もう「モノ」は売れない? なぜ顧客体験を “可視化”しないと生き残れないのか
よい商品・サービスを低価格で提供するだけでは生き残れない
毎月あるいは毎年、一定額を継続的に支払うことで利用できるサブスクリプション(サブスク)型のサービスが増えている。各種クラウドサービスや動画・音楽配信、ゲームなどはもちろん、クルマやホテルなどでもサブスク型のサービスが登場している。また「企業向け」、つまりBtoBの領域でも継続的なプロジェクト管理や保守・サービスといったあらゆる領域でサブスク型サービスのニーズが高まっている。ユーザーにとってのメリットは、少額で利用を開始できて、かつ少しでも不満があったり、より安く、より多機能なサービスが見つかれば、すぐに移行できることだ。
しかし、これはサービスを提供する企業にとっては厳しい。機能が変わらなければ価格の安い競合サービスに、逆に価格が同じであれば機能の多い競合サービスに、顧客はあっという間に移動してしまうからだ。
こうした環境では、価格や機能だけではない“何か”によって顧客を引き留める必要がある。そこで生まれたのが「モノからコトへ」という潮流だ。これは、顧客が商品・サービスを使って得られる顧客体験(コト)に着目し、その価値を高めようという考え方である。
「エンゲージメント」「共感」「ロイヤリティ」……などなど、さまざまな言葉で表現される “モノ”ではないもっとエモーショナルなつながりこそが、顧客をつなぎ止める重要な要素なのである。
ただし、「モノからコト」の実現は容易ではなく、特に日本企業は、それが得意とはいえない。その一端はコロナ禍の現在、一般消費者が企業に何を求めるかを調査したデータで示されている。この調査によると1位は「商品やサービス(43%)」で、「カスタマーサービス(23%)」「価格(18%)」「社会貢献(16%)」と続く。
このうち、「商品やサービス」の品質を高め、「価格」を抑えることは日本企業のお家芸だ。一方、「カスタマーサービス」と「社会貢献」の2つはどうだろうか。この2つは、まさに “コト”であり、顧客体験そのものである。 「顧客体験」という、目に見えない「曖昧(あいまい)」な領域をいかに可視化し、どのような指標や環境で変革に挑むべきかを解説する。
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