• 2025/05/20 掲載

「防衛費増額」は実は不要? 日本が見習うべき台湾の「コスパも最強」防衛戦略とは

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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トランプ政権が発足して、はや100日が経過した。相次ぐ同政権の「無茶ぶり」に振り回されている各国だが、日本もその例外ではない。中でも今後、日本の頭を悩ませそうなのが、防衛費の負担増額だ。緊張感を増す東アジア情勢などにより、国防のための増額はやむを得ないとの雰囲気もある中、増額は果たして防衛力の「最大化」に最善の策と言えるのだろうか。限られた予算の中でも確固たる防衛力を担保する手法について、台湾のユースケースをもとに元プレジデント編集長の小倉健一氏が考える。
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防衛費が増額の一途をたどる現状を考える
(Photo/Shutterstock.com)

トランプ政権下で見込まれる「負担増」

 「防衛力の抜本的強化」を目的として、日本の国防予算はここ数年で大幅に増額された。それでも足りないと見えるのか、トランプ政権において、米国防総省の国防次官(政策担当)エルブリッジ・コルビー氏は「日本は非常に裕福だ。なぜ彼らは脅威に見合ったレベルの支出をしないのか」と日本の防衛費の水準が低いと怒りをあらわにしている。

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コルビー氏は日本がより防衛費を増額するべきだという考えを示している
(写真:The New York Times/Redux/アフロ)

 こうした米国の要求は、単に同盟国への負担増を求めるものと見るべきではない。特にトランプ大統領は、一貫して掲げる「自国ファースト」の理念により、明らかに他国の紛争への積極的関与を避ける方向へと舵を切った。これは、日本自身の防衛努力が一層問われることを意味し、とりわけ台湾海峡を巡る緊張が高まる今日において、台湾有事がより現実的な脅威として迫っていることの裏返しとも言える。

 日本の防衛費の増額については、米国からの圧力もあるものの、「安全保障」と名の付く分野では莫大(ばくだい)な支出が許容される土壌が日本にはあるように感じる。無駄があったり効率の悪さがあっても、それには目をつぶり、生命と財産を守る最後の砦なのだから仕方がないと考えてしまうのだろう。

増額は仕方ない?それは「大間違い」と言えるワケ

 しかし、実際にはこれは間違った考え方と言えそうだ。先日筆者が訪れた台湾・台北にて意見交換をした、同国立法委員(日本の国会議員に当たる)の陳冠廷氏は、筆者に対して、こう述べた。

「このドローンのように、安くて、大量に作れる、効果的なドローンなどの攻撃能力が必要です」

 陳氏が言うこのドローンとは、9万円程度で製造できる滑空式の攻撃型ドローンである。これで何十億円とする戦車を破壊できたら大きな戦果と言えよう。陳氏の発言を受け、筆者は、以下のような見解を伝えた。

「米国のトランプ大統領が防衛費を積み増せと、日本にも台湾にも言っている。しかし、防衛力を上げるためには、金額を積み増していくという発想よりも、支出できる予算の枠内でいかに最大限の抑止力や効果を発揮させるという考えに立たないと危うい」

 陳氏は「その通りです。軍事予算に回すことで、国民の生活に回すべきお金がなくなってしまいます」と答えた。

 陳氏の指摘は、台湾のみならず日本にとっても極めて重要な示唆を含んでいると言える。中国の公表国防費は日本の4倍以上とも言われ、実際の支出はさらに巨額であると見られている。このような圧倒的な物量の差を前にして、日本がいくら防衛予算を積み増したところで、正面から対抗しようとすれば焼け石に水だ。

 もちろん、現場の部隊から「ミサイルを10発欲しい」「最新鋭の戦闘機がもっと必要だ」といった、より高性能な武器を求める要望が次々と出てくるのは当然のことである。しかし、そうした個々の要求に応え続けていったとしても、全体的な戦力差という根本的な課題が埋まるわけではない。

 日本もまた、台湾と同様に、限られたリソースの中で最大限の効果を追求するべく、徹頭徹尾、防衛力の在り方を効率性の観点から見直さなければならない。日本や台湾を中国が攻撃すると大変な目に合うと信じてもらうこと、これが抑止力であり、限られた予算の中でそれをどう最大化するのかという点が重要だろう。 【次ページ】台湾の「防衛体制」を見習うべき理由とは
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