- 2026/09/16 06:50 掲載
【独占】なぜ福岡の運送会社は「100年続いた漬物屋」を買収? 成長戦略が異色すぎた(2/3)
連載:「日本の物流現場から」
倉庫作業員から「食堂のおばちゃん」に
「同じ釜の飯を食おう」という柳川合同 代表取締役 荒巻 哲也氏の発案から始まったこの取り組みが開始されたのは、2010年のこと。現在も、本社に併設された社員食堂「YG食堂」で形を変えながらも継続されている。
「倉庫作業員だった女性が、加齢により『そろそろ体力が厳しいので辞めたい』って言い始めたんですよ。社食だったらまだ働いてもらえるんじゃないかと思いまして」、荒巻社長の発想により、2024年から始まった「YG食堂」。今はご主人も加わり、ご夫婦で社食運営を担当しているそうだ。
「『60歳で徐々に仕事を減らして、65歳で完全引退』なんて人もいますが、『もうちょっと働けないものかな?』って思うんですよね」(荒巻社長)
たとえば、これまで長距離輸送を担当してきたトラックドライバーも、年齢を重ねれば体力的に段々としんどくなってくる。
「従業員に対して、体力などの衰えに応じた仕事を用意してあげるのも、会社の役目じゃないですかね。ドライバーであれば、『65歳ごろにはフェリーを利用した長距離運行を任せる』とか、『70歳ごろには2トン車を用いた給食配送をしてもらう』とか」と荒巻社長は語る。
ただし、人には適正がある。業界外の人から見れば、「大型トラックも2トントラックも同じトラックでしょう?」と思うかもしれないが、大量の貨物を遠くまで運び、1カ所から多くても2~3カ所の積み卸しを行う長距離輸送と、「比較的小さな物量の貨物を、小型トラックで次々に卸していく」ミルクランと呼ばれる輸送では、まるで勝手が違う。
「だからこそ、さまざまな人がより長く働くことができるように、会社としては色々な業種を持っていたいと考えています」と荒巻社長は説明する。
なぜ異業種M&A?「トラック増車で成長」ではない納得理由
「現在、当社は長距離輸送(幹線輸送)に主軸をおいていますが、当社のような中小企業では、幹線輸送を生業としている大手運送事業者には太刀打ちできません。だったら、トラックを増やすような規模のビジネスで戦うよりも、異業種を取り込んだほうが楽しいです」(荒巻社長)
同社は、2025年7月にトラック架装メーカーを買収、2026年2月にはボイラー工事業者を買収した。
「買収したボイラー工事業者は、当社の荷主の分類になります。だったら運ぶだけではなく、設置や調整、保守といった『運んだ後のビジネス』も取り込みたいと考えたわけです」と、荒巻社長は買収の目的を説明する。
ほかの例も挙げよう。
同社は、一般家具の輸送も手掛けてきた。同社本社のある柳川市は、家具の一大生産地である大川市に隣接している。最初は輸送するだけだったが、やがて同社は家具の設置も手掛けるようになった。生産地から顧客までの一貫輸送に加え、設置まで行うとあって、荷主からの評判も上々だという。
つまり荒巻社長は、トラック輸送の前後にあるビジネスを取り込んでいくことを考えたのだ。また、こういった異業種ビジネスをグループ内に取り込むことで、より多くの従業員に、より長く働くことができる選択肢を提供できる。
こうした戦略を、当の従業員たちはどう感じているのか? 荒巻社長は、「トラックを増やしたときよりも、異業種の会社を買収したときのほうが、皆が楽しそうなんですよ」と頬を緩ませる。
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