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  • 2025/10/09 掲載

ANA×NCAで何が起きる? 日本唯一の「貨物専業」を手に入れた“最強シナジー”の正体

連載:北島幸司の航空業界トレンド

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ANAホールディングス(以下ANAHD)は2025年8月、日本貨物航空(以下NCA)を正式にグループへ迎え入れた。成田のNCA格納庫でボーイング747-8Fを背に約200名が列を成した光景は、単なる歓迎式典ではない。貨物を成長の軸に据えるANAが、NCAの大型機と欧米ネットワークを取り込み、事業ポートフォリオを再設計する号砲である。人と機材、路線と販売の掛け算で、旅客偏重の常識を塗り替える準備は整った。次の覇権を決めるのは「belly(旅客機の貨物室)」だけではなく「freighter(貨物専用機)」だ。
執筆:航空ジャーナリスト 北島 幸司

航空ジャーナリスト 北島 幸司

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。

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次の覇権争いは「貨物専用機」と言えるワケ
(写真:筆者撮影)

スキーなどの社外交流──芝田社長らの「縁」

 今回のANAによるNCAのグループ化は、単なる企業間の提携に留まらず、長年にわたる両社の社員同士の交流や、経営層の個人的な縁が深く関わっていたことを歓迎式典の場で改めて認識させられた。

 ANAHD代表取締役社長の芝田 浩二氏は、ANAの国際線就航の礎になったのがNCAであることを紹介し、自身の現役時代にNCAとともに両社の本社が入る霞が関ビルから、NCAの社員と週末には新潟方面へよくスキーに出かけていたというエピソードを披露した。

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【詳細はこちら】歓迎式典にて、ANAHD代表取締役社長の芝田 浩二氏(左)と握手するNCA代表取締役社長の本間 啓之氏(右)
(写真:筆者撮影)

 同じビルで働く仲間としての気兼ねない交流が、会社間の垣根を越えた信頼関係を築き上げてきた。それが、今回のグループ化への円滑な道筋をつけた一因でもあると示唆するものであった。

 さらに、ANA Cargo代表取締役社長で、新たにNCAの取締役に就任する脇谷 謙一氏と、NCA代表取締役社長の本間 啓之氏の間にある深い縁もまた、このグループ化を特別なものにしている。

 筆者がNCAの大阪支店に勤務していた頃、新人時代にANA大阪支店で勤務する脇谷氏と東京から転勤してきたNCA本間氏は、当時から隣接するビルを行き来し情報交換を重ね、貨物市場動向について熱く議論することで、互いに高め合う関係であったことをよく記憶している。

 彼らが若き日に培った信頼と友情は、それぞれの立場で会社をけん引する立場となった今もなお健在である。このような個人的な縁が、会社間の壁を超えた強固な信頼関係を醸成し、今回のグループ化を円滑に進める上で、計り知れない大きな力となったことは想像に難くない。

 経営戦略と同時に、人と人との繋がりが、この歴史的なグループ化を現実のものとしたのである。 【次ページ】次の覇権争いは「貨物専用機」と言えるワケ
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