• 2026/01/21 掲載

【建設業向け】約40年ぶり「労働基準法」大改正、給料はどうなる? 影響大の4ポイント(3/3)

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ポイント(2):有休を取ると「なぜか給料が下がる」問題

 年次有給休暇制度を巡る今後の議論において、重要な論点の1つとなっているのが、「年次有給休暇を取ったときの賃金をどう計算するか」という点です。

 労働基準関係法制研究会報告書では、年次有給休暇について「労働からの解放を確保する制度」であることを前提としつつ、その実効性を阻害している要因について検討が行われています。その中で、賃金算定方法が労働者に不利益を及ぼしていないかという点も、現在、検討課題として位置づけられています。

 現行の労働基準法では、年次有給休暇取得時の賃金について、下記のいずれかによることが認められています。

1.通常の賃金
2.平均賃金
3.標準報酬日額を基準とする方法

 しかし、どの算定方法を採用するかによって、実際に支払われる賃金額に差が生じる場合があります。

 この点について、日給制・時給制が多い業種においては、年次有給休暇を取得した場合に、結果として賃金が低く算定されているケースが問題として指摘されています。

 特に建設業では、日給制を採用している事業者が多く存在します。年次有給休暇を取得した日について「通常勤務した場合に得られたであろう賃金水準」と比較すると、実質的に不利益な取り扱いとなっている可能性が、問題点として考えられます。

 こうした賃金算定の在り方が、年次有給休暇の取得を心理的・経済的に抑制している可能性も否定できません。制度上は年次有給休暇が付与されていても、「休むと賃金が下がる」という認識が広がれば、労働者が取得をためらう要因になり得ると考えられます。

 この論点は、単に年次有給休暇の取得日数を増やすかどうかという議論ではなく、制度の中立性・公平性をどのように確保するかという、より本質的な問題を含んでいます。

 建設業のように日給制が一般的な業界において、年次有給休暇取得時の賃金算定が実態に即したものとなっているのか、その妥当性が改めて問われていると言えるでしょう。

 建設業の事業者としては、現在採用している年次有給休暇取得時の賃金算定方法が、労働者にとって不利益なものとなっていないかを、改めて点検しておくことが重要です。

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年次有給休暇中の賃金は、法律上「3つの計算方法」から選べるが、どれを採るかで実際の支給額は大きく変わる。日給制・出来高制が多い建設業では、休むと実質的に損をする設計になりやすいことが分かる
(出典:厚生労働省『労働時間法制の具体的課題について』)

 制度そのものへの対応だけでなく、その運用が「休むことを前提とした制度設計」になっているかどうかが、今後はより厳しく問われていくことになると考えられます。

ポイント(3):本当に残業を把握できているか

 労働基準関係法制研究会報告書では、今後の制度見直しに向けた検討テーマの1つとして、企業による労働時間に関する情報開示の在り方が整理されています。

 これは、単に行政監督のための資料整備を求めるものではなく、労使双方が労働時間の実態を正しく共有できる環境を整えることが制度の前提条件である、との問題意識に基づくものです。

 報告書では、時間外労働の上限規制や割増賃金といった制度を適切に機能させるためには、労働時間に関する情報が労働者に対して適切に開示されていることが大切であると指摘しています。

 労働条件分科会においても、そもそも労働時間の把握が適切になされていないため、団体交渉や司法の場で、労働者側が長時間労働を立証することが難しくなっている点を指摘しています。

 この論点は、建設業においても関係してきます。

 建設業では、現場単位で労働時間が管理されることが多く、労働者が自らの時間外労働の累積状況や、法定上限との関係を正確に把握しにくいケースも見られます。

 今後は、企業側が労働時間に関する情報をどのように開示し、共有していくのかが、制度運用上の重要なポイントになると考えられます。

ポイント(4):「管理職だから残業代なし」は通用するのか

 また、研究会報告書では、実労働時間規制が適用されない労働者についても、改めて検討対象として整理されています。

 具体的には、労働基準法上の管理監督者等について、その該当性や処遇の在り方が論点とされています。管理監督者は、労働時間、休憩、休日に関する規制の適用が除外される一方で、実態としては長時間労働が常態化しているケースも少なくないとの指摘があります。

 労働条件分科会では、名目上は「管理職」であっても、実態としては労働時間や業務内容について裁量が乏しい者が、管理監督者として扱われている事例があるのではないかという問題意識が示されています。

 この点については、管理監督者の範囲を広げる議論ではなく、現行制度の適正な運用がなされているかという観点からの検討であることが確認されています。

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店長や工場長ですら否定されてきた管理監督者性。現場責任者を「管理職」と扱う建設業の実務も、同じ論理で見直される可能性がある
(出典:厚生労働省『労働時間法制の具体的課題について』)

 建設業においても、現場責任者などが管理監督者として扱われているケースも見られますが、実態として労働時間や業務遂行にどの程度の裁量があるのかについては、慎重な整理が必要です。

 報告書が示す方向性は、管理監督者制度そのものを否定するものではなく、実態と法的な整理の乖離が生じていないかを点検すべき段階に来ている、という問題提起だと受け止めるべきでしょう。

 今後の制度見直しにおいては、労働時間の情報開示の在り方と併せて、管理監督者の位置づけについても、より丁寧な整理が求められる可能性があります。

 建設業の事業者においても、誰を管理監督者として扱っているのか、その実態が法の趣旨と整合しているのかを、改めて確認しておくことが重要になると考えられます。

建設業者は結局「何から始める」べき?

 今回の労働基準関係法制を巡る議論は、単なる規制強化や緩和を目的とするものではなく、現代の働き方に即した制度の再整理を目指すものです。

 特に建設業においては、偽装1人親方問題、年次有給休暇取得時の賃金算定、労働時間の情報開示や管理監督者の位置づけなど、実務に直結する論点が多く含まれています。

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労働基準法改正で建設業が直面する4つの論点を一覧。いずれも「実態ベース」で見直される方向にあり、現場の慣行が通用しなくなる可能性がある
(画像:本文をもとにAI(Gemini/Nano Banana)を使用して生成)

 今後は「制度があるか」ではなく、「その運用が実態と整合しているか」が問われる局面に入ります。

 法改正の動向を注視するとともに、自社の労務管理が現場実態に即したものとなっているかを、早い段階で点検していくことが、将来的なリスクを抑える上で重要だと言えるでしょう。

 特に、建設業では、労働基準法などの考え方に基づいた「労働時間の管理」を十分にできていない企業も多く見受けられます。労働時間を正確に把握できているか、それに基づいて時間外労働の割増賃金などを適切に支払えているかを、改めて企業全体で