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- 2024/08/02 掲載
羽田衝突事故JAL機撤去の裏側、わずか「3日で作業完了」富山の豊富産業とは
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
JALの事故機を撤去した富山のリサイクル企業
JALから撤収の任を受けたのは、豊富産業(本社:富山県)だ。同社は、2022年に2機のJALボーイング777退役機を日本でリサイクルした実績がある。今回の依頼は、それを買われたものだった。
航空ファンでさえ、航空機は「飛行機の墓場」と言われる米国のモハベ空港やヴィクタービル空港に送られて、専門業者の手によって作業が行われると考えているはずだ。国内では、住友商事は事業の中に航空機アフターマーケット事業を掲げているが、航空機部品会社の買収による事業の研究を進めている段階だ。それにもかかわらず、富山のリサイクル企業がこの事故の撤収を担ったことは驚きだろう。
機体の95%はリサイクル可能、大人気のアップサイクル品
欧州に視野を広げると、航空機リサイクル業界において世界的に有名な企業にフランスのターマック・エアロセーブがある。同社は2007年に創業し、航空機リサイクルの分野で高い評価を得ている。高度な技術と豊富な経験を持ち、世界中の航空会社から依頼を受ける。機材が大き過ぎて他社がなかなか手を出さない超大型機エアバスA380の解体作業ができる会社でもある。2023年2月に公開されたCNNの記事によると、航空機のリサイクルステップは次のとおりだという。
「リサイクルは家庭で行うように、航空機のさまざまな部品を再利用し、寿命を延ばすことから始まる。よって最初のステップは、他の航空機で再利用できる部品を取り出すことだ」(ターマックでセールスディレクターを務めるリオネル・ロケス氏)
航空機のさまざまな部品とは、エンジン、着陸装置、一部の航空電子機器などである。エアバスA380の場合、取り出された部品は、現役で運航中の同型機のスペア部品となるほか、訓練用としても使用される。「学校や訓練施設に部品を提供することで、新人整備士や学生たちが本物の部品を使って訓練できる」とロケス氏は述べる。
次の廃棄物処理のステップでは、アルミニウム、チタン、銅など、さまざまな素材を分別し、再生業者に渡す。航空機は、多くの部品や材料が再利用可能である。特に、航空機に使用されるアルミニウムやチタンなどの貴重な金属は再利用価値が高い。
海外でリサイクルするための空輸費用は非常に高額であり、航空会社にとって大きな負担となる。しかし、国内で作業を行うことで、この輸送コストを大幅に削減することが可能となる。また、地方空港で解体の拠点ができれば、アジア各国などからの機体の解体も請け負うことができる。それを見学に来る人なども増えて空港の活性化にもつながるなど、メリットが多い。
ちなみに、ボーイング777などの現行の機体ではリサイクル率は95%で、最近は機体部品から製作されるアップサイクル品が人気だ。ANAは、コックピットパネルやドアなど、JALはライフベストで作ったバッグや、キャビンウィンドウを加工した時計など販売する。機体から取り下ろしたままのオリジナルの風合いを楽しめ、1点ものにあこがれる航空ファンや若者の支持を集める。 【次ページ】豊富産業 事業部長語る、JAL機撤去の裏側
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