- 2026/09/16 06:50 掲載
【独占】なぜ福岡の運送会社は「100年続いた漬物屋」を買収? 成長戦略が異色すぎた(3/3)
連載:「日本の物流現場から」
話題になった「倒産した100年企業」の買収と再建
柳川合同にとってオニマル社は荷主だった。その縁もあり、2020年にオニマル社を完全子会社化、荒巻社長が経営改革を断行した。翌年には事業を黒字化、2026年度で累積赤字を解消できる見込みである。
「オニマル社の事例が世の中で知られて、当社にもいろいろな相談が来るようになりました。運送会社の従業員って、中途入社の人が多いですよね。だから運送業以外の経験を積んでいる人が結構いて、たとえば『昔、ユンボに乗ってました』とか『元大工です』って従業員が、『その案件、私やってみたいです!』って挙手してくれるんですよ」(荒巻社長)
異業種進出について否定的な従業員はおらず、むしろ「昔取った杵柄(きねづか)」を同社で再び生かせることに喜びを感じる人や、あるいは新たな仕事に対してワクワクするような人が多いのだそうだ。
一方で、オニマル社のエピソードからは、荒巻社長が優れた経営手腕を備えていることが分かる。
「経営において、利益は目的ではなく必須の手段です。経営者としても、利益が出ていないのに従業員に対して優しくはできませんよ。だから、利益の確保に関しては自覚するよう、皆に対して厳しく言っています」(荒巻社長)
ちなみに同社では、社員の平均年収を業界ナンバーワンに引き上げることを目標に掲げている。得た利益を従業員に対して還元することは、経営者の責任としては当然ではある。しかし、従業員に対してこれをコミットしている会社は、意外と少ない。
競合と争わない…? 地方企業が目指すべき「成長モデル」
本社には、まるで小学校や中学校の教室のようなスペースがある。ドライバーに対して個人用の椅子と机が設けられているのだ。
次期社長で取締役の荒巻 陽佑氏は、「運行を終え、疲れて帰ってきたドライバーも、『自分専用の席があったほうが、気が休まるのではないでしょうか?』という社内提案がありまして」と説明する。
地方ゆえに「(敷地の広さなど)環境に恵まれている」という要素もあるとは思うが、ドライバー1人ずつに専用席を用意している運送会社は、数々の取材を行ってきた筆者も見たことがない。
ほかにも本社敷地内には、バスケットボールコート、ゴルフケージ、鉄棒など、室内にはトレーニングマシンや、大量の小説などを収めた本棚、会社の歴史などの展示室が設けられている。さらに、オフィスワーカーの机は、すべて昇降式デスクを採用している。
興味深いのは、これらの取り組みは、すべて社長1人の発案によるものではなく、従業員からの提案なども含まれていることだ。
ここまで徹底している様子を見ると、「地方の会社だから土地が余っているんでしょう?」とやっかむ人も、「従業員がより働きやすい環境を実現するために」常日頃から取り組んでいることを理解してくれるのではないだろうか。
筆者は、年商40億円ほどの運送会社経営者から、経営目標について相談されたことがある。筆者は、「年商100億円は目指せると思うが、これ以上を目指すとなれば競合他社のシェアを本気で奪わざるを得ず、軋轢が強くなりすぎるのではないか」とアドバイスした。
国内輸送貨物量は減少傾向にあり、トラック輸送産業における拡大とは、限られたパイの取り合いになってしまうからだ。
その点、柳川合同は、緩やかな人口減少が進む地方の中堅都市において、不振企業の再生や、異業種の取り込みなどの多角的な方法により、新たなビジネス・エコシステムの形成を目指している。
このように、現実的で、誰も不幸にしない経営戦略も、「良い会社」におけるモデルケースの1つと評価すべきだろう。今後、同社がどのように発展していくのか、見守っていきたい。
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