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運用時の省スペース性検証
スタンダードノートPCでは、会社でデスクに置いて作業する時間が長いだろう。そこでデスクに置いたときの「省スペース性」を見てみよう。オフィスのスペースには限りがあり、しかも効率化のために社員1人が使えるスペースは縮小傾向にある。決まった席を設けないフリーアドレスの企業も増えている。オールインワン構成のスタンダードノートPCでも、省スペースであるに越したことはない。基本的には、本体サイズ中心の評価になる。フットプリントの比較では、Satellite B35/RとThinkPad E550が優秀で、甲乙つけがたい。Vostro 15 3000とVersaPro タイプVXもそれほど見劣りはない。
また、スタンダードノートPCをデスクで使う場合、ACアダプターを接続して使う場面が多いだろう。実際にACアダプターをDCコネクターに差して使ってみると、意外なこともわかった。DCコネクターの位置、張り出す部分の長さに差があり、実質的な省スペース性にも影響を与えるのである。

ここまで含めると、Satellite B35/Rの優秀さが強調される。DCコネクターは左側面奥にあり、張り出しも約24mmに抑えられている。AC自体もコンパクトで置き場所に困らない。ThinkPad E550はDCコネクターの張り出しが約38mmと長目なうえ、コネクター位置もやや中寄りにあるため余計に煩わしく感じる。Vostro 15 3000はDCコネクターの張り出しが約52mmとかなり長い。これは大きな減点材料だ。VersaPro タイプVXは、DCコネクターが背面にあり、張り出しも約20mmと小さい。意外にも、占有スペースの横幅は4台中もっとも少ない。ただ、奥行きは4台中もっとも必要で、ACアダプターも大きめということで、その点マイナスは必要だ。
各機種の省スペース性について、比較してみたのが次の動画だ。占有面積や厚さの面で、東芝Satellite B35/Rがひとつ上の評価となった。
省スペース性 | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
本体サイズ | 378×266×34.9mm | 379×257.9×16.9~23.9mm | 381.4×267.5×25.6mm | 約377×256×23.8~27.1mm |
"ACアダプターの実測サイズ (突起部含む)" | 44×107(140)×30mm | 36×90(120)×26mm | 46×108(135)×28mm | 40×93(114)×29mm |
DCコネクター位置と接続時の張り出し | 背面左端約20mm | 左側面奥約24mm | 左側面奥約52mm | 右側面やや奥約38mm |
DCコネクター接続時の占有サイズ | 378×286mm | 403×257.9mm | 433.4×267.5mm | 415×256mm |
ACケーブル | 2ピンメガネ型 | 2ピンメガネ型 | 3ピン | 2ピンメガネ型 |
短評 | DCコネクタの張り出しは20mmと小さく占有横幅は狭い。ただ、奥行きは一番長い。ACアダプターの大きさや本体に厚みがあって圧迫感がある点などもマイナス。 | DCコネクタの張り出しを含めた占有面積がもっとも小さく、ACアダプターもコンパクトで扱いやすい。 | 本体の専有面積はそれほど大きくないが、DCコネクターの張り出しが大きい。ACアダプターもACケーブルが3ピンで固めのため置き場所に多少制約を受ける。 | 本体のみの専有面積はSatellite B35/Rと同等だが、DCコネクタの配置と張り出しにやや難。ACアダプターはコンパクトだ。 |
点数 | 8 | 10 | 7.5 | 8.5 |
採点は、Satellite B35/Rが10ポイント。DCコネクターの配置と張り出しにやや難があるThinkPad E550がマイナス1.5ポイント、VersaPro タイプVXも同ポイントとした。Vostro 15 3000はそれからさらにマイナス1ポイントとした。
可搬性、収納性検証
