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  • 2025/12/11 掲載

第一生命の緻密な「ハイブリッドクラウド戦略」、生命保険DXを支える“裏側”の挑戦

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120年以上の歴史を持ち、日本を代表する生命保険会社である第一生命保険。同社は、長年に渡ってメインフレームを中心とするオンプレミスの基幹システムを運用してきたが、2019年からクラウドの活用を拡大し、ITインフラをハイブリッドクラウドへと移行した。そして現在、その環境をさらに進化させるため、IBMとともに新たな取り組みを進めている。その狙いと内容について、両社のキーパーソンに話を聞いた。
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第一生命保険のハイブリッドクラウド環境はどう作られた?

「オンプレ=レガシーではない」ハイブリッドは自然な選択だった

──最初に第一生命保険(以下、第一生命)の事業と最新動向についてお聞かせください。

第一生命 吉留 栄太氏(以下、吉留氏):当社は1902年に日本初の相互主義による保険会社として設立されました。設立から120年以上がすぎましたが、お客さま本位のサービスを提供していく点は変わっていません。

 近年では、「人生100年時代のパートナー」として、保険事業だけでなく健康増進や資産形成のご支援もさせていただいています。事業エリアは「国内保険」「海外保険」「資産形成・承継、アセットマネジメント」「新規事業」に分かれ、それらを支える土台としてIT・デジタル戦略を位置付けています。

──第一生命のIT・デジタル戦略を支えるシステムについて、その概要と特徴を教えてください。

吉留氏:現在、当社の社内インフラを支えるシステムは、オンプレミスと、「ホームクラウド」と呼ぶクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドの構成となっています。オンプレミスとしては1990年代に構築したメインフレームとオープン系のシステムがあり、そこで基幹系システムとその周辺システムが動いています。

 ホームクラウドはMicrosoft Azure上に構築したマネージドされたクラウド環境であり、顧客や従業員との関係性を強化するシステム・オブ・エンゲージメント(SoE)のシステムを支える基盤となっています。

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第一生命のシステムの全体像

 ホームクラウドの構築に取り組んだのは2019年からですが、当初から「ハイブリッドクラウドしかない」と考えていました。

 我々はメインフレームをはじめとする既存のオンプレミスのシステムを「レガシー」だとは考えていません。800万~900万ものお客さまの情報を管理している重要なシステムです。それをどう生かすかを考えたとき、ハイブリッドクラウドを選択することは、ごく自然なことでした。

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第一生命保険
IT企画部 フェロー
吉留 栄太氏

ハイブリッドクラウド構築の“裏側” 「3つの強化」が課題に

──ハイブリッドクラウド環境の構築にあたって、こだわったポイントや直面された課題はありましたか。

吉留氏:開発や運用の持続可能性には注意しました。これまでオンプレミスで培ってきた運用ノウハウやセキュリティ対策、開発生産性を高めるツールなどがありましたので、クラウドでもそれらを生かせるようにしました。たとえば、システムの運用に関しても、オンプレミスで使っていたツールをそのまま使えるように工夫しています。

 また、できるだけPaaS(Platform as a Service)を活用しました。IaaS(Infrastructure as a Service)として活用して仮想マシンを作って管理することもできますが、どうしても運用が複雑になり、ランニングコストも高くなると考えたからです。

 ホームクラウドの立ち上げ時には、クラウドの知識不足で苦労もしましたが、基本的には大きなトラブルもなく構築できました。

 ただし、活用が浸透していくにつれて、「開発リリースサイクルの短期化」や「デバイス・チャネルの多様化への対応」を求められるようになってきました。そのためには、ホームクラウドを3つの観点で強化する必要に迫られました。

  1. 社内外サービスとの接続柔軟性
  2. 変化に強いシステム
  3. システム開発・運用の生産性向上

 そこで検討したのが「コンテナ」や「マイクロサービスアーキテクチャー」などのクラウドネイティブなテクノロジーです。ただ、当時は十分な知見がなかったため、IBMさんにご相談することになりました。それが2021~2022年ころのことです。

【図解】IBMが編み出した、成果につながる「4ステップ」

──IBMでは、具体的にどのように支援を行ったのでしょうか。

日本アイ・ビー・エム 石井 正俊氏(以下、石井氏):IBMの「ハイブリッド・バイ・デザイン」という考え方を用いて環境構築の支援をさせていただきました。

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日本アイ・ビー・エム
コンサルティング事業本部 ソーシャル・エンタープライズ&ライフ事業部 保険・郵政グループサービス
アソシエイト・パートナー
石井 正俊氏

 IBMでは、個別最適化されたハイブリッド環境を「ハイブリッド・バイ・デフォルト」、全社最適にデザインされたハイブリッド環境「ハイブリッド・バイ・デザイン」と呼んでいます。この言葉を用いて表現するなら、第一生命さまは当初から「ハイブリッド・バイ・デザイン」でホームクラウドを構築されたといえると思います。

 今回のホームクラウドの強化にあたっては、「ハイブリッド・バイ・デザイン」のフレームワークで定められた4つのステップで進めました。

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ハイブリッドクラウドを構築してビジネス価値を最大化するためのフレームワーク「ハイブリッド・バイ・デザイン」の4つのステップ

 ステップ1は「ビジネス目標の整理」です。これは、ワークショップを実施してAs-IsとTo-Beを明確にするプロセスです。IBM独自の「ケーパビリティー・フレームワーク」を使って組織が持つ能力の成熟度を5段階で評価し、お客さまの現状(As-Is)と目指すところ(To-Be)を明らかにします。

