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  • 2024/08/27 掲載

CBAM(炭素国境調整措置)とは?規制の「対象製品」、義務違反の「罰則」やさしく解説

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CBAM(炭素国境調整措置)とは、EU(欧州連合)域外から輸入される一部産品に対して、温室効果ガス(GHG)の排出量に応じた関税が賦課される仕組みを指す。EUはこのCBAMを2026年1月から適用すると発表しており、自社への影響を懸念する企業は多いのではないだろうか。本記事では、そもそもCBAMとは何か、具体的にどのような産品に対して関税がかかるのか、いつごろからCBAMが適用されるのか解説したい。
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2026年から本格的に運用されるCBAM(炭素国境調整措置)とは?
(Photo/Shutterstock.com)

CBAM(炭素国境調整措置)とは

 CBAM(炭素国境調整措置)とは、EU(欧州連合)域外から輸入される一部産品に対して、温室効果ガス(GHG)の排出量に応じた関税が賦課される仕組みのことだ。「対象製品の生産時に発生する二酸化炭素(CO2)排出1トン当たりいくら」というように、炭素税と関税をかけ合わせた「炭素関税」の支払いを企業に義務付ける。

 2023年5月にEUでCBAM設置規則が施行され、本格的な運用開始は2026年を予定している。

 CBAMの目的は、大きく分けて2つだ。1つ目が、「温室効果ガスに対する規制の緩い国に対しても気候変動対策を促すこと」である。

 もう1つの目的が「EU域外と域内での炭素価格の差額をなくすこと」だ。すでに、EU域内で生産された製品や企業・施設には、欧州域内排出量取引制度(EU-ETS)という制度により、カーボンプライシング(炭素価格)が上乗せされており、EU域外の製品や企業・施設との不公平が生じている状況があるためだ。

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CBAMの目的は大きく分けて2つある。1つ目が、温室効果ガスに対する規制の緩い国に対しても気候変動対策を促すこと。もう1つの目的が「EU域外と域内での炭素価格の差額をなくすこと」である。後ほど詳しく解説する
(Photo/Shutterstock.com)

CBAM移行期間にも発生する…「罰金」とは?

 CBAMが本格的に運用されるのは2026年からであり、2023年10月から2025年末までは移行期間が設けられている。

 移行期間中は課徴金が発生しないものの、事業者には「CBAM対象製品の総量」や「製造過程で発生する温室効果ガス排出量」、「原産国で支払った炭素価格」などについて、四半期ごとに「CBAM報告書」としてまとめ、EUに対して報告する義務が課される。具体的には、オンライン上の登録システムCBAM移行期登録簿(CBAM Transitional Registry)への情報登録を求められる。

 報告義務に違反した場合、未報告のCO2排出量1トン当たり10~50ユーロの罰金が科される。2回以上連続して不完全または不正確な報告書を提出したり、6カ月以上報告を怠ったりした場合は、より高い罰金が科せられるため注意が必要だ。

 一般的に、システムに登録すべき情報は生産企業側が管理しているため、実質的には輸入者からの照会を受けた生産者は、速やかな算定が求められるだろう。

 CBAMが本格適用されるまでの主なスケジュールは、以下のとおりだ。

時期 実施内容
2023年5月 CBAM設置規則が施行される
2023年10月 CBAMの移行期間がスタート
対象品目の輸入者またはその間接通関代理人は、各四半期の1カ月後までにCBAM報告書を提出する
2024年7月末まで CBAM報告書に用いる総排出量の算出方法に当該算出方法を示した上で、任意の方法を使用可能
2024年12月末まで CBAM報告書に用いる総排出量の算出方法に、対象製品の生産国での炭素価格制度や確立された測量基準を使用可能
2025年12月末まで 欧州委員会が、カーボンリーケージのリスクがある製品をCBAM対象製品に追加するか評価する
2025年12月末 CBAMの移行期間が終了する
2026年1月 CBAMの本格適用がスタート
輸入に先立ち、輸入者は認可CBAM申告者としての認定を受ける必要がある
(出典:CBAM設置規則および移行期間における義務に関する実施規則より作成)

CBAM導入の背景

 そもそも、なぜCBAMが施行されることになったのか。CBAM導入の背景には、EUが掲げるGHG排出の削減や、カーボンリーケージ(炭素漏出)のリスクが挙げられる。それぞれについて、詳しく見ていこう。