デスクに置く時間が長いとはいえ、まったく持ち運ばないわけではない。社内会議のために会議室へ持ち運んだり、ときには外出先や出張へ持って行くこともあるだろう。そこで、可搬性も見ていきたい。なお、可搬性の評価には、収納性という要素も含まれる。カバンやスーツケースのほか、日常のオフィスでもサイドデスクへ収納する際の収まりの良さなどに関わってくる。ここでは省スペース性の項目でも見た本体サイズやACアダプターのサイズに加えて、それぞれの質量も重要な要素として浮上するほか、バッテリー駆動時間も見逃せない。十分なバッテリー駆動時間があれば、社内での会議などであればACアダプターなしで身軽に持ち出すことができるなどの利点がある。
さて、本体だけを見ると東芝のSatellite B35/Rがもっとも薄く軽量だ。ほぼフラットなフォルムなので、サイドデスクやカバンなどに収納する場合も収まりがよい。デルのVostro 15 3000もそれと甲乙つけがたい。

ACアダプターとバッテリー駆動時間まで含めると、東芝のSatellite B35/Rのアドバンテージがより明白になる。ACアダプターは4機種中もっとも小型軽量で本体と一緒に持ち運ぶ際にも邪魔になりにくい。実測のバッテリー駆動時間も実用十分な長さで、社内での会議などであればACアダプターの携帯は不要だろう。一方、Vostro 15 3000はACアダプターが少し大きめのうえ、ACケーブルが3ピンで太く重い。AC携帯時には不利な要素が多いうえ、バッテリー駆動時間もやや短い。

他では、ThinkPad E550はバッテリー駆動時間が最も長く、ACアダプターも比較的コンパクトにまとまっているが、本体自体に少し張り出しがあって収まりが悪く、実測の質量はACアダプターも含めるとSatellite B35/Rとは300g以上の差がある。NECのVersaPro タイプVXは、ボディの厚みが35mm近くあり、その時点で可搬性は大きく損なわれている。さらにバッテリー駆動時間は短く、ACアダプターも大きめだ。これはCPUの電力効率の差が大きく出てしまっている。
可搬性、収納性 | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
サイズ | ||||
サイズ | 378×266×34.9mm | 379×257.9×16.9~23.9mm | 381.4×267.5×25.6mm | 約377×256×23.8~27.1mm |
重量 | 約2.4kg | 約2.3kg | 約2.38kg | 約2.35kg |
実測重量 | 2446g | 2150g | 2251g | 2431g |
ACアダプター(ケーブル込)を含めた実測重量 | 2708g | 2359g | 2579g | 2659g |
ACアダプター | ||||
実測サイズ(突起部含む) | 44×107(140)×30mm | 36×90(120)×26mm | 46×108(135)×28mm | 40×93(114)×29mm |
実測重量 | 262g(209g) | 209g(160g) | 328g(226g) | 228g(168g) |
ACケーブル | 2ピンメガネ型 | 2ピンメガネ型 | 3ピン | 2ピンメガネ型 |
出力仕様 | 65W(19V/3.42A) | 45W(19V/2.37A) | 65W(19.5V/3.34) | 45W(20V/2.25A) |
バッテリー | ||||
バッテリー容量(バッテリー表記) | 23Wh | 45Wh | 40Wh | 48Wh |
公称バッテリー駆動時間 | 約2.4時間(JEITA 2.0) | 約9時間(JEITA 2.0) | 約6.5時間 | 約11.4時間(JEITA 2.0) |
bbench 1.01の結果 | 3時間3分 | 8時間8分 | 6時間30分 | 9時間29分 |
短評 | 約35mmと厚みのあるフォルムで、これだけでも可搬性、収納性とも大きく損なっている。ACアダプターが65W仕様で大きさがあることやバッテリー駆動時間の短さは、TDP37WのCPUを搭載していることの弊害といえる。 | 本体、ACアダプターとも最軽量で、フォルムもフラットで収まりが良い。バッテリー駆動時間も十分な長さがあり、可搬性、収納性ともに申し分ない。 | 本体は軽量だが、他モデルとの部品共通化のためかACアダプターは65W仕様でやや大きく重い。3ピン仕様のケーブルもかさばり収納性が良くない。バッテリー駆動時間もやや短め。 | バッテリー駆動時間は1番長いが、本体の質量が重い。バッテリーが張り出すフォルムも収納性を若干損なっている。 |
点数 | 4 | 10 | 7 | 8 |
