- 2026/06/01 掲載
【freeeも急成長】日本市場の特殊すぎる壁…乗り越えた企業たちの“覚悟の選択”
大阪府立大学在学中、人材系スタートアップの立ち上げに参画した後、同校を卒業し、リブ・コンサルティングに入社。入社後は主にベンチャー企業向けのコンサルティングに従事、同社最年少でマネージャー、パートナーに昇進し、ベンチャー事業部を率いる事業責任者として事業を牽引。ベンチャー事業部では、累計100社以上、プロジェクト数では500プロジェクト以上のスタートアップ・ベンチャー企業の成長を支援。2024年、SaaS経営シミュレーションゲーム「T2D3」の開発。リリース1.5年で350社以上の企業に提供。
関西学院大学を卒業後、リブ・コンサルティングに入社。入社後は、大手企業の中期経営計画策定やビジネスデューデリジェンスなどに携わった後に、ユニコーン企業・ベンチャー/スタートアップ企業の事業開発・事業グロースの支援に従事。ベンチャーコンサルティング事業部のパートナーを務め、コンサルティング業務に加えて、自社の事業づくり・組織づくり・人材育成にも携わる。
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売上10億~20億円で伸び悩む…日本市場では特に分厚い「壁」
ARR10億~20億円のレンジで、多くの企業が直面するのが、いわゆる「キャズムの壁」です。米国の社会学者・エベレット・M・ロジャーズが著書『イノベーター理論』で示したように、イノベーターやアーリーアダプターからアーリーマジョリティへと広がる過程には大きな断絶があります。
これを、「キャズム」と呼びます。
理論上は世界共通の現象ですが、日本市場ではこの壁が特に早く、厚く立ちはだかります。
その背景には、文化的・構造的な要因が複数重なっているのです。
まず挙げられるのは、日本企業特有の「試す文化の弱さ」です。
米国の企業は現場や部門長レベルで新しいツールを導入し、実際に使いながら評価する傾向があります。
しかし日本企業では、新しいサービスを「まず試してみる」よりも「他社事例を確認してから検討する」姿勢が強いため、アーリーマジョリティへの拡大はスローペースになりやすいのです。
次に、意思決定プロセスの複雑さがあります。
大手企業では、情報システム部門や監査部門、ときには法務や経営企画まで巻き込んで承認を得る必要があります。
そのために導入までの期間が延びやすいのです。スタートアップがPoCを経ても本契約に至らない「PoC止まり」が頻発するのは、こうした背景があるからといえます。
つまり、日本ではアーリーアダプターからアーリーマジョリティへ広がるためのハードルが制度的に高い状況にあるのです。
さらに、日本市場ではITリテラシーの格差が大きな要因となっています。
大企業は一定水準のIT人材を抱えていますが、中堅・中小企業では専任担当者が不在なことも多く、SaaSの導入に対する心理的ハードルが高いのです。
結果として、アーリーアダプターと呼べる層の厚みが薄く、成長カーブの早い段階で限界に突き当たります。海外と比較すると、日本ではその「助走区間」が短いためにキャズムに早く直面してしまうのです。
もう1つ忘れてはならないのは、市場規模そのものの違いです。
SMB市場を深掘りするだけでは限界が早く訪れ、早期にエンタープライズ市場に進出しなければ成長を継続できません。
つまり、どの地点でキャズムの壁が現れるかは市場規模によって異なります。大市場ならSMB集中で一定規模までは伸びますが、ニッチ市場ではエンタープライズ参入が不可避ということです。
こうした文化的要因、制度的要因、ITリテラシー格差、そして市場規模の違いが重なり、日本のスタートアップは売上10億~20億円という早い段階で「停滞感」に直面します。
キャズムの壁とは、単に顧客数の拡大が難しくなるという現象ではなく、「今の市場と顧客アプローチだけでは、これ以上の急成長は望めない」という現実を突きつけられることなのです。
成長を続ける企業は、この壁を正面から認識し、自社が本丸とする市場を見極めます。
SMBに集中して長期積み上げを選ぶのか、それともエンタープライズへ踏み込むのか。あるいはその両輪を戦略的に組み合わせるのか。
キャズムの壁は、単なるハードルではなく「次の成長エンジンをどう仕込むか」を迫る問いでもあるのです。 【次ページ】freeeやマネーフォワードも選択した「中小企業から攻める」
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