■GHG排出55%削減を掲げる「Fit for 55」
 2019年、欧州委員会は欧州気候法により、2050年までにGHG排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを義務化した。また、欧州グリーンディール政策では「EU域内のGHG排出量を2030年までに1990年比で少なくとも55%削減する」という目標を掲げている。このGHG削減目標を実現するために策定されたのが、2021年7月に発表された政策パッケージ「Fit for 55」だ。

 CBAMは、「Fit for 55」における取り組みの1つとして設立された。

■カーボンリーケージへの対応措置
 CBAMは、カーボンリーケージ(炭素漏出)のリスクに対処する措置として期待を集めている。カーボンリーケージとは、GHGの排出規制が厳しい国の企業が生産拠点や投資先を規制の緩い国へと移転し、結果的に地球全体の排出量が増える事態のことを指す。

 EUのように炭素制約を設け気候変動対策に積極的に取り組む地域の製品はコスト上、不利となり、規制の緩い国外へ産業が流出したり、安価で炭素効率の低い輸入品が流入したりしやすくなる。

 カーボンリーケージが発生すると、EUのGHG削減目標に悪影響が生じるだけでなく、世界全体でのGHG排出量増加につながる恐れもある。これらのリスクに対応する目的で、CBAMが設置された。

CBAMの対象分野・品目は? どんな製品に関税がかかる?

 現時点において、CBAMの対象となる製品群は一部の分野に限定されている。「カーボンリーケージの重大なリスクが想定される製品セクターであるか」「最大規模のGHG排出の1つに含まれるか」「生産コストに占める炭素コストの割合の高さ」などが考慮されている。

 現在のCBAMの対象品目は、以下の6つだ。ただし、EUは今後対象品目を拡大していく方針を示しているほか、英国などEU以外の国・地域でCBAM導入が導入される可能性もある。

分類 対象製品
セメント カオリン系粘土、セメントクリンカー、白色セメント、アルミナセメント、その他の水硬性セメント
電力 電力
肥料 硝酸・硫硝酸、無水アンモニアおよびアンモニア水、硝酸塩、窒素肥料およびその他肥料
鉄鋼 鉄および鉄鋼(ただしフェロシリコン、フェロシリコマンガンなどケイ素化合物、鉄鋼スクラップを除く)、凝結させた鉄鉱、鋼矢板および溶接形鋼、レール(鉄道用建設資材)、鋳鉄管、鉄鋼管および継手、構造物およびその部分品、鉄鋼製の貯蔵タンク・ドラム・缶など容器、ねじ・ボルト・ナット・リベット、その他鉄鋼製品
アルミニウム アルミニウム塊(スクラップを除く)、粉・フレーク、棒および形材、ワイヤー、板・シート・ストリップ、アルミニウム箔、アルミニウム製の管および継手、タンク・ドラム・缶など容器、圧縮ガス用または液化ガス用のアルミニウム製容器、より線・ケーブル・組みひもなど(電気絶縁したものを除く)、その他アルミニウム製品
化学品 水素
(注)対象製品の詳細はCNコードの確認が必要。
(出典:CBAM設置規則を基に作成)

CBAM移行期間中、企業は何をする必要があるのか?

 CBAMの移行期間中に求められる対応を押さえておこう。

 2023年10月から2025年12月31日までの移行期間中、対象製品の税関申告書を提出している「輸入事業者」または「間接的通関代理人」には、四半期ごとに体化排出量を報告する義務がある。CBAM移行レジストリ(CBAM Transitional Registry)と呼ばれるオンライン上の登録システムを通じて、報告する仕組みだ。

項目 概要
報告対象品 EU域内に輸入されるセメント・電力・肥料・水素・鉄・鉄鋼およびアルミニウム
対象原産国 EU域外の国
EFTA(アイスランド・ノルウェー・スイス・リヒテンシュタイン)などは適用対象外
報告内容
  • EU域内に輸入した物品および生産情報
  • 直接排出量
  • 間接排出量(製品の製造工程で消費される電力生産による排出量)
  • 原産国で支払われた炭素価格
報告期限 各四半期の終了後1カ月以内
義務違反 CBAM報告書を提出しない場合、未報告となった含有炭素排出量1トンあたり10~50ユーロのペナルティ
【次ページ】CBAM本格始動後、企業は何をする必要があるのか?
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