採点は、東芝のSatellite B35/Rが満点。ACアダプターに難があり、バッテリー駆動時間も短めなVostro 15 3000はマイナス2ポイント。本体に張り出しがあり、質量も重いThinkPad E550も同じくマイナス2ポイントとした。NECのVersaPro タイプVXは、可搬性という点はほとんどないに等しいため、4ポイントとした。
パフォーマンス検証と合わせてみると、第5世代Coreプロセッサーの優秀さが改めてわかる結果だ。スタンダートノートPCでは、これまではVersaPro タイプVXのように可搬性は半ば諦めるしかなかったが、これからはより幅広く活用できそうで、ビジネスの生産性にとっても良い影響があると思われる。
堅牢性の検証
ビジネスPCとしては、堅牢性は必須の要素だ。ビジネスの現場では時には一刻を争って作業をしなければならない場面があり、道具であるPCは多少手荒に扱われることは覚悟しなければならない。少々のことで不具合が起き、メンテナンスのダウンタイムが発生してしまっては、生産性が大きく損なわれる。ビジネスに専念するためには、結果的に壊れないだけでなく、安心感という要素も必要だろう。表には、それぞれメーカーの堅牢性に関する主張と、明記されている装備をまとめた。今回はHDD搭載モデルということで、HDDの保護機能についてもまとめた。一見してわかるとおり、東芝のSatellite B35/Rが最も充実している。第三者機関によるテストをクリアしており、防滴構造も含めて具体的な数値も公表されている点は実に心強い。HDDの保護機能もしっかり搭載しているうえ、バッテリー動作中に持ち上げた時に光学式ドライブが開いてしまわないような自動ロック機能も装備している。
今回は低価格帯の製品を比較しているためか、他の製品は意外とあっさりしている。防滴構造を明記しているのはVersaPro タイプVXのみだ。ThinkPadシリーズはMILスペック準拠の堅牢性をアピールしているのだが、今回取り上げたEシリーズは対象外とされているため、該当しない。持った感触はどれも剛性感が高く、不安らしい不安は感じないのだが、具体的な数字の裏付けがあり、故障の確率が高いドライブ類への保護も万全に備えているSatellite B35/Rに比べると見劣ると言わざるを得ない。
堅牢性 | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
うたい文句 | 防水シートと排水機構による防滴構造 | ドイツの認証機関TUV(テュフライングループ)にて、面加圧(100kgf)、76cm落下、30cc防滴テスト、高加速寿命試験「HALT」をクリア。光学ドライブ自動ロック。 | 特になし | 堅牢性をアピールはしているが、ThinkPadシリーズのセールスポイントの1つであるMILスペック準拠のテストは「EシリーズをのぞくThinkPad」とされており、対象外。 |
HDD保護機能 | HDD周辺クッション構造 | "東芝HDDプロテクション HDDフローティング構造" | 特になし | Lenovo HDDプロテクション、エラストマー素材採用 |
短評 | 厚みがあるわりにかなり健闘しているが、光学ドライブのあたりを持つとやや頼りない感触がある。 | 剛性感は非常に高い。TUVでのテストの裏付けがある点で安心感はより高い。 | 剛性感は非常に高い。どこを持っても不安は感じない。 | 剛性感は非常に高い。どこを持っても不安は感じない。 |
点数 | 8 | 10 | 8 | 8.5 |
採点は、Satellite B35/Rが満点の10ポイント、剛性感は高いが防滴構造の明記がなく数字の裏付けに乏しいThinkPad E550が8.5ポイント、Vostro 15 3000はHDD保護機能がないことからさらにマイナス0.5ポイント、VersaPro タイプVXは防滴構造があるものの、剛性感で若干頼りなさを感じることから8ポイントとした。
キーボードの使いやすさの検証
キーボードの使いやすさ、これも法人向けPCにとっては重要な要素だ。経理業務、総務や事務作業はもちろん、社内外向けの営業資料の作成、社内向けの報告書の作成業務、取引先とのメールのやりとりなど、ビジネスではさまざまな場面で大量の数値や文章を効率よく入力することが求められており、キーボードの使用感は、ビジネスの効率、生産性に大きな影響があるためだ。
