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通信機能、インターフェイスの内容と配置の検証
スタンダードノートPCの使い勝手を大きく左右する要素が、通信機能やインターフェイスの内容と配置だ。利用頻度の高いUSBポートやSDカードスロット、ヘッドフォン端子などは手前側に、利用時はケーブルを接続したままになるディスプレイ端子、有線LAN端子などは奥側に配置されていると使いやすい。それぞれ表に内容と配置をまとめた。評価機は少しバラついているが、BTOで追加できるものは搭載しているものとみなしている。もっとも内容が充実しているのはVersaPro タイプVXだ。厚みがあるだけにスペースには余裕があり、シリアルポートやPCカードスロット(TypeII)といったレガシーなインターフェイスも装備している。電源オフ時にスマートフォンなどを充電できる電源オフチャージ機能は省かれている点が少し惜しい。

次に充実しているのがThinkPad E550だ。こちらはシリアルやPCカードスロットは省かれているが、レガシーながらプロジェクター接続で必要とされるD-Sub15ピンも含め、現代的なインターフェイスはひととおりを網羅している。今回、指紋センサーや電源オフチャージ対応USBポートを持つ製品はこれだけだった。ただ、HDMIやD-Sub15ピンが手前側に近いところにある配置はマイナスだ。
Satellite B35/RはWebカメラや電源オフチャージポートを省略するなど、価格帯と薄さを考慮してやや割切っている印象だ。実際、同シリーズのB65/RやB75/Rではこれらを搭載している。配置については、HDMI、D-Sub15ピンが欲をいえばもう少し奥側にあればベターというところで、大きな問題はない。Vostro 15 3000もやはり、USB3.0ポートが1基のみでディスプレイ出力もD-Sub15ピンのみと、割り切りが目に付く。
通信機能、インターフェイス | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
通信機能 | ||||
有線LAN | 有線LAN(1000BASE-T) | 有線LAN(1000BASE-T) | 有線LAN(1000BASE-T) | 有線LAN(1000BASE-T) |
無線LAN | なし※BTOでIEEE802.11ac追加可能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac | 無線LAN(IEEE802.11b/g/n)※ac対応モデル(3558)あり | IEEE802.11a/b/g/n/ac |
Bluetooth | なし※BTOでIEEE802.11ac追加可能 | Bluetooth 4.0 | Bluetooth 4.0 | Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | ||||
光学ドライブ | DVD-ROMドライブ(※BTOでスーパーマルチ選択可) | DVDスーパーマルチドライブ | DVD±RWドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ディスプレイ出力 | HDMI、D-Sub15ピン | HDMI、D-Sub15ピン | D-Sub15ピン | HDMI、D-Sub15ピン |
メモリーカード | SDメモリーカード | SDメモリーカード | SDメモリーカード | SDメモリーカード |
USBポート | USB 3.0×4、USB 2.0×1 | USB 3.0×2、USB 2.0×2 | USB 3.0×1、USB 2.0×2 | USB 3.0×2(電源オフチャージ×1)、USB 2.0×1 |
Webカメラ | なし(BTOで追加可能) | なし | 約100万画素 | 約100万画素 |
指紋センサー | なし | なし | なし | 搭載 |
レイアウト | ||||
本体前面(左から) | マイク、ヘッドフォン | なし | なし | SDメモリーカード |
本体背面(左から) | USB 2.0、セキュリティーロックポート、DC入力 | なし | なし | なし |
