。またベンダー依存のマネジメントから脱却し、社内スキルの蓄積も必要である

 では、この「2025年の壁」に備えるべく、ユーザー企業は一体どのようにしてリーダーとなるPMを育成していけば良いのだろうか?

PMが持つべき「タレントトライアングル」と「PMCDF」とは?

 どの企業もPMを育成したいと熱望している。ただし、具体的に求められる人材には、「課題解決型」と「価値想像型」の2パターンが必要だ。

 課題解決型とは、レガシーシステムなどのように課題が明確なものに対応できる人材だ。一方の価値創造型とは、課題や仕様が明確でない中で、新しい仕事や価値を生み出せる人材のタイプを指す。

 DXでは後者が重要になる。求められるスキルは、IT技術だけでなく、マネジメント力そのものだ。自発的に動く力、俯瞰(ふかん)する能力、問題解決の能力などが求められているわけだ。

「このマネジメント能力に必要なスキルとして"タレントトライアングル"があります。PMに求められるコンピテンシーとして、テクニカル・プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、戦略的およびビジネスのマネジメントという3つ大きな指針が挙げられます」と語るのは、TISにおいてPM教育を担当している利根章氏だ。

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TIS プロジェクトマネジメント部 マネージャー
利根章氏

 テクニカル・プロジェクトマネジメントは進捗(しんちょく)や品質などの管理が中心になる。リーダーシップについてはヒューマンスキルが重要だ。またプロジェクトマネジメントは経営と結び付くため、戦略的・ビジネス的な視点も大切になってくる。

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マネジメントに必要な要素その1。PMには「テクニカル・プロジェクトマネジメント」「リーダーシップ」「戦略的およびビジネスのマネジメント」という3つの「タレントトライアングル」が求められる

 もう1つPMが持つべきスキルに「PMCDF」(Project Manager Competency Development Framework)があり、コミュニケーション能力、指導力、マネジメント能力(チームビルディング)、認識能力、効果性、プロ意識の6つが定義されている。これらを考慮しつつ、人材育成の教育プロセスを作っていくわけだ。

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マネジメントに必要な要素その2。PMが持つべき6つのコンペテンシーを定義した「PMCDF」(Project Manager Competency Development Framework)も重要だ

DX時代だからこそ、PMが知っておきたい「4つのポイント」

 前出の課題を踏まえながら、利根氏はDX時代にPMが知っておきたい「4つのポイント」についても解説した。

 まずは「戦略およびビジネスに関する知識」だ。1950年代から知られる「カッツモデル」という理論で、マネジメントレベルが上がるにつれ、必要なスキルが変化するという考え方がある。最初はテクニカルスキルが重要だが、そこからヒューマンスキル、最終的に戦略的思考など、コンセプチュアルなスキルが求められる。

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DX時代に、PMが知っておきたいポイント、戦略およびビジネスに関する知識における「カッツモデル」。マネジメントのレベルにより、求められるスキルが変化するので、それに応じた対応が必要になる

 2つ目は「アジャイルへの対応」である。以前までは「ウォータフォール型か、またはアジャイル型か」という二元論で語られることが多かったが、いまやアジャイルは当たり前。PMとしても両方に対応できなくてはいけない時代になっているのだ。

「プロジェクトの特性によって、本番リリースが1回で終わる場合と、何回も行う場合で使い分ける必要があります。つまり先が見える予測型ならばウォータフォール型の開発、要件が不確定な状況で定期的なリリースが可能ならばアジャイル型の開発になります。これらを組み合わせていくことがポイントです」(利根氏)

 3つ目の「ヒューマンスキル」も大切だ。AIによって、PMのテクニカルなタスクの80%が奪われるという話もあるが、リーダーシップに代表されるヒューマンスキルは、まだまだAIに奪われることはないだろう。

 4つ目は「多様性・グローバル化への対応」である。最近では社員にシニアや外国人も増加し続けている。そこで、どうやって彼ら彼女らをまとめて、チーム全体を率いていくかというスキルも求められる。

実践スキルを定着させるには? PM育成に必要な教育メソッド

 これらのスキルはPMにとって不可欠なものだが、たとえ研修を受けて知識が得られても、経験を踏んで実践的なスキルとして応用できなければ、本当の意味で定着しない。メンタリングやコーチング、1on1などの個人面談も組み合わせ、PM育成の基本モデルを回していくことが肝要である。

 ほかにも研修の組み立て方として「PBL(Problem Based-Learning)」という教育方法もある。PM育成では、実践の場でマネジメントを学べる機会が多いので、プロジェクトで課題解決に取り組むことが望ましい。ただし、これはファシリテーターの力量も必要になるので難しいところもある。

「そこでPBLの難点を補うために、プロジェクトの事例や短いショートケースをベースに、仮想的なプロジェクトを経験してもらうことで、各自のスキルの定着を図る"ケースメソッド/ショートケース"も効果的です」(利根氏)

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プロジェクトの事例を基に参加者が討議する「ケースメソッド/ショートケース」。仮想的なプロジェクトを経験から、各自で気づきとスキルの定着を図れる。短いショートケースを事例に使うこともある

 もう1つは「リカレント教育」だ。いまはAIなどの新技術がどんどん普及している。その一方で、人生100年時代と言われるように、就労期間も長くなりつつある。そこで生涯のどこかで大きな学び直しが必要になってきた。最新情報の習得や、まったく別の分野への挑戦、ヒューマンスキルの向上なども対象になるだろう。

社内教育や研修体制を作り上げるプロセス

 最後に利根氏は、TISが培ってきたPM人材育成アプローチと、他社への支援メニューについて触れた。

 PMを育成するための社内教育や研修体制を立ち上げる際には、まずPMの能力とレベルを定義し、具体的にどんな人材が必要なのかを検討する。たとえばTISでは「素養人材」「準戦力人材」「即戦力人材」「中核人材」「高度人材」という5段階に人物像を定めたそうだ。

 そのうえで、各対象のマッチする研修設計を行って、教育体制を整えていくという流れだ。現場でのアセスメントを行い、スキル診断により見える化し、eラーニングから1on1まで、さらに有識者セミナーなども社内で実施しながら、スキルアップにつなげ、PMを育成していく。

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TISのPM育成の全体像。社内教育や研修体制を立ち上げる際に、PMの能力とレベルを定義してから、研修設計を行って、教育体制を整える。そのあとの運用も現場と連携しながら推進していく

 もちろん研修は1回で終わるものではない。何度も繰り返し、さらに現場のプロジェクトを同時に推進したり、その知見をフィードバックする。アジャイル試行を取り入れて、実践的なものにしていく必要がある。このような経験の蓄積から、個人と組織が育成のPDCAを回せる体制が作られていくのだ。

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