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  • 2013/12/31 掲載

創業454年のものづくり企業の選択、戦略的な顧客管理・BI基盤で現場を支援する

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岐阜県関市に拠点を要する創業454年のものづくり企業 鍋屋バイテック会社では、早くから顧客情報管理に着手、受注率向上に努めてきた。2013年、同社はさらなるビジネス成長の一手として、基幹システムや顧客情報管理システムで蓄積されたデータを活用し、現場の最前線の見積り業務を支援しながら、次の柱に育つ製品を発掘するビジネス・インテリジェンス(以下、BI)の導入を決定。さらに、現場の思考を中断させないための高速な分析を実現するためのデータウェアハウス(以下、DWH)と、関連システムを効率よく統合する共通プラットフォームの導入を進めている。

「寿司バーコンセプト」で差別化する創業454年のものづくり企業

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鍋屋バイテック会社
取締役 SCM部 部長
谷口 達也 氏
 岐阜県関市に、創業1560年と実に454年の歴史を有するものづくり企業がある。それが鍋屋バイテック会社だ。代々鋳物づくりを得意としてきたが、近年はプーリー(滑車)、カップリング(軸継手)、機械要素部品などを幅広く手がけ、取扱品目総数は特注品も含めると約6万点にのぼる。

 同社はユニークな経営哲学を持っていることでも知られている。それが「寿司バー コンセプト 」だ。鍋屋バイテック会社 取締役 SCM部 部長 谷口達也氏は、次のように説明する。

「板張りのカウンターを持つ寿司店は、魚とシャリの仕込みを終えた状態で客の注文を待ちます。『刺身』といわれれば刺身で出し、『さび抜きのマグロ』と注文が入ればそう握ります。当社はこれを工業品の世界で実現します。追加加工が必要ならそれを提供し、ロット調整の注文にも柔軟に応じます。グローバル競争に巻き込まれがちなものづくり産業の中にあって、当社は“多品種微量生産”で他社との差別化を果たしています」

 また、企業経営におけるIT活用にも積極的に取り組んでおり、基幹システム刷新の一環で構築した「生産スケジューラ」は、経済産業省主催の中小企業IT経営力大賞を受賞している。

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鍋屋バイテック会社関工園

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顧客アプローチを統合するコンタクトセンター構築で受注率を向上

 一般に、機械要素部品の商流は、メーカーから代理店を通して、エンドユーザー企業に届けられる。同社もその例にもれず、自社の製品を採用しているエンドユーザー企業を把握することは容易ではなかった。

 しかし、エンドユーザー企業のニーズを知ることは経営戦略上、非常に重要と判断し、2000年ごろから顧客情報を自力で集め、データベース化してきた。それは主に製品カタログの送付などに利用され、2008年ごろには約10万件ものボリュームに達していた。

 その一方で、同社は営業活動のあり方に課題を感じていた。谷口氏は語る。

「本社に加え、東京、名古屋、大阪に営業拠点を構えていましたが、営業員が終始電話やFAXによる見積り対応に追われ、肝心のお客様訪問に出かけられませんでした。また、拠点が分散しているために、顧客対応が異なることもありました。その結果、東京で見積もった価格と、大阪で見積もった価格に誤差が生じるケースがあったのです」(谷口氏)

  そうした折、同社経営陣は日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)が実践している、顧客への見積り対応を全社レベルで統合する考え方に触れる。早速IBMの視察を行った経営陣は、すぐさま「ディールハブ・プロジェクト」を立ち上げ、まずCRMソフトウェアのSugarCRMをベースにコンタクトセンターを設立した。SugarCRMを基盤としたのはオープンソースベースで無償版が存在し、効果がないとみれば気軽に中止できると思ったからだ。

 コンタクトセンターはうまく機能した。営業員は電話やFAX対応といった社内業務から解放され、新規の顧客・チャネル開拓や顧客ニーズの把握といった本来の営業活動に専念できるようになった。

 また、コンタクトセンターに見積り業務も統合したため、回答が一本化するとともに、見積りフォローシステムの構築もあり、受注率は一気に高まったという。そして、SugarCRMには、顧客情報、見積り情報、営業日報、顧客とのコンタクト履歴など貴重なビジネスデータが着々と蓄積されていったのである。

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次なるステップとして現場で使えるBI基盤構築に挑戦

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DHI
営業企画統括 兼 関西センタ
統括 執行役員
伊藤 拓治 氏
 しかし、2008年から5年が経過すると効果が少し薄らぎ始め、受注率が下がってきた。これは多量の見積りへの対応が可能になった反面、顧客に提出した見積りフォローに十分に時間が割けなくなったからだと谷口氏は振り返る。

「業務自体は年中多忙を極め、提供している見積り書上の金額は決して少なくありません。すべて受注すれば年商が倍増するようなレベルです。もしそうならSugarCRMや基幹システム上のビジネスデータをもっと有効に活用すれば、さらなるビジネスの成長につなげられるはず、と考えました」(谷口氏)

 そこで同社は受注率10%向上という目標を掲げ、生産スケジューラ開発時代から同社のシステム開発に携わるグランドデザインに相談。真に機能するデータ・活用サービスを提供するDHIとIBMを交え、顧客データを有効活用するために「IBM Cognos BI(以下、Cognos BI)」を使ったBIの導入を検討することになった。

