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  • 2025/11/18 掲載

「AIエージェントの波」に乗り遅れるな、IBMが示す“マルチエージェント時代”の現実解とは?

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RPAが業務を変えてから10年、AIが再びオフィスの常識を塗り替えようとしている。AIが人の言葉を理解し、社内システムと連携しながら自律的に動く、それが「AIエージェント」だ。いま、世界は“単体AI”の時代から“マルチAIエージェント”の連携へと進化している。だが、多くの企業は導入の壁に阻まれ、PoC(概念実証)止まりのままだ。そんな中IBMは、複数のAIエージェントを協調させ、業務を安全に自動化するための“司令塔”として「watsonx Orchestrate」を打ち出した。マルチエージェント時代を先取りする、オーケストレーションの現実解とは何か。
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AIエージェントが“働き方”を変える
(Photo/Shutterstock.com)

AIエージェントが変える仕事の常識

 かつて「デジタルレイバー」と呼ばれたRPAが登場したのは約10年前のことだ。当時は「10年後にホワイトカラーの仕事の半分がなくなる」と話題になったが、いま現実に登場したのが、より進化した存在であるAIエージェントである。

 日本IBMの長谷 真太郎氏は、「AIエージェントは人の言葉を理解し、与えられた指示に基づいて計画を立て、情報を収集・分析し、社内システムと連携しながら自律的にタスクを遂行します。経営者のお客さまとお話すると、ホワイトカラー業務の半分をAIエージェントが担うようにし、利益を倍増したい、といった声もよく聞きます」と語る。

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日本IBM
テクノロジー事業本部 watsonx事業部
データ・プラットフォーム テクニカル・スペシャリスト
長谷 真太郎氏

 少子高齢化による労働力不足や国際競争力の低下を背景に、AIエージェント活用の重要性は今後、一層高まっていくのは間違いない。

 同社の徳増 孝夫氏は、AIエージェントを「社内の業務システムと連携しながら自律的にタスクを実行する存在」と定義する。

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日本IBM
テクノロジー事業本部 データ・プラットフォーム事業部
製品統括営業部, エキスパート
徳増 孝夫氏

 「どのAPIを呼び出すか、そしてどのように実行するかを判断し、アクションを自動化するのがAIエージェントです。ビジネスの基本構造を変えるテクノロジーだと考えています」と強調する。

 一方で、導入段階では課題も多い。「AIエージェント」という言葉だけが独り歩きし、何ができるのか、何から始めるべきかが不明確な企業も少なくない。徳増氏は「多くの企業が生成AIのPoC(概念実証)を経験しましたが、データのサイロ化によって期待した成果が得られず、幻滅しているケースも多いですね」と指摘する。

 長谷氏も「ユースケースやROIの不透明さに加えて、APIの未整備や対話的な仕組みをどう扱うのかといった技術的な課題もあります。まず、やってみないことには何もわからないので、早期に着手して学習を重ねることが重要です」と呼びかける。

RPA時代の成功体験が“足かせ”にも、導入が進まない理由

 AIエージェント導入における課題は、企業の競争力そのものに影響を与えつつある。徳増孝夫氏は「10年前のRPAは日本が導入で先行しましたが、AIエージェントは日本がかなり遅れています。このままではグローバル企業に太刀打ちできなくなるおそれがあります」と警鐘を鳴らす。特に海外展開する企業にとって、導入の遅れは致命的になりかねないという。

 導入が進まない理由は、セキュリティーや運用負荷への懸念からPoC段階で止まってしまうケースが多いためだ。単一のAIエージェントだけでは自動化の限界があり、複数のエージェントを連携させる「オーケストレーション」が欠かせないという事実を、実際に理解しているビジネスパーソンは多くはない。

 こうしたマルチエージェント連携を実現するには、各業務に特化したエージェントを安全に連携させ、全体を見渡しながら段階的にAI活用を広げていく「橋渡し役」の設計がカギになる。

 徳増氏は「大企業の優位性は大量のスタッフを抱えられる点にありましたが、AIエージェントという“デジタルレイバー”が台頭すれば、中堅・中小企業でも対抗できるようになります。経理から営業までAIエージェントで担える可能性もあるのです」と語る。こうした変化を見据え、いまこそ導入に踏み出すことが求められているのである。

