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- 2021/10/19 掲載
製造業DXは「工場のスマート化」で終わりじゃない、今押さえるべき「PLM」のあり方
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
従来のPLMに求められていたもの
PLMとは、製品の企画段階から廃棄、リサイクルに至る全行程で設計図や部品表などのデータを共有し、製品開発力の強化、設計作業の効率化、在庫削減を目指す取り組みのことを指します。従来の製造業では、利益を最大化するためにQCDが重視されてきました。QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字をとったもので、製造業において重要な要素です。品質の高い製品をできるだけ低いコストで製造し、迅速に市場に投入することに対応するために必要な取り組みです。そのためには、製品ライフサイクル全体を管理する必要があり、設計・開発部門や製造部門など、各部署が連携する必要がありました。
そこで、誕生した概念がPLM(製品ライフサイクル管理)です。PLMには、要件管理、CAD(Computer-Aided Design:コンピューター支援設計)やBOM(Bill of Materials:部品表)データの管理、取引先情報の管理、製品データやサービス部品の管理など、製品ライフサイクル全体を管理する概念が含まれます。これにより、開発力や企業競争力の強化が可能になり、QCDの向上につながると言われています。
モノづくりの体制強化を図るため、PLMに注目する製造業も増加しています。製造段階だけのコスト管理ではなく、設計段階やサービス段階のコストも把握し、製品の投入時期や撤退時期までもコントロールしていくことができなければ、競争に勝ち残ることが難しいためです。
製造業のビジネスモデルの変化
第4次産業革命を背景にDXの動きが拡がることによって、製造業のビジネスモデルは、「モノを製造・提供して、顧客から対価を得る」という考え方から、「顧客の経験価値を高めるために、モノにサービス的要素を加え、顧客、パートナー、場合によっては既存の競合と共に価値創りを行う」という考え方にシフトしていく必要があります。従来、製造業は、多くの顧客ニーズに対応したモノ(製品)を大量生産・大量販売して顧客に提供し、顧客は共通化された仕様のモノを利用していました。しかし、顧客ニーズが多様化する中で、個々の顧客のニーズに応じたものづくり、マスカスタマイゼーションが重要となってきています。
以前のコラムでもお伝えしたように、日本の製造業のバリューチェーンには大きく2つの形態があると言われます。1つは、量産型によく見られるバリューチェーン形態であり、エンジニアリングチェーンがサプライチェーンから分離されていることが特徴です。もう1つは個別受注生産型によく見られるバリューチェーン形態であり、エンジニアリングチェーンがサプライチェーンの上流部分に含まれているのが特徴です。
そして、マスカスタマイゼーションのニーズが高まる中においては、個別受注生産型のバリューチェーン化が進行しつつあります。
マスカスタマイゼーションに対応したバリューチェーン化が進むと、製品ライフサイクルを管理するために用いるPLMの考え方も変わってきます。従来の大量生産においては、開発段階でPLM上に各種BOMを構築し、仕上げた上で、それらのBOMを製造段階で活用して生産していたのに対し、マスカスタマイゼーションでは開発プロセスがサプライチェーンに組み込まれているため、PLM活用のスピードを製造プロセスに同期する必要が出てくるためです。
【次ページ】3Dモデルを活用した変化に強い設計・製造プロセスの実現
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