 これを進めるに当たって経営陣は一つ注文をつけた。「単なる過去データの分析に終わるな」というものである。たとえば見積り業務の効率化、同社で「玉(ギョク)」と呼ばれる将来ビジネスの柱となるような製品の発見、顧客満足度向上、それらを総合的に実現できるなら、という条件でGOサインが出た。

 そこでまず、見積り業務の支援から始めようと発想されたのが「受注レシピ」と名づけられたダッシュボードだ。全部で7つのメニューからなる。

 今回のプロジェクトでシステム基盤の構築を担当したDHI 営業企画統括 兼 関西センタ 執行 統括役員 伊藤拓治氏は、「分析のための分析ではなく、見積り担当者が日々の業務を遂行する中で、その効率化と意思決定の裏づけ材料として活用できる点に大きな特長があります」と胸を張る。

 「受注レシピ」のうち、ここでは「類似見積もりの発見」「過去の出荷状況確認」「『流れ品』の発見」という3つの機能を紹介しよう。

 まず、「類似見積もりの発見」は、品番コードをキーに、類似した見積り案件を探し出す機能である。品番コードを入力すればCognos BIが自動的に類似する案件トップ10件を自動的に検索し、一覧表示する。それぞれの案件をクリックすれば詳細が表示され、見積り書作成のテンプレートとすることもできる。

 「過去の出荷状況確認」は、作成した見積り案件が最終的にどれぐらい出荷に結びついたかどうかを見ることができる機能だ。同社にとって戦略的な取引先かどうかを判断する重要な指標になる。

 「『流れ品』の発見」とは、再注文が舞い込んでくる人気製品(流れ品)を発見する機能である。人気商品に成長した製品注文はEDIシステムによって注文されるため、見積り依頼とひもづかなくなる。しかし、これを見ることによってコンタクトセンターの見積り担当者はそれが大きく育った製品かどうかがわかるというわけだ。

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処理スピードを重視してDB2 BLU + IBM Power Systemsを採用

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グランドデザイン
代表取締役
原 民輝 氏
 このDWHはコンタクトセンターで日常業務に利用されるため、処理スピードは絶対条件である。

 『パッと結果が返ってくるように』という要望を受けて採用されたソリューションが、ユーザーのタイムリーな洞察を支えるパフォーマンスを向上させたCognosビジネス・インテリジェンス、高速なデータ検索・分析を可能にするハイブリッド・インメモリデータベースであるIBM DB2 BLU(以下、DB2 BLU)、同社の基幹システムで高い安定性・信頼性を誇るIBM Power Systemsで構成されるシステムだ。

 一般的なx86サーバであれば、機能ごとにサーバが構築されるが、今回の仕組みではCognos BIとDB2 BLUを同一サーバに導入し、それぞれの負荷に応じてCPUやメモリーを瞬時に自動割り当てできるIBM Power Systemsの仮想化を活用。シンプルかつ効率的な基盤は、ユーザーに優れたレスポンスで応えるだけでなく、システム部門からみても運用負荷やコストを低減できるメリットがある。

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システム概要図

 生産スケジューラ開発時代から同社のシステム開発に携わるグランドデザイン 代表取締役 原民輝氏は、次のように語る。

「『パッと結果が返ってくるように』という要望を受けて、頭に浮かんだのが、以前米国IBMから依頼を受けてSugarCRMのベンチマークテストを行ったときの経験でした。当時、IBM Power Systemsがx86系サーバに比べて10倍ぐらい高速だったので、今回はこれがいいと思いました。現在、顧客情報管理を行うSugarCRMはx86サーバで動いていますが、搭載しているデータは同社にとって重要な資産。将来的には、今回導入するIBM Power SystemsにLinux環境も構築し、より安定性、効率性、レスポンスに優れた環境にSugarCRMシステムを統合する計画です」

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作業軽減で、頭を使い、顧客と話す時間が生まれることを期待

 新システムについて、谷口氏は期待を込めて次のように語る。

「このDWHの実現によって、見積り担当者の事務作業が減り、より頭を使う仕事、顧客とコミュニケーションする仕事に時間が割けるようになることを期待しています。それにより顧客満足度が向上し、受注率が上がり、利益率が上がるという好循環が生まれることが目標です」(谷口氏)

 これまでDWHといえば、専業の分析担当者がバックオフィスで利用するイメージがあった。このプロジェクトは、膨大なデータを扱いながらビジネスの最前線で日々活用することを前提としている点が特徴的だ。最新鋭のハードウェア環境を基盤に、CRM、BI、DWHが高速かつ密接に連動する次世代型システムとしても、今後の展開が非常に注目される。

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導入企業の概要
企業名:鍋屋バイテック会社
住所:岐阜県関市桃紅大地1番地
創業:1560年(永禄3年)
従業員数:413名(NBKグループ6社)
URL:http://www.nbk1560.com/

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寿司バー コンセプトは、鍋屋バイテック会社の登録商標です。
IBM、IBM ロゴ、ibm.comは、世界各国における International Business Machines Corporationの商標です。他の製品名及びサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標です。現時点でのIBMの商標については、www.ibm.com/legal/copytrade.shtmlをご覧ください。
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