「とりあえず人員配置」はもう卒業、データ活用で最適化を実現する「超」簡単手法とは
「とりあえず配置」が招く悪循環とは
この状況を鑑みて、人員配置の最適化はタレントマネジメントの中でも特に注目される要素となっている。SmartHRがHR総研と共同で行った調査では、企業の約39%が人材の適正配置をタレントマネジメントの目的として位置づけている。適切な人員配置こそが、事業の成果や従業員の満足度向上に直結すると考えられているからである。
しかしながら、多くの企業には人材配置の進行に関する課題が存在する。まず、配置に必要な情報が整理されていないため、情報は一部の人間の知識として保有され、属人化している。また、情報の不整合に起因して配置業務に多くの時間を要し、情報の収集や整理も適切に行えていない。そして最後に、ポストの空白を埋めるための短期的な配置、いわゆる「とりあえず配置」が行われることも多い。
この「とりあえず配置」について、「多くの組織が『とりあえず配置』をしてしまう事情はよく分かりますが、悪循環に陥っていくリスクもあります」と指摘するのはSmartHR タレントマネジメント事業 事業責任者の重松 裕三氏だ。
同社は人事労務のクラウドサービス「SmartHR」の提供を行い、重松氏はそのサービス企画を担っている。
では、重松氏の言う悪循環とは具体的にどのようなもので、とりあえず配置やそれに伴う悪循環を避けるためにはどんな対策が必要なのだろうか。
データ活用が「超重要」と言えるワケ
この問題への対応として、重松氏はデータ活用の重要性を強調している。特定の人の頭の中や部署や担当者ごとにバラバラに管理されていた情報が一元管理されれば、配置に必要な情報の属人化を防ぐことができる。さらに、データが整理されていれば、配置検討者はデータを直接確認し、従業員の概要を迅速に把握できるため、情報収集の時間を削減できる。そして、単にポストの空きを埋めるのではなく、事業の成長や特定のプロジェクトのために適切な人材を配置するという攻めの配置も実現できるのだ。
実際、従業員データの活用ができている企業は人員配置に成果が出ているという。SmartHRがHR総研と共同で行った調査では、人員配置に成果が出ている企業とそうでない企業では、従業員データの活用について35%以上の差があった。
また、コロナ禍によるリモートワークの普及は、部下とのコミュニケーションの課題を浮き彫りにしているとも重松氏は指摘する。
一般社団法人日本セルフエスティーム実践協会が実施した「オンライン環境でのコミュニケーション課題」アンケートでは、95%以上がコミュニケーションに課題を感じていると回答。コロナ前、多くの経営者は従業員の仕事内容や状況を把握していたが、リモートワークの増加により、その認識が難しくなっている。この変化により従業員の特性や能力をデータによって理解する必要性が増していると言えるのだ。
データの統一管理が課題
人員配置のための人材データは、入社手続きや身上、役職の変動から得られる労務的なデータと、スキルや評価、キャリア希望やエンゲージメントといった人事的なデータの2種類から成る。しかしこれらのデータは部署ごとに統一されていない、または収集が不十分で、人事データの整備が困難な状況にあると重松氏は話す。
このデータの整備が進まない一因として、データの収集管理がさまざまな仕組みにまたがっていることが挙げられるという。基幹システムには労務情報や評価データが入力されているが、その利用が人事部門に限られていたり、使い勝手の問題で現場のマネージャーはExcelを使用しており、そのファイルは各自のローカルに保存されていて連携していなかったりする。
加えて、資格情報や証明書のコピーといった紙ベースの情報も存在している。このようにデータが異なる場所や形式で保管されているため、統一されたデータ管理が難しく、結果としてデータの整合性が取れない状態という課題があるという。
人員配置に向けた「3ステップ」とは
重松氏によれば、最適な人材配置には3つのステップが必要だという。
