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- 2023/08/21 掲載
熱狂「生成AI」「メタバース」はどう活用されている? 製造業の最新動向まとめ
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』『デジタルファースト・ソサエティ』(いずれも共著)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。
経営者は無視できない?世界の潮流
ドイツのインダストリー4.0は、2011年のハノーバーメッセで発表されました。それから12年が経過したわけですが、この間、日本のデジタル化の取り組みは既存ビジネスの延長線上での効率化に終止をしてきた一方、ドイツなどの欧米のデジタル化の取り組みは、社会・経済基盤の再設定といった観点で着実な歩みを遂げてきたのではないでしょうか。インダストリー4.0とは、ドイツのハイテク戦略2020を実現するための、第4次産業革命における国家プロジェクトです。ハイテク戦略とは、少子高齢化による労働人口減少、エネルギーをはじめとする資源供給問題など、社会課題を解決することを目指す取り組みです。
このように、インダストリー4.0のコンセプトは元々さまざまな社会課題の解決であり、工場のスマート化にとどまるものではありませんが、日本ではデータを用いた工場内諸問題の解決に視野が行きがちでした。しかし、ここ数年のハノーバーメッセの主テーマのように、地球温暖化という社会課題に対してインダストリー4.0で取り組もうという動きがはじまることで、その本来の価値が徐々に再認識されはじめています。
実際に、地球温暖化に対する取り組みは世界的に広がりつつあります。第1次産業革命以降、私たちの社会では、化石燃料や地球資源に依存し、大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行(リニア)型の産業・社会システムの枠組みの中で経済活動が営まれてきました。しかし、地球温暖化や、資源の大量廃棄、環境汚染などの問題が深刻化し、これらがこのまま続くと地球がもたなくなる可能性が高まっています。
こうした中、化石燃料からカーボンニュートラルへ、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ、集中型から分散×ネットワーク型への移行が進んでいます。これに伴い、産業・社会の構造は、従来の垂直統合型・集中型から網目状につながる分散ネットワーク型に移行していくことが考えられ、こうした動きは不可逆的に進んでいくとみられます。
このような産業・社会の構造転換の動きの中では、製品設計やサービス設計にもそれに適した変革が求められているのです。それでは、具体的に製品設計や企業の戦い方にはどのような変化が起きているのでしょうか。ここからは、2023年のハノーバーメッセの様子から見えてきた最新トレンドを紹介していきます。
最新トレンド(1):経営戦略の変化
ハノーバーメッセ2023からはいくつかのトレンドが見えてきました。まず1つ目は、ソフトウェア比重の高まり(ソフトウェア・デファインド化)です。この流れに呼応する形で、モノ企業からデジタル企業へのポートフォリオシフトが進んでいます。M&Aやグループ戦略を通じて企業を変革させ、サプライチェーンやエンジニアリングチェーンをエンドツーエンドでサポートすることで顧客経験価値向上を目指すプレイヤーが増加しているのです。
たとえば、シュナイダーエレクトリックは、AVEVAやProLeitを買収し、AVEVAがOSIsoftを買収したことで、シュナイダーエレクトリックのポートフォリオは大きくデジタル領域にシフトし、AVEVAのポートフォリオも広がりました。これにより、従来シュナイダーエレクトリックが持っていたフィジカルのモノのデータを企業にインサイトを与えるデータへ進化させる土壌ができたと言えるのではないでしょうか。
2つ目は、ソフトウェアの比重の高まりや、エコシステムづくりの動きにより、個社で戦うよりも、エコシステム同士で戦う時代になっていくことが予想されます。今後は、どのようにエコシステムを構築し、どう参加していくのかを意識する必要があるかもしれません。たとえば、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーというキーワードを使いながら、ソフトウェアの比重を高めつつ、エコシステムの中で解決しようとするパターンが増えていくのではないでしょうか。
3つ目は、データ共有圏の取り組みの加速です。従来から欧州では、データスペースが、企業や社会全体で主権、インターオペラビリティ、信頼性のあるデータ共有を実現するためのキーとなり、データエコノミーへの重要な一歩となると言われてきました。
ハノーバーメッセ2023では、つながる仕組みの実現においてアセット管理シェル(AAS:Asset Administration Shell)がグローバルスタンダードになり、AASをベースとしたデジタルツインがインターオペラビリティを支えるという構図が見えてきました。
その具体的な手段として、GAIA-X、Catena-X、Cofinity-X、Manufacturing-Xといった団体が設立され、つながりを作っていくという動きが今後も継続していくと考えられます。 【次ページ】最新トレンド(2):インダストリアル・メタバース
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