本体左側面(手前側から) | PCカードスロット(TypeII)、SDメモリーカード、USB 3.0×2、HDMI、シリアル、D-Sub15ピン、有線LAN | ヘッドフォン/マイク兼用、USB 2.0×2、光学ドライブ、有線LAN、有線LAN、セキュリティーロックポート | ヘッドフォン/マイク兼用、USB 3.0、USB 2.0、有線LAN、D-Sub15ピン、DC入力、セキュリティーロックポート | USB 3.0(電源オフチャージ)、USB 3.0、HDMI、D-Sub15ピン、有線LAN、セキュリティーロックポート |
本体右側面(手前側から) | 光学ドライブ、USB 3.0×2 | SDメモリーカード、USB 3.0×2、HDMI、D-Sub15ピン、DC入力 | SDメモリーカード、USB2.0、光学ドライブ | ヘッドフォン/マイク兼用、光学ドライブ、USB 2.0、DC入力 |
短評 | 充実した内容で配置も良い。USBポートの電源オフチャージに対応していない点は少し惜しい。 | USB 3.0とUSB 2.0が2基ずつあるも電源オフチャージには非対応。Webカメラも省かれている。HDMI、D-Sub15ピンはThinkPad E550ほどで手前にはないが、もう少し奥側がベター。 | ディスプレイ出力がD-Sub15ピンのみは少し寂しい。USB 3.0も1基と低価格なりの割り切りが見える。有線LANとD-Sub15ピンもやや手前側に近い場所にある。 | 指紋センサーを搭載可能でUSBポートの電源オフチャージにも対応するなど内容は文句ないが、HDMIやD-Sub15ピンが手前側に近いところにある点はマイナス。 |
点数 | 9 | 7.5 | 7.5 | 9 |
採点は、VersaPro タイプVXとThinkPad E550がトップ評価で9ポイント。Satellite B35/RとVostro 15 3000は7.5ポイントとした。
液晶ディスプレイの見やすさ検証
最後に、液晶ディスプレイを比較しよう。サイズと解像度の条件は揃えており、照明や外光が映りにくいノングレア仕上げという最低限の条件はすべての製品が満たしている。参考までに、エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」でキャリブレーション操作を行い、その際の計測結果も表に記載している。
低価格帯のスタンダードノートPCということで、率直にいってレベルはあまり高くない。液晶の配向方式はどれも非公開だが、どれも上下の視野角が決定的に狭いのでTNパネルだと思われる。これは仕方がないにしてもヒンジの角度調整は柔軟にできてほしいところだ。VersaPro タイプVXが約165度ともっとも柔軟な調整が可能で、これなら机に座っている以外の場面でも使うことができるだろう。次がSatellite B35/Rが135度、ThinkPad E550が130度、このあたりは広く安定した机の上で使うこと限定であれば問題ないレベルで、Vostro 15 3000の約126度は人によってはギリギリかもしれない。
4台はどれも明らかに青が強い色味だが、その中でも比較的測定色温度が6500Kに近く、標準での見え方がまともに見えるのはSatellite B35/Rだ。測定輝度も、少しの差ではあるが、Vostro 15 3000と並んで4台中で一番良いのでプラス評価をしてもよいだろう。一方、VersaPro タイプVXは明らかに色温度が高く、4台で比較しても青いと感じるほどで、輝度もやはり比べてみると低く、マイナス評価が妥当だろう。
液晶ディスプレイ | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
サイズ | 15.6型 | 15.6型 | 15.6型 | 15.6型 |
表示画素数(アスペクト比) | 1366×768ドット | 1366×768ドット | 1366×768ドット | 1366×768ドット |
画素密度 | 100ppi | 100ppi | 100ppi | 100ppi |
表面仕上げ | ノングレア | ノングレア | ノングレア | ノングレア |
液晶配向方式 | 明記なし(TN) | 明記なし(TN) | 明記なし(TN) | 明記なし(TN) |
ヒンジの角度 | 約165度 | 約135度 | 約126度 | 約130度 |
測定輝度 | 209cd/m2 | 239cd/m2 | 239cd/m2 | 229cd/m2 |
測定色温度 | 8065K | 6802K | 7254K | 7121K |
測定色域:sRGBカバー率(面積比) | 64.3%(64.6%) | 63.7%(63.9%) | 62.2%(62.5%) | 63.3%(63.5%) |
