Microsoft 365移行大作戦、創業100年の老舗メーカーがAI活用に向けて最初に選んだ一手
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1927年創業、「生成AI活用」に動き出したOSPグループ
まもなく創業100年を迎える同グループは、持株会社のOSPホールディングスを中心に国内9社、海外7社から構成されているが、国内企業において、データを一元的に統合・管理して、それをもとに生成AIを積極的に活用していく方針が打ち出された。
そこで2024年春、同グループはMicrosoft 365の導入を決断。その理由について、同社 IT戦略本部 本部長 藤原武志氏は次のように振り返る。
「従来は、グループウェアはdesknet's NEO、コミュニケーションはLINE WORKS、ファイル転送はNTTドコモビジネスのBizストレージ ファイルシェア……というように、いくつものツールを組み合わせて使っていました。これらをMicrosoft 365に統合してデータも一元管理することで、生成AIを活用できる環境の構築を目指したのです」(藤原氏)

IT戦略本部 本部長
藤原武志氏
もちろん、以前からWordやExcelは使っていたが、法人向けのMicrosoft 365を導入することで、そこに含まれるTeamsやSharePointなどに各種ツールを移行してデータを統合し、マイクロソフトの生成AIであるCopilotで活用することを目指したのである。
初の「クラウド導入」、立ちはだかったセキュリティの壁
「これまでオンプレミスのシステムを主体に活用してきた弊社にとって、Microsoft 365は初めての本格的なクラウド導入となりました。このため、1つのアカウントでMicrosoft 365をはじめとする複数のサービス・システムにログインできるSSO環境、クラウドに最適化されたセキュリティ対策の導入が不可欠だったのです」(若尾氏)

IT戦略本部 IT推進部 部長
若尾武司氏
こうして同グループは、Microsoft 365の導入と並行して、SSO、クラウドセキュリティの検討も開始することになった。
たどり着いた「シンプルに守る」方法
HENNGE Oneは、Microsoft 365などのクラウドサービスを安全に利用することを支援するクラウドセキュリティサービスであり、国内の導入企業数は3200社を超える実績を持つ。HENNGE Oneを選択した理由について、IT戦略本部 IT開発部 IT開発第2課 課長 石暮昭教氏は次のように述べる。
「SSOのためにHENNGE Oneを検討していたら、それ以外にもさまざまな機能を持っていることが分かってきました。メールセキュリティではIIJのセキュアMXサービスというサービスを使っていたのですが、HENNGE Oneに同様の機能があることも分かりましたし、標的型攻撃メール訓練の機能まで含まれていることも分かり、セキュリティまわりをHENNGE Oneで統一できると判断したのです」(石暮氏)

IT戦略本部 IT開発部 IT開発第2課 課長
石暮昭教氏
HENNGE Oneのエディションは、大きく次の3つに分かれる。
- Identity Edition:認証基盤サービス。アカウント管理を中心にシングルサインオン、アクセス管理、不正アクセス対策を提供する。
- DLP Edition:情報漏えい対策サービス。メールを軸にフィルタリングや監査、脱PPAP対策などを提供する。
- Cybersecurity Edition:サイバー攻撃対策サービス。サンドボックスや振る舞い検知、標的型攻撃メール訓練などを提供する。
さらに、3つのエディションを組み合わせたスイート製品として「HENNGE One Ultra Suite」がある。OSPグループが選択したのは、この中の「HENNGE One Pro」というすべての機能がそろった製品だ。導入数は、3000ユーザー分となる。全機能が利用できるが、価格はユーザー1人あたり1000円/月と非常にリーズナブルに設定されている。
「Microsoft 365を安全に活用するうえで求められるセキュリティ機能がすべて用意されていることから、『HENNGE One Pro』を選択しました。それまでバラバラだったセキュリティ機能を1つまとめられたことで、問い合わせ窓口も1本化でき、コストも削減できました」(石暮氏)
Microsoft 365「本格運用」に向けてセキュリティ機能を綿密準備
「SSOで認証しているのは、現時点ではMicrosoft 365のみです。これまでクラウドはあまり活用していなかったこともありますが、今後は利用するクラウドサービスが増えていくはずですので、その際にはHENNGE OneをSSOの基盤として活用することになると思います」(藤原氏)
送信メールを一時保留したり、上長の確認を経てから送ったりするメール誤送信防止機能、パスワード付きのZIPファイルをメールで送るPPAPを代替する機能、大容量ファイルを送信する機能なども、ファイルやメールの送り先との調整も必要になることから、本格的な活用は今後ということになる。
なお、メールアーカイブについては、若尾氏は次のように評価する。
「税務調査などではメールの長期間の保存が求められます。以前使っていたサービスは1年単位の契約が必要でしたが、HENNGE Oneであれば容量無制限で10年間保存できるので安心です」(若尾氏)
さらに若尾氏が高く評価するのが、標的型攻撃メール訓練の「Tadrill(タドリル)」だ。これは、契約期間であれば何度でも利用できる標的型メールの訓練サービスだ。セルフサービス型で、担当者が好きなタイミングで手軽に訓練を実施できるのが特徴だ。
「近年はサプライチェーン攻撃が急増している背景から、取引先様からセキュリティ対策を問われることが多く、標的型攻撃メール訓練も実施することがマストになっています。2024年は別のサービスを利用したのですが、HENNGE OneにTadrillが含まれているので、今後はTadrillを使って訓練を実施していく予定です」(若尾氏)
DX推進にAI活用、「成功の条件」は“足元固め”にあり
「まずは、全従業員がMicrosoft 365に慣れることが先決」と述べる藤原氏だが、それが実現したあとの展望については、次のように期待を語る。
「次のステップは『データの整備』です。現在は別システムで社内文書を管理していますが、将来的にはSharePointのポータルに統合したいと考えています。それができたら、いよいよCopilotを導入して生成AIの本格的な活用につながっていくと思います」(藤原氏)
さまざまな分野でAIが導入・活用されることで、今後、企業のビジネスは大きく変化するだろう。AIを活用できるかどうかが、今後の企業の命運を左右するといっても過言ではない。
OSPグループがMicrosoft 365を導入するのも、こうした時代に適応するためだ。ただし、そこには必ずセキュリティが求められる。HENNGE Oneの役割も、まさにそこにある。HENNGE Oneで「セキュリティ」という足元を固め、Microsoft 365でDXを推進する同グループの今後に、ぜひ注目したい。