AIエージェントで「できること」「できないこと」

 「AIエージェントとは何か」を理解するために、徳増氏は「まず、AIアシスタント、AIエージェント、マルチエージェントの違いを正しく理解することが出発点になります」と語る。

 AIアシスタントは事前に定義されたシナリオを基に決められたアクションを実行する仕組みだ。

 一方AIエージェントは、与えられたインプットから何をすべきかを自ら判断し、計画・実行までを担う。

 さらにマルチエージェントは、1つのエージェントで処理できない作業を複数で分担・連携して完結させる仕組みを指す。

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AIエージェントとは

 得意領域は、顧客対応や営業支援、経理・人事などの間接業務だ。「金融機関のカスタマーサポートなど、負荷の大きい業務から活用が進んでいます。これまでシステムでカバーできなかった“人が手を動かしていた雑多な業務”こそAIエージェントが向いているのです」(徳増氏)

 逆に対話の必要がない定型業務やバッチ処理はAIエージェントを使う必要性は低いと言える。また、ゴール設定や戦略立案など、企業の方向性を定める領域は人間が担う必要がある。

 さらに、前述したように複数の特化型エージェントを連携させる「オーケストレーション」が欠かせないことから、「それぞれの領域ごとに得意なエージェントを見極め、仕事を分解して与える役割が重要になります」と徳増氏は強調する。

 こうした連携設計により、業務効率化や顧客満足度の向上、社員の生産性改善など、AIエージェントの真価が発揮されるのだ。

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AIエージェントの自律的な振る舞いが進むことによりカバー可能な領域が拡大していく

3つのステップで始めるAIエージェント導入

 では、自社でAIエージェントを活用するためには、まず何から始めればいいのだろうか。長谷氏は、「AIエージェントを実際に動かすためのポイントは『つなぐ』『動かす』『組み合わせる』の3つです」と説明する。

 業務システムとAIエージェントをAPIで連携させる「つなぐ」、業務手順や指示内容を整理してAIに教える「動かす」、複数の得意分野を持つエージェントを連携させる「組み合わせる」。この3点を意識することで、よりスムーズに導入が進む。

 たとえば顧客対応のケースでは、パスワードリセットなどの処理を行う際、顧客情報をキーに関連システムのAPIを呼び出す等、業務間をAPIでつなぐことが必須となる。「セキュリティーを確保しながら、システム間を正しく連携させることが重要です」と長谷氏は指摘する。

 一方で、1つのエージェントにすべてを任せるのは現実的ではない。徳増氏は「得意なエージェントを組み合わせて動かすことが鍵になります。自分たちでゼロから作るのではなく、既存の仕組みを活用しながら実装していくのが良いでしょう」とアドバイスする。

 加えて、AIエージェントは状況に応じて自ら手順を最適化するため、従来のような厳密な要件定義にこだわる必要はない。むしろ、「いまの業務をどう進めているのか」をAIに正しく教えること、そして指示とフィードバックを通じて“学習させていく”姿勢こそが、成功への第一歩となる。

製品を“選ぶ力”が導入成果を左右する

 長谷氏は「AIエージェントを選ぶ際に重要なのは、やりたいことへの適合性です」と強調する。ユースケースに合致しているか、カスタマイズや拡張が容易か、そしてセキュリティーやガバナンスに対応しているかを見極める必要がある。

 さらに、PoCから本番業務にスケールできる堅牢性も欠かせない。「複数のプロトコルや開発フレームワークをサポートし、将来的な拡張にも耐えられる基盤を選ぶことが、長期的な競争力につながります」(長谷氏)

現場が“自分たちで動かせる”AIエージェント基盤

 AIエージェントの導入を本格化させるためには、単なる自動化ツールではなく、企業全体の基盤として機能するプラットフォームが欠かせない。

 その役割を担うのが「IBM watsonx Orchestrate」だ。同製品について徳増氏は「AIエージェントを構築するためのツールであると同時に、複数のエージェントを連携・協調させるための“オーケストレーション基盤”です」と説明する。

 ノーコード操作で業務フローに沿ったエージェントを設計でき、専門知識を持たない業務ユーザーでも自ら業務課題に合わせてエージェントを作成できる点が特長だ。「現場主体で、クイックに課題解決できる仕組みになっています」と徳増氏は続ける。

