【後藤智氏(以下、後藤氏)】
――日本の製造事業者の多くが苦境に立たされています。この現状をどうご覧になりますか。
【遠藤功氏(以下、遠藤氏)】
確かに超円高や東日本大震災、タイの洪水と日本のものづくり企業にとって逆境が続いていますが、苦しんでいる会社もあれば、こうした中でも確たる国際競争力を持って最高益を出している会社もあります。二極化が進んでいるというのがより正確な認識でしょう。
【後藤氏】
――二極化ですか。両者はどうして違ってきてしまったのでしょうか。
【遠藤氏】企業にとって重要なのは、戦略と現場力です。まずは合理的かつ身の丈に合った戦略を描けているか。韓国、台湾、中国、といった手ごわいアジアの国々が台頭しており、彼らとどう差別化するかを冷静に見極めなければなりません。たとえばテレビ。もうこれはコモディティ商品となっており、価格競争が激化しています。ここが日本企業の「戦う土俵」として妥当だったのかどうか疑問が残ります。
一方、自動車業界を見ると、日産自動車はハイブリッドカー市場には出遅れましたが、ゴーン氏が電気自動車に焦点を絞りました。まだ最終的な結果が出ているわけではありませんが、自分たちがどの土俵で戦うかが明確な会社は元気がいいのは確かです。戦略がしっかり描けていて、そこに実行できる現場力があれば、ものづくり企業は厳しい事業環境の中でも勝ち残っていけます。
【後藤氏】
――PTCは、世界30カ国で、ものづくり企業の製造現場を中心に、業務改善のコンサルティングやワークショックを展開していますが、戦略やビジョンが定まっている会社の方々はモチベーションが高いですね。“うちは○○社とは違うんですよ”と誇りを持って、ビジネスを語られます。逆に、トップの思いが現場に伝わっていないし、現場の意見がトップに届いていない、進む道が明確でないというような会社は、全般的に社内の空気がどんよりしています。
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