 そしてステップ2でTo-Beへのギャップを埋めるソリューションを識別し、ステップ3で各ソリューションがもたらす価値/ROIを算出します。そしてステップ4で包括的なロードマップを策定します。

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ケーバビリティー・フレームワークを使って組織が持つ能力の成熟度を5段階で評価

日本アイ・ビー・エム 椎葉 友紀氏(以下、椎葉氏):最初のワークショップは、週1回のペースで約3カ月間実施しました。まずは、今回のシステムが第一生命さまの中期経営計画のどこに貢献するのかを議論するところから始め、現状と目指すところのギャップ、そのギャップを埋めるにはどのようなソリューションが必要なのかをともに議論し、そこからマイクロサービスやコンテナの基盤、新しい運用に必要なソリューションなどを決めていきました。

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日本アイ・ビー・エム
コンサルティング事業本部 ソーシャル・エンタープライズ&ライフ事業部 保険・郵政グループサービス 保険サービス
部長
椎葉 友紀氏

吉留氏:第一生命グループでは、2030年度の目指す姿として「グローバルトップティアに伍する保険グループ」を挙げています。そこに向けて、システム更改も必要ですし、コンテナ・マイクロサービスを支える基盤も必要になるのは確実でした。ワークショップでは、こうした2030年に向けたシステムの議論ができたのもよかったと思います。

 また、ワークショップには、毎回、弊社とIBMさん、あわせて30人弱が参加しましたが、弊社側は本来の業務を持っているメンバーばかりでした。IBMの担当者さんには、そのスケジュールも含めて調整してもらえたので大変助かりました。

「3つの目的」を実現するために、たどり着いた“解決手段”

──ステップ1で整理した「目指す姿」を実現するための手段として今回、導入したソリューションについてお聞かせください。

吉留氏:大きくは3つあります。1つはマイクロサービスを実現するソリューションです。具体的には、コンテナ基盤であるレッドハットの「OpenShift」とコンテナ環境に最適化されたJavaアプリケーションサーバである「WebSphere Liberty」を導入しました。

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ホームクラウドの強化ポイントと導入されたソリューションの関係

 2つ目は開発の効率化を実現するソリューションです。具体的には、マイクロソフトのソフトウェア開発プラットフォームである「GitHub Enterprise」を導入しました。

 そして3つ目が、アプリケーションやインフラのパフォーマンスをリアルタイムに監視・分析してオブザーバビリティ(可観測性)を高めるソリューションである「IBM Instana」です。

 いずれも、現在、構築を進めているところで、2025年内にはすべてサービスインする予定です。

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第一生命がIBMとともに「ハイブリッド・バイ・デザイン」のアプローチで構築を進める次世代オンライン基盤の全体像

──各システムの稼働後に期待されている効果について、お聞かせください。

吉留氏:開発スピードの向上やダウンタイムの低減に期待しています。オンプレミスだと、システムの負荷が高くてもすぐにはリソースを増やせません。しかし、マイクロサービスであれば、クラウドのリソースさえ許せばいくらでもリソースを増やせます。これにより、ダウンタイムをゼロにすることも可能だと思います。

 また、仮に障害が発生しても、リカバリー時間を短縮できることにも期待しています。従来だと30分はかかっていましたが、新しいシステムであれば、おそらく数秒で回復できると思います。

 Instanaによって運用の持続性を確保できことも大きいと思います。どんなにシンプルな仕組みを目指しても、時間とともにシステムはどんどん複雑になります。しかし、Instanaであればオンプレミス/クラウドにまたがって監視できますので、異常やその予兆をいち早く検知して対策が打てるようになると期待しています。

AIは主ではない──最重視するのは今もこれからも「○○」

──今後の取り組みについて、特に注力したいポイントをお聞かせください。

吉留氏:注力することは、昔も今も、そして将来も変わりません。それは、ひと言で表現すれば「持続性」です。企業が将来にわたって事業を継続することを「ゴーイング・コンサーン」と呼びますが、同様にしてシステムもゴーイング・コンサーンでなければならないと考えています。

 今後の労働人口を考えると、人が増えることは期待できませんし、人のスキルが急激に向上することもないでしょう。だからこそ、AIなどのテクノロジーを活用した生産性の向上が不可欠です。その1つが、開発の生産性向上を実現する「プラットフォーム・エンジニアリング」(注1)であり、今後はその実現を目指したいと考えています。

注1:開発者が必要なツールやインフラをセルフサービスで利用できるプラットフォームを構築して開発生産性を向上させる手法

 現在はAIに注目が集まっていますが、私は、AIはあくまで1つのアプリケーションであり、主となるものではないととらえています。主となるのはビジネスやそれに関わる人々であって、私たちが注力すべきはその土台作りです。

椎葉氏:我々は、第一生命さまを保険という商品を通じて人々の暮らしを支えている会社、つまり社会インフラを支えている会社であると考えています。そして、それをITを通してご支援するのが我々の役割です。

 今回は、ハイブリッド・バイ・デザインのアプローチで、ホームクラウドというITインフラの土台を第一生命さまとともに整備・強化させていただきました。その過程では、我々、IBMのメンバーも大いに育てられたと感じています。今後も「共創パートナー」として、第一生命さまのデジタル変革を支援していきたいと考えています。

──本日は、貴重なお話をありがとうございました。

経営の「悩み」を「強み」へ。IBMと築くモダナイゼーション
https://www.ibm.com/jp-ja/think/insights/modernization

ハイブリッド・バイ・デザイン
https://www.ibm.com/jp-ja/consulting/hybrid-by-design

オブザーバビリティーでIT運用を高度化
https://www.ibm.com/jp-ja/campaign/observability

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