業務改革の切り札・プロセスマイニングが「生成AI」で劇的イノベーションの凄まじさ
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生成AIが実装されることで生まれたイノベーション
そのプロセスマイニングにおいて、グローバルで圧倒的なシェアを誇るのがCelonisだ。さまざまな業務アプリケーションと連携し、トランザクションデータを取り込み、ビジネスの流れをリアルタイムで見える化しつつ、オールインワンでプロセスの分析/改善/モニタリング/管理を1つのプラットフォームで実現している。
そんなCelonisだが、生成AI機能との連携でビジネス課題の解決に対する期待感がさらに高まっているという。Celonisのドイツ本社でAIチームを率いるアレクサンダー・ヒル氏は、「生成AI機能であるAI Annotation Builderの実装によって、より多くのビジネス課題を解決ができる可能性が広がりました」と胸を張る。「現状では、企業での生成AIは表面的な利用にとどまっているケースがほとんどではないかと考えています。AI Annotation Builderは、プロセスマイニングと組み合わせることで、企業で生成AI活用の強みがフルに生かされることになります」。

Applied AI ディレクター
アレクサンダー・ヒル 氏
「たとえば、エンジニアの作業をサポートするために、録音データから議事録を作成するといった使い方は、利便性は高いものの、表面的で業務の一部を効率化することに留まっています。Celonisのプロセスマイニングに生成AIが加わることで、各企業に特化した業務課題を従来よりも迅速に解決することができるようになりました。プロセスマイニングで在庫に課題があることを明らかにしたのちに、AIを用いて担当者に推奨や連絡するという『アクション』までの一連の流れを完結することができるようになるのです」と続ける。
つまり、顧客企業ごとにCelonisによって蓄積された、該当企業に特化した情報(プロセスインテリジェンス)を生成AIに提供することで、その企業固有の問題解決のアクションにつなげることができるというわけだ。
「今までも、プロセスの中に潜んでいた非効率な部分を見つけることはできました。Celonisにて集められた各企業のプロセスインテリジェンスにAIが加わったことで、より迅速に、企業固有の環境を理解したAIによる分析と改善に関する施策を提案や実行できるようになりました。解決に向けて、たとえば不具合がある箇所について、なぜ、それがそのお客さまの環境にて不具合になっているのか、さらにどうすればそれを解決できるのかを企業の環境に合わせて迅速に行うことができるようになったのです」(ヒル氏)
AIが加わったことの強みは、単に問題点を見つけるスピードが速くなったことにとどまらないという。
「大切なのは問題点がどこにあるのかを発見することだけではありません。その後もモニタリングし続けることができる点にあります。また、通常、生成AIに正しい答えを出させるためには、RAGなどを活用し、その企業の独自データを読み込ませる必要があります。しかし、Celonisを利用してプロセスマイニングを行ってきた企業は、すでにAIに読み込ませるのに適した企業データを持っています。つまり、プロセスマイニングで蓄積してきたデータをAIに理解させるために活用することができるのです」(ヒル氏)
現場のリアルな悩みを解決するハッカソンを開催
参加各社の課題は、「マスターデータの見直し」「ERPアップデートの優先度付け」「コールセンターでのデジタル応答改善」「社内SOC(セキュリティ・オペレーション・センター)におけるリアクション」など多岐にわたる。
参加各社は相応の準備をしつつ同ハッカソンに臨む形だが、当日の午前中にユースケースの目標成果設計やシステムの構築が行われ、夕方には早くもその成果を発表する形になる。
デモ発表会での1テーマをあげると、余剰在庫削減に取り組んだ富士通では、部品調達に苦しんだ時期があったことからリードタイムを長めに取る習慣が定着しており、滞りなく部品調達ができるようになった現在でも余剰在庫を長期間抱えがちになっていたという。
この課題をCelonisで分析し、計画と実際の差がどれくらいあるのかを可視化していった結果、リードタイムが必要以上に長いものがかなりの割合あることが明らかになった。
この発表に対し、今回のハッカソンの審査員をつとめたCelonis日本法人 代表取締役社長 村瀬将思氏は、「余剰在庫を抱える日数を短縮することで、どれくらいのコストを減らすことができるのか。価値換算として数値を示し、社内にアピールしていくことをお勧めしたいと思います」と話した。
AIの活用で人手に依存していた作業から脱却
たとえば「マスターデータの見直し」に取り組んだパナソニック インフォメーションシステムズでは、日本では適切に管理されているマスターデータであっても、海外の子会社において、特に間接材では同じ部材でも異なるマスターで管理されていることがあったという。同じ部材を調達しているにもかかわらず、マスターの重複により在庫の最適化ができない訳だ。
そこで重複しているマスターデータを洗い出し、見直しを図るためにプロセスマイニングを活用し、さらにAIを活用することで修正すべきマスターデータの優先度付けを行い、在庫の適正化を実現できる手ごたえを得たという。
パナソニック インフォメーションシステムズの林氏は「経験や、勘などに頼っていたマスターデータの修正作業を、プロセスマイニングとAIを利用して改善に取り組みました。従来では手作業で重複データを見つけていましたが、その作業から解放され、さらにAIを活用することで修復で優先すべきデータをピックアップするなど、迅速で効率的な修正へとつなげていくことができるようになりました」と語る。
AIの成果を得られた例をもうひとつ紹介しよう。「社内SOCの改善」に取り組んだ日立システムズでは、インシデントが発生して早期検知したものを該当事業部に連絡し、インシデントによる影響の有無などを確認する運用になっていた。
しかし、SOC側が納得できるような返答が返ってこないケースもあったという。この返答についてプロセスマイニング+AIで分析確認することで、従来は週次で行っていた確認作業がリアルタイムで行えるようになったという。
これについて日立システムズの梁氏は「これまで分析ツールを使って確認作業をしてきましたが、分析はできてもその後のアクションは人間が手作業で行う必要がありました。ですが、AIによって分析からその後のアクションまで、一連の作業をサポートしてくれるのは大きな成果です」と評価する。
他社の参加者からも他社の取り組みに共感する声が数多くあがった。「他社のプレゼン内容がとても参考になった。会社に戻ってから、ハッカソンで得た経験を生かして本格的に改善を進めるとともに、社内にもその効果を伝えていきたいです」という感想を述べるハッカソン参加者もいた。
プロセスマイニングと生成AIのセットでの提供はスタートしたばかりだが、利用者からは劇的な効果を感じる声が相次いだ。業務改善に取り組む企業にとっては、一度は試してみる価値があるイノベーティブなソリューションといえるのではないだろうか。