企業の存在価値は、人々を幸せにすること
NTTドコモの初代社長で、iモード躍進の立役者としても知られる大星公二氏は、日本電信電話公社(電電公社、NTTの前身)時代から、企業の社会的責任を基本的な哲学としてきた人物だ。企業のレーゾンデートル(存在価値)は、人々を幸せにすることであると捉え、実践してきたという。
それを端的に示すエピソードが、中国電気通信局長として中国地方を任せられていたときにある。それは広島市に中国支社を開設しようとしたときのこと。当時、同社は市の中心部、広島市民球場の近くの最高の立地にオフィスを構えていた。
「こんなオフィスビルは街の真ん中にある必要はない。これを撤去し、広島のシンボリックなビルを建てて、地域活性化のため提供する」として実行し、広島市から「街づくりデザイン大賞」を受賞した。
こうして生まれたのが、同社の複合ビル「NTTクレド基町ビル(基町クレド)」だ。1994年に開業すると、地下鉄の駅、バスセンターが隣接し、同ビルにはデパート、ショッピングモール、ホテルなども入居し、市全体の活況につながった。このビルは、平成6年度のグッドデザイン施設選定賞を受賞し、今なお広島を代表するランドマークとして君臨している。大星氏はこうした自身の経験を踏まえつつ、企業が地域社会に貢献する必要性を強調した。
「黙っていては需要は生まれない。企業は積極的に需要を掘り起こし、いろいろな新サービスを提案し、それで得た利益を社会に還元していく必要がある。」(大星氏)
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