最初のステップ1では、人員配置の目的と必要なデータの整理を行う。例として、注力事業の成長に向けた主力メンバーの増員を目的とする場合、基本情報に加え、事業の成果を出せるスキル、評価、経歴などのデータが必要となる。一方、若手社員の成長機会を増やすことを目的とする場合、エンゲージメントのデータやキャリア希望、滞留年数などが考慮される。ステップ1の目的とデータの整理が進行すると、ステップ2以降のデータ収集や管理体制の構築、実際の配置実施の内容も変わる。
ステップ2では、ステップ1で判断したデータの収集管理体制の整備を行う。しかし、先ほども紹介したように、多くの企業がシステムを導入してもアナログな業務が一部残っていたり、データの収集先が複数あったりするといった課題が浮上しており、データ収集管理を一元化し、操作性の良いシステムを導入するといった対策が求められる。
最後のステップ3では、データを活用して最適な人員配置の実施を行う。実施例として重松氏が挙げるのが環境技研の事例だ。同社では受注案件の偏りにより特定部署の業務が集中する課題があったが、スキルの棚卸しや部門長の習熟度評価を基にスキルマップを作成し、人員配置を行った結果、1人当たりの年間総労働時間が100時間削減されたという。
自然にデータが集まる仕組みの作り方
重松氏によると、適切な人員配置を支援するソリューションとして挙げられるのが、「SmartHR」だという。
「SmartHR」は労務管理からタレントマネジメントまでを一気通貫で行えるクラウド人事労務ソフトであり、5万社を超える企業から利用されている。利用継続率は99%以上で、労務管理クラウドとして5年連続シェアナンバーワン(※)を誇り、満足度もトップを維持している。金額ベースのシェアは48%で、業界や規模を問わず、さまざまな企業が導入している。
同サービスの最大の特徴は、必要なデータが自然と集まる仕組みを持っていることだ。従業員が入社手続きやキャリア希望のアンケートに答えることで、労務データと人事データが一元管理される。その結果、従業員データの活用が必要な時には、いつでも「SmartHR」を参照することで、データを即座に利用できる。多くの人事施策は即座に行われるものではなく、適切なタイミングでの検討と実行が求められるが、「SmartHR」を活用すれば、施策を行う際のデータ収集や整理の手間を省くことができる。
「SmartHR」は労務と人事のデータ収集・管理を可能にし、具体的には入社手続きや身上変更などの申請を通じて、データを収集・蓄積する。労務業務を効率化しながら最新のデータを集めることが特長であり、人事評価や従業員サーベイの機能を活用することで、評価やスキルの情報なども収集し、これを人員配置に利用できる。
スキル管理機能は、従業員からスキル情報を収集し、一元管理するもので、集めた情報はスキルマップとして分布を見定めたり人員配置の参考情報としての活用が可能である。「SmartHR」を通じてスキル情報や資格情報を可視化できるため、個別のExcelファイルなどを使った管理から脱却できる。
また、配置シミュレーション機能を使えば、「SmartHR」に登録された従業員データを顔写真のドラッグアンドドロップなどで直感的に操作し、部署ごとの統計データを参照しながら配置を検討することも可能だ。センシティブな情報の表示や非表示の設定もでき、配置後の業務も「SmartHR」を用いて効率的に行うことができる。特に、役職や役割に応じた権限設定が行えるため、個人情報の保護を確保しつつ、配置を検討することもできる。
「SmartHR」はこれらの機能をさらに拡充していく予定であり、多くの企業にとって、最適な人員配置をはじめとするタレントマネジメントの支援を提供していくという。
「SmartHRでは“Employee First”という考えを持ち、全ての人が信頼し合い、気持ちよく働くことをサービスビジョンとして掲げています。主に人事や労務の担当者さまをターゲットにしていますが、経営者や従業員の方々も含め、皆さんが真に必要な業務に集中し、気持ちよく働けるようにサポートするプロダクトを目指しています」と重松氏が話すように、データに基づいた最適な人材配置の心強い味方と言えるだろう。
出典元:「人事異動・配置転換の実施」に関するアンケート【HR総研×株式会社SmartHR 共同調査レポート】