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  • 2024/04/22 掲載

偽装一人親方問題とは何か、なぜ起きる?2024年問題が「追い打ち」になるワケ

連載:現場の声から読み解く建築業界のリアル

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建設業界において、一人親方は約51万人おり、業界内で働く人の約15%を占めているといわれています。しかし、この一人親方の中には、自ら一人親方を選んでいるわけではない、いわゆる「偽装一人親方」も含まれています。偽装一人親方とは何なのか、なぜ生まれたのでしょうか。「建設業の2024年問題」の期限を迎えてもなお、解決されていないこの問題をどう乗り越えていくべきなのかについて、解説します。

執筆:社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田佳孝

執筆:社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表 浜田佳孝

社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に「 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル」がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。

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建設業の2024年問題で浮き彫りになった「偽装1人親方」問題とは
(Photo/Shutterstock.com)

国交省も対策に乗り出した「偽装一人親方問題」

 近年、「一人親方を雇用するべきかどうか」といった話を聞くようになりました。一人親方は個人事業主であるため、「雇用」というワードが出てくるのは不自然に感じますが、なぜそのような話が出てくるのでしょうか。

1ページ目を1分でまとめた動画
 この背景には、企業(元請業者)のコンプライアンスへの意識の高まりとインボイス制度の導入が大きく関係しています。国土交通省では2020年以降、「建設業の一人親方問題に関する検討会」を複数回実施しています。

 そこでは、いわゆる「偽装一人親方問題」を大きく取り上げており、偽装一人親方の撲滅・是正に向けた「下請指導ガイドライン」の改訂作業などを行っています。偽装一人親方とは、実態上雇用契約にある従業員を、請負契約の一人親方として扱うことをいいます。

 そして、下請指導ガイドラインとは、労働者性の強い一人親方が在籍している企業を現場入場させないように元請業者に求めるといったものになります。

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規制逃れを目的とした偽装一人親方問題の対策方法とは
(出典:国土交通省

 この考えが広がることで、必然的に偽装一人親方を下請業者として選んでいる建設業者は、厳しい立場に立たされることになります。

なぜ?偽装一人親方が生まれてしまう背景とは

 そもそも、この偽装一人親方が生まれる背景としては、厚生年金保険や雇用保険、健康保険など国の保険に加入しなくていいように、つまりは、雇用ではなく業務委託にすることで、企業がこれらの費用負担を逃れられるようにしているのです。

 しかし、偽装一人親方にさせられた人にとって、これは大きなデメリットとなります。たとえば、雇用保険に加入していれば、失業した際に国から給付を受けることができます。厚生年金保険に加入していれば、将来、受け取れる年金額が増えます。このようなメリットを享受できなくなってしまうのが、一人親方なのです。

 さらに、この現状に拍車をかけているのが2023年10月から施行された「インボイス制度」です。一人親方の多くは、免税事業者のため、今後、免税事業者の一人親方と取引をしていると、消費税について企業側が多く負担しなければならなくなるため、取引を継続するのか選択を迫られることになります。

 これまで、意図して偽装一人親方にさせていた企業の場合、国の保険に未加入にしていることで費用を浮かせていましたが、インボイス制度による消費税負担増があることで、そのメリットも享受できなくなります。

 これらのバランスをどう取るか、ということを今後検討しなければならない企業増えるでしょう。それと同時に、一人親方として偽装させている企業側はすでに違法な働き方を強いていることを認識しなければなりません。 【次ページ】「建設の2024年問題」が追い打ちとなる事態に…

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