表には各社のキーボードの仕様をまとめた。低価格帯とはいえ、ビジネス向けのスタンダードノートPCだけに各社かなりレベルが高いため、かなり細かい部分までチェックしている。総合的にみてもっとも良いと感じたのがThinkPad E550だ。カーソルキー部分をあえて一列下げているにもかかわらずその両端にキーを置いている点は理解に苦しむが、それ以外は文句がない。キーピッチ、ストローク、キートップの感触、スイッチの反発などフィーリング含めてきわめて良好だ。
Satellite B35/Rのキーボードもレベルが高い。Enterキーはやや小さめだが、テンキーとの間隔はしっかり空けており、ミスタイプの不安はないだろう。反発が低い上品なタッチが印象的だ。Vostro 15 3000は、フィーリングは悪くないが、縦のキーピッチやEnterキーなど物理的な仕様に残念な部分がある。
VersaPro タイプVXは、キーストロークが約2.4mmと深い点が特徴だが、好みがわかれそうなフィーリングだ。昔からPCを利用してきたユーザーならばキーストロークは深いほうが良いと考えるかもしれないが、最近のノートPCの浅いストローク(1~2mm)に慣れたユーザーからすれば、逆に負担を感じるという面もある。さらに、アイソレーションスタイル(キートップのみを露出するスタイル)でストロークを深くしているためキーの隆起部分が高く、押し込んだ後戻る時に隣接したキートップに指が接触しやすい点も気になった。同じアイソレーションスタイルでももう少しトップの面積を絞るように傾斜をつけた形状であればこのようなことはなかっただろう。キーピッチ、配列、キートップの凹み、たわみのない剛性感など、他の部分は文句がないだけに惜しいところだ。
キーボード | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
配列 | 6列アイソレーション | 6列 | 6列アイソレーション | 6列アイソレーション |
キーピッチ(実測) | 約19×約19mm | 約19×約19mm | 約19×約18mm | 約19×約19mm |
キーストローク | 2.4mm | 1.5mm | 非公開 | 非公開 |
Enterキーの幅 | 上段約25mm/下段約20mm | 上段約22mm/下段約17mm | 上段約14.5mm/下段約11mm | 上段約25mm/下段約20mm |
テンキーと通常キーとの距離(※キートップ間隔) | 約6mm | 6mm | 約6mm | 約5mm |
カーソルキーの処理 | 一段下げている。 | サイズを小さくして↑キーの両側を空けている | サイズを小さくして↑キーの両側を空けている | 一段下げているが、↑キー両側にキーがある |
パームレスト奥行き | 88mm | 98mm | 113mm | 82mm(カーソルキー部のみ80mm) |
キートップ形状 | 凹みがあり指を置きやすい | わずかだが凹みがあり平面よりはスムース | わずかだが凹みがあり平面よりはスムース | 大きな凹みがあり指を置きやすい |
ボディのたわみ | まったくない | まったくない | あえて強くタイプするとわずかに沈む | まったくない |
バックライト | なし | なし | なし | なし |
短評 | サイズやレイアウトなどは文句がない。ただ、深いストロークは最近のノートPCに慣れていると負担を感じるかもしれない。アイソレーションスタイルとの相性も微妙で、のキーと接触しやすい。 | 低反発で心地良い打鍵感。Enterキーは若干小さいが、テンキーとの間隔はしっかり確保されている。キートップの面積が広い一方、隣と近い点は好みが分かれそうだ。 | たわみは通常の使い方ならほとんど気にならない。縦ピッチが18mm、Enterキーの幅が狭いなど、致命的ではないがやや残念な点がある。キーストロークは1.5mmほどだと思われる。 | キーストロークは2mmほどと思われる。キートップには指を置きやすいへこみがあり、スイッチの感触も良好で非常に打ちやすい。カーソルキー周りの処理以外は文句がない。 |
点数 | 8 | 8.5 | 8 | 9.5 |
採点は、ThinkPad E550がトップ評価で9.5ポイント。Satellite B35/Rが8.5ポイント、Vostro 15 3000とVersaPro タイプVXはともに8ポイントとした。
【次ページ】ついにスタンダードノートPC比較 総合評価を発表