• 2026/06/22 掲載

「あの人なら大丈夫」がバーンアウトを生む? 優秀社員が“突然消える”職場の共通点

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「あの人なら大丈夫」と思われている人ほど危ない。責任感が強く、周囲に頼らず、期待に応え続ける人は、限界が見えにくいからだ。そして弱音を吐けない職場、相談できない関係性、感情を置き去りにして成果だけを求める組織風土の中では、優秀な人ほど静かに壊れていく。バーンアウト(燃え尽き症候群)を「本人の弱さ」と片付けている限り、同じことは繰り返される。個人の症状として現れるバーンアウトの根には、孤立を生む「組織の病」がある。
執筆:スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 髙木 穣

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 髙木 穣

福岡県生まれ。人事制度の策定や研修開発に取り組んだ前職での経験から、 ハード(制度・仕組み)の改革だけでは人が生きる組織づくりは難しいことを実感。 だからこそ、ソフト面(組織風土)を重視する現職では、人の持つ思いや感性を大事にしながら対話をすることにこだわる。 組織変革への重要なファクターである“場”づくりのプロフェッショナル。 “場”の空気を読んだふるまいで”安心感”を醸成し、互いに自然体で話し合える”場”をつくり出す。 組織を活性化させる対話技術を磨く「マネジメント・ダイアログ・ジム(MDG)」や、 企業・自治体向けの「チームビルディング研修」「対話型マネジメント研修」「価値観対話」などを実施。 東洋医学や禅などにも造詣が深い。 著書に『職場にやる気が湧いてくる対話の技法』(同文館出版)

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バーンアウトは個人ではなく組織の問題だ
(画像:本文をもとに生成AIで作成)

「優秀社員を壊す職場」にある3層構造

 日本企業が成長しない理由は、人の心の扱い方を直視していないからだと私は思っている。優秀で活躍している人が、ある日突然動けなくなる。「なぜ、あの人が?」──バーンアウトとは「人に頼れず、1人で責任を背負い続けた末の崩壊」である。この問いを私たちは本人のメンタルの問題として片付けがちだ。問題を起こす温床となっている「組織」には触れられずに、人々はこうした繊細な問題を次第に見過ごすようになっていく。

 ではどうしたらいいのだろうか。まず、バーンアウトの原因を「個人」「関係性」「組織風土」の3つのレベルで見てみよう。

 まず「個人」の心理レベル。バーンアウトになる人は責任感が強く、まじめな人が多い。「弱音を吐かない」「感情を飲み込む」といった形で、感情を切り離して成果を出そうとする。自分の感情との接触を断つのだ。感情は自然と生まれるものなので、抑圧され続けると心身に無理がかかり、いつしか耐えられなくなる。

 2つ目は「関係性」。私たちが組織を見るとき、「相談関係」がどのくらい存在しているかを確認する。相談とは自分の弱みを相手にさらす行為であるため、相手を選ぶ。逆に相談できるということは自分の弱い部分も分かち合える相手がいるということだ。もし組織内に相談できる人がいなければ、自分で抱え込んでなんとかするしかない。「自分で頑張らなければ」という思いが周りとの関わりを断ち、そして「自分さえ良ければいい」へと発展し、他者への関心や思いやりが持てなくなる。こうして孤立化が進み、責任感の強い人ほど自分で頑張って限界を迎えるのだ。

 そして「組織風土」の問題だ。多くの組織では、指示命令と管理がきっちりある一方で「自分で考えて行動しろ」という主体性を求められる。この主体性は自分でなんとかしなくてはならない「自己責任化」になっていく。そして、主体性のない人はダメだと評価され、主体性を持って頑張っている人に仕事が集まり、責任が重くのしかかり、バーンアウトにつながっていく。

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【図版付き記事はこちら】
バーンアウトを生む3つの原因
(図版:本文をもとに編集部作成)
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メンタル不調者ゼロになった支店で「最初にやめたこと」

 組織の観点で見ると、バーンアウトは仕事量による「疲弊」で起きるというより、1人で頑張らないといけない「孤立」で起きる。

 「私は問題解決のために対策を打とうとしていた。だからうまくいかなかったのだ」──組織内に孤立・分断が起きており、メンタル不調者が続出していた支店のリーダーの言葉だ。この気づきの後、1年でメンタル不調者ゼロになる動きをつくっていった。

 孤立をなくすためには、「問題解決策をつくる」ことを優先してはいけない。ではどうしたらいいのか。まず、ふるまいを変えていくことを意識することからだ。その鍵となるのが「弱みの開示」。困っていること・悩んでいることを他者に開示しやすい風土をつくっていくのである。そしてその先で、「本音の交流」ができるようになると理想的である。

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バーンアウトを避けるためには「ブラック層」と「ウィーク層」を表に出していくべきだ
(画像:筆者作成)


 私の体験からすると、本音には大きく3つの層がある。上の図を参照してほしい。まず最も浅いところにあるのが不平不満や愚痴などの「ブラック層」。本音というとこれを想像してしまうので本音に抵抗感がある人もいるが、実はこれは本音の中でも浅いところに位置している。そして、それよりも深いところにあるのが、「自分には価値がないと思われているのではないか」というような不安や恐れの「ウィーク層」である。ここの部分を開示し合えると、人同士つながる感じが出てくる。人間は弱いところを共有することでつながっていけるのだ。

 そしてその奥底には本人も意識できていない「本当はこうしたい」「かくありたい」という純粋な思いの「コア層」が眠っている。なかなかそこまでたどり着くのは難しいが、そこが共有・共感できるとビジョンを共有したチームが出現する。ただそこまでいかなくても、ブラック層やウィーク層でも表に出せる風土や関係性があれば、バーンアウトが生まれる土壌はなくなっていく。 【次ページ】【受け止める力】まずはリーダーが弱みを見せるべき
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