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IBM watsonx Orchestrate

 watsonx Orchestrateの特長は、“すぐ使える・大きく育てられる”設計にある。ローコードでエージェントを実装できる機能を提供し、これまでのIT開発ではカバーできなかった少量多品種の業務領域を支援可能なエージェントをクイックに実装できる。

 また、ワークフロー機能や「Langflow」連携機能を用いることで、業務の流れをビジュアルで描くように可視化でき、「どの処理をどのAIやツールが担うか」を直感的に設計可能だ。

 「SAP、Salesforce、Slack、メールなどの業務アプリケーションと連携可能な400種類以上の「Tool」が提供されているため、既存のワークフローを大きく変えずに自動化を進めることが可能です」と長谷氏は語る。

 さらに、人事・営業・調達といった業務領域に特化した「定義済みエージェント」をあらかじめ提供している点も大きな魅力だ。IBMが自社で実証を重ねた100種類以上のドメイン・エージェントが用意されており、これをベースに短期間で導入・効果検証を行うことができる。

 「AIエージェントを使って何ができるか」を1から考えるのではなく、実績あるテンプレートを活用してすぐに成果を出せる環境が整っているのだ。

 企業で活用する以上、セキュリティーやガバナンスを満たし、安定稼働を確保することが必須条件だ。その点、watsonx OrchestrateはIBMの強みである厳格なセキュリティー基準をクリアしており、企業利用に十二分に耐えうる設計になっている。また、最新のテクノロジーを柔軟に取り込みながらも、企業の既存システムと親和性を保てる点も特長である。

 「PoC段階で終わらせず、スモールスタートから全社導入まで見据えられる堅牢性とセキュリティー、この点こそが、watsonx Orchestrateの最大の強みです」と徳増氏は語る。

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さまざまな業務アプリと接続可能な、400個以上ものToolを提供している。

導入現場で見えた成果、人事・BPO領域で加速するワケ

 watsonx Orchestrateは、すでに国内外で多様な業務領域に導入が進んでいる。特に効果が大きいのが人事分野だ。

 長谷氏は「人事部門では、異動や採用・転職シーズンなどの繁忙期において、タレントマネジメントを含む事務処理をAIエージェント化することで、従来の処理時間を数分の1に短縮できます」と説明する。反復作業の自動化により、限られた人員でも業務が回るようになり、省人化や負荷軽減にもつながっている。

 また、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)との相性も良い。大量の定型処理を扱う分野では、AIエージェントが業務を効率的に分担し、処理スピードを大幅に向上させている。

 IBMでは、パートナー企業とともに「IBM Agent Connectパートナー・プログラム」を推進しており、企業が独自のエージェントを開発・提供できる環境を整備している。グローバルで先行展開が進むなか、国内でもすでに数十社が参加し、AIエージェントの開発と実装を進めているという。

“単体”から“連携”へ。マルチエージェント時代を支える司令塔として

 AIエージェント市場は今後、急速な拡大が見込まれている。

 長谷氏は「世の中では多様なテクノロジーが次々と登場していて、こうした進化スピードはますます加速しています。これを自社だけで追いかけるのは難しいはずです。だからこそ、IBM watsonx Orchestrateのようなオーケストレーション・プラットフォームを活用してほしいのです。製品も2週間に1回のペースでアップデートしており、常に最新のテクノロジーを利用することができます」と訴える。

 テクノロジーの多様化が進む中で、AIエージェントを単体で運用するだけでは限界が見えている。複数のエージェントを連携・協調させる“マルチエージェント時代”への対応がいま、まさに求められているのだ。

 徳増氏は「このテクノロジーはこれからの社会に必要不可欠です。マルチエージェントの通信プロトコルやフレームワークが次々と登場する中で、それらを積極的に取り込み、オープンなAIエージェントのためのオーケストレーション基盤を提供していきます」と展望を語る。

 IBMでは自社でも2年前からAIエージェントを活用しており、実践で得た知見を顧客企業に還元していく方針だ。

 「迷ったときには、一緒に考えることも私たちの役割です。AIエージェント活用を通じて企業がさらに成長していけるよう、IBMはこれからも伴走していきます」と、長谷氏は締めくくった。

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