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- 2024/07/16 掲載
空飛ぶクルマは「飛ぶ飛ぶ詐欺」?大阪万博で各社「デモ飛行」の厳しい現実
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
AAMのパリオリンピックでの商用飛行は「なし」
欧米のAAMメーカーは、当初2024年のパリオリンピックでの商用運航開始を目指していた。しかし、計画全体に遅延が生じており目標達成が困難な状況にある。これは主に各国の規制や認証プロセスに予想以上に時間を要していることが原因とされている。その中でも、先んじているのはJALが提携するドイツのボロコプターだ。6月21日に在仏日本商工会議所は、同社がパリオリンピックの期間中に試験飛行を行うことを発表した。機体は欧州航空当局(EASA)の型式証明(TC:開発した航空機が航空当局の審査により安全に空を飛ぶことを立証する耐空証明手続き)をまだ得ていないが、商業営業に替わり、無償の試験飛行に限定することで許可された。ルブルジェ空港、シャルルドゴール空港、そして、パリ市内のオーステルリッツ駅付近のセーヌ川上に発着施設が整備され、操縦士と乗客1名の2人乗りにて運航される。パリ市内は建物上空を避け、セーヌ川の上空を飛行する。
日本では、スカイドライブ(本社:愛知県豊田市)が唯一AAMの設計、製造を行う。同社は、2025年の大阪・関西万博での商用飛行を目標に、日本国内および国際的な型式証明獲得に向けたプロセスが進行中であった。ちなみに、同社の米国連邦航空局(FAA)にへの型式証明の申請は、4月29日に受理され、現在審査中とのこと。
しかし、同社は6月14日のニュースリリースで、来年の万博では商用飛行ではなくデモ飛行を行う旨を発表した。商用飛行とは、利用者から運賃を収受し、定期的に定点を輸送することだ。いわゆる公共交通機関にあたる。今回スカイドライブはこれをいったん延期して、一般客の利用は想定せず、パリオリンピックでのボロコプターと同様に、飛んで見せるだけのデモフライトを実施すると発表したのだ。
スカイドライブ、FAAの型式証明に向けた戦略的判断を説明
スカイドライブの広報を務める宮内 純枝氏は、万博でのデモ飛行実施について、次のように語った。「現在日米での型式証明の審査を並行して行っています。これにより、経営資源や研究開発における資源を分散させないメリットがあります。2025年の万博での商用飛行は困難ですが、デモ飛行を通じて技術の信頼性と安全性を示します」(宮内氏)
宮内氏は明言を避けたものの、商用飛行が2026年以降にずれ込む可能性が高いことを示唆した。さらに「我々の最優先事項は安全性であり、そのために必要な認証を確実に取得することが重要です」と強調した。FAAの型式証明は、単に米国市場への参入を意味するだけでなく、国際的な安全基準の証明ともなる。これは他国の認証取得をも容易にし、グローバル展開を加速させる重要なステップとなる。
FAAの申請と、商用飛行からデモ飛行への変更というリリースを同時に行ったことについて宮内氏は、「万博での飛行の目標がデモフライトになり、皆さまのご期待に至らないものの、当社の開発は前進をしていることをお伝えしたかったのが理由です」と述べた。 【次ページ】ANA、JAL、トヨタ、丸紅ら提携各社の厳しい動向
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