- 2025/12/12 掲載
【今日から】完全施行「改正建設業法」を徹底解説、「安すぎる契約」はもう許されない(2/4)
改正の目的:安すぎる契約「もう黙認しない」
今回の建設業法改正で、最も象徴的なメッセージは「安すぎる契約は許さない」という国の明確な意思表示です。これまで、技能者の賃金や下請け企業の利益を圧迫していた背景には、発注者や上位の元請負人が労務費や材料費を十分に反映しない“低すぎる契約価格”を結ぶ慣行がありました。
その結果、現場では「人を雇いたくても雇えない」「処遇改善に踏み切れない」といった悪循環が当たり前になり、現場の疲弊が進んできたのです。
この構造的な問題を断ち切るため、今回の法改正では、以下3点の禁止事項が明文化されました。
・著しく低い労務費等による見積り提出(受注者)の禁止これは、長年“実勢価格を下回る契約”が見逃さされてきたことに対し、「もう黙認しない」という強い制度的な是正措置といえます。
・見積り変更依頼(注文者)の禁止
・(受注者側の)不当に低い請負代金の禁止
ポイント(1):国や都道府県による「勧告」「公表」
今回の新たなポイントとして、発注者が不当に価格を抑えた場合に、国や都道府県が「勧告」や「公表」を行えるようになりました。これは、発注者にも価格責任を問う、これまでにない新しいステージに入ったことを意味します。この改正は、単なる法令順守を求めるだけでは、処遇改善や人手不足の解消を実現するために、企業間の契約関係そのものを見直す契機となるものです。
これからの時代は、「安さ」ではなく、「適正な対価を支払える経営体質」が、建設企業の信頼や継続的な人材確保を左右する重要な基準になるといえるでしょう。
ポイント(2):「労務費の基準」の中身
上記の改正と並行して注目されているのが、「労務費の基準」制度の創設です。これは、建設工事における労務費の適正水準を明らかにし、技能者に正当な対価が確実に支払われる仕組みの整備を目的としています。“現場に必要な人件費が残るかどうか”を左右する、今回の改正の中核ともいえる仕組みです。
従来、発注者や元請負人が見積りや契約の段階で労務費を削減するケースが後を絶たず、処遇改善が進まない一因となっていました。そこで、国は「公共工事の設計労務単価×歩掛」をベースに、地域・職種ごとに“適正な労務費水準”を算定し、「基準値」を明示する制度設計を行いました。
たとえば、都道府県別に「とび・土工工事」「鉄骨工事」などの職種ごとの標準的な労務費水準が示されることで、建設業者は見積り時に適正な労務費を提示しやすくなります。
これにより、技能者の賃金に直接つながる金額が確保され、賃金水準の底上げが期待されます。
特に注目すべきは、この制度が公共工事だけでなく、民間工事においても「実質的な指標」として働く可能性が高い点です。制度の実効性を高めるためには、中小事業者でも簡単に使えるフォーマットやテンプレートの整備が不可欠であり、今後のガイドライン整備が期待されます。
「労務費の基準」は単なる数字の提示ではなく、処遇改善と人手不足の解消に直結する、現場主義の制度といえるでしょう。 【次ページ】ポイント(3):工期ダンピング撲滅の仕組み
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