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- 2025/06/25 掲載
対話機能は本質じゃない…松尾研金氏が解説「生成AIの価値」を引き出す超重要視点とは
東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。2020年より、松尾研究所に参画し、機械学習の社会実装プロジェクトの企画からPoC、開発を一貫して担当。その後、社内外の特命プロジェクトを推進する経営戦略本部を立ち上げ・統括。また、AI・知能化技術の応用により成長の見込めるベンチャー企業への投資に特化したVCファンドを新設し、代表取締役を務める。松尾研究所の参画以前は、シティグループ証券株式会社にて、日本国債・金利デリバティブのトレーディング業務に従事。
生成AIを構成する「3層構造」をわかりやすく解説
前回示した生成AIの進歩は驚異的な速度で加速している。こうしたAIの能力向上を背景に、さまざまな生成AIサービスが近年勃興しており、その代表格がAIエージェントである。本記事では、生成AIのレイヤー構造の全体像を俯瞰した上で、生成AIの本質的な特徴について述べる。そしてAIエージェントが生まれた背景とその適用領域についての考察を行う。
生成AIの社会実装を考える上で、まず生成AIのレイヤー構造を説明する。生成AI技術は大きく3つのレイヤーから構成されており、それぞれが異なる役割を担いながら機能している。
①インフラレイヤー
生成AI技術の物理的基盤となる階層であり、以下の要素などから構成される。
- 計算設備:モデルのトレーニング・推理向け専用のチップやハードウェア開発、エッジ端末の開発
- 計算力:モデルのトレーニングや推理用GPUサーバ・クラウドサービス
- データベース:高次元ベクトルを効率的に格納・検索できるデータベース
一時、世界の時価総額のトップに立ったNVIDIAはまさにインフラレイヤーの企業の代表格である。
②基盤モデルレイヤー
生成AIの中核機能を担う階層である。モデルは「オープンモデル」(Llama/Meta)と「クローズドモデル」(Google/Gemini、OpenAI/GPT)に大別される。また、特定領域(医療、法律など)に特化したモデルも開発されているほか、近年の特徴として複数のモーダルを扱えるマルチモーダルのモデルが増えている。
- 大規模言語モデル(LLM):GPT、Gemini、Claude、Llamaなど
- 画像生成モデル:DALL-E、Midjourney、Stable Diffusionなど
- 音声モデル:Whisper、Voice Engineなど
③アプリケーションレイヤー
実際にユーザーが利用するサービスを提供する階層であり、「水平展開」と「垂直展開」の二方向で発展している。② 基盤モデルレイヤーの目覚ましい進化もあり、現在もこのアプリケーションレイヤーでさまざまな生成AIのサービスが生まれている。日本企業の多くは、このレイヤーでのAI活用を積極的に検討している。
たとえば、IT大手のDeNAはアプリケーションレイヤーを狙っていると発表をしている[1]。また近年バズワード化しているAIエージェントはまさにアプリケーションレイヤーの代表例である。
生成AIの産業構造を俯瞰すると、インフラ、基盤モデルといった下位層は、兆円規模の投資を背景に巨大企業による寡占が進む。技術が成熟すればコモディティ化するリスクも高く、資本面で劣る日本企業が主導権を握る余地は小さい。
一方、アプリケーションレイヤーはエンドユーザーの課題や文脈に直接触れ、迅速なフィードバックループを通じて継続的に付加価値を積み上げられる領域だ。
ここでは日本企業が得意とする細やかな改善と顧客対応力が差別化につながり、高いLTVを実現できる。ゆえに、多くの日本企業がアプリケーションレイヤーへの取り組みに注力しているのだ。
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