短評 | 色温度が非常に高く、4台で比較しても特に青っぽく見える。輝度も低い。ヒンジの角度はもっとも柔軟にできる。 | 4台中もっとも色温度がsRGBの標準(6500K)に近く、比較的見え方が正常に近い。ヒンジの角度も必要十分な範囲で調整できる。 | ThinkPad E550と似ているが、ヒンジの角度調整範囲がさらに狭く、ギリギリ及第点という印象。 | Satellite B35/Rと似ているが、色温度は高く、ヒンジの角度調整範囲も若干狭い。 |
点数 | 6.5 | 8 | 6.5 | 7 |
トップ評価はSatellite B35/Rで、8ポイントとした。次点がThinkPad E550で、ヒンジ角度と色温度0.5ポイントずつマイナスした7ポイント、VersaPro タイプVXは色温度と輝度で1ポイントずつマイナスだが、ヒンジの角度で0.5ポイントプラスして6.5ポイント。Vostro 15 3000はヒンジ角度1、色温度0.5の合計1.5ポイントのマイナスで6.5ポイントとした。
総合評価
以上、これまで8項目にわたって比較検証してきたが、ここでそれらを総合してみよう。低価格帯とはいえ、さすがにビジネスPCで実績のある4社の製品だけに、全体にハイレベルな争いという印象を受けたが、各項目で採点したポイントを合計すると、東芝のSatellite B35/Rが、平均9ポイントでトップとなった。総合評価 | NEC VersaPro タイプVX | 東芝 Satellite B35/R | デル Vostro 15 3000 | レノボ ThinkPad E550 |
パフォーマンス | 9 | 8 | 8 | 8 |
省電力性 | 8 | 10 | 10 | 10 |
放熱性能 | 8 | 10 | 10 | 9 |
省スペース性 | 8 | 10 | 7.5 | 8.5 |
可搬性、収納性 | 4 | 10 | 7 | 8 |
堅牢性 | 8 | 10 | 8 | 8.5 |
キーボード | 8 | 8.5 | 8 | 9.5 |
インターフェイス | 9 | 7.5 | 7.5 | 9 |
液晶ディスプレイ | 6.5 | 8 | 6.5 | 7 |
総合(平均) | 7.61 | 9.11 | 8.06 | 8.61 |
省電力、低発熱の思想を設計にまで反映したSatellite B35/Rが高評価
インテル最新の第5世代Coreプロセッサーのポテンシャルを引き出して高いパフォーマンスと省電力を見事に両立していることが光ったが、さらに、その省電力、低発熱というアドバンテージを、ボディ設計、ACアダプターの設計にもしっかりと反映した点が高評価を獲得した要因だろう。スリムで軽量なボディは、省スペース性、可搬性ともに優れ、バッテリー駆動時間も長いことから室内の別の部屋で行われる会議などにも身軽に持ち出して使うことができる。フラットなフォルムで収納性にも優れており、オフィスのスペースを有効に活用することができるだろう。優れた省電力性は小型軽量のACアダプターという形でも還元しており、堅牢性も申し分ないため、頻度が高くなければ出張などに持っていくことも現実的に考えられる。この省電力性は、電気代の節約というランニングコストにも貢献することは言うまでもない。
次点のThinkPad E550は、ボディのサイズや質量から、省スペース性や可搬性で見劣りが感じられた。デルのVostro 15 3000は、ボディは軽量ながら、ACアダプターはじめコストを優先した仕様が随所に見受けられ、使い勝手の面で詰めの甘さが目立った。そして、従来型のスタンダードノートPCの典型ともいえるVersaPro タイプVXは、平均7.6ポイント。Satellite B35/Rとは大差がついたほか、他の2台からも差がある。ボディのサイズのほか、パフォーマンス、バッテリー駆動時間などにプロセッサーの世代の影響が大きく感じられた。
このように、インテル第5世代Coreプロセッサーの登場で、スタンダードノートPCは大きく進化し、新しい時代を迎えたことが感じられる。特に、トップ評価のSatellite B35/Rは、高性能と省電力性の両立、そしてこれまで半ば諦められていた可搬性、省スペース性を獲得している。スタンダートノートPCといえども、オフィスの机の上だけに縛られず、より幅広く活用できるようになっており、ビジネスの現場にとっても、ランニングコストのメリットだけでなく、生産効率においても良い影響が得られることが大いに期待される。新世代のリードする存在として、文句なしにお勧めできる製品だ。