• 2026/01/19 掲載

SBI新生「ハイパー預金」1兆円がヤバすぎる、金融業界者が知るべき預金ビジネスの変化(2/2)

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公開資料で読む「1兆円」の条件

 公開情報から、1兆円を作った条件を分解すると三つに整理できる。第1に、口座開設と利用開始の導線である。SBIハイパー預金の利用にはSBI新生銀行口座とSBI証券口座の両方が必要で、銀行側の申し込みに加えて証券側で利用開始手続きが要る。逆にいえば、この手続きを乗り越えた顧客は、証券取引の資金を預金に置く行動へ移りやすい。

 第2に、制度面の安心感だ。SBIハイパー預金は預金保険の対象であり、元本保証という位置付けが明確だ。証券口座の預り金と比べても、資金の置き場を変える心理的ハードルが下がる。

 第3に、金利の見せ方である。特別金利は最大年5.0%相当(税引前)と分かりやすい数字で提示しつつ、実際の付与は現金特典で行う。さらに総残高に応じて倍率が上がり、上乗せ分をキャンペーン開始日にさかのぼって計算する。個々の金利ではなく、集団の進捗を可視化して行動を促す設計だ。

アップルやSoFi、Nubankも大成功、預金を集める具体的な方法

 他社が同様の成果を狙うなら、まず「預金をどの行動に埋め込むか」を決める必要がある。投資、決済、給与、法人の資金管理など、資金が発生する場面は複数ある。連携を設計する際は、顧客が日々行う行動に自然に接続し、残高が残る理由を作ることが重要だ。

 この点で参考になる海外事例がある。米アップルは、クレジットカードにひも付く貯蓄口座「Apple Card Savings」をアプリ(Apple Wallet)に組み込み、手数料なし、最低預入額なしといった分かりやすい条件を示した。アップルは公式に、2023年4月の開始から約4カ月で預金残高が100億ドルを超えたと公表している。また、Forbesは関係者情報として、開始後数日で約10億ドル規模の預金が集まったと報じた。いずれも、既存の利用行動に預金を組み込んだ点が共通する。

 もう一つは米フィンテックのSoFiだ。同社は決算資料で、預金の大半が給与振込(direct deposit)を通じて流入していると説明している。預金を単体で売るのではなく、日常の資金の入口を押さえる設計が、残高の定着につながった。

 新興国では、ブラジル発のデジタル金融であるNubank(Nu Holdings)が預金基盤の拡大を事業ハイライトとして開示している。既存顧客の利用頻度を高め、その延長で預金を積み上げる順序が特徴だ。

 再現にあたっては注意点も多い。第1に、資金流入の起点を握るパートナーとの接続が欠かせない。第2に、規制やシステムの制約から、すべてを自動化できない場面が残る。第3に、強力なキャンペーンほど終了後の資金定着が課題になる。残高を一時的に積み上げたのか、日常の資金の居場所を作れたのかを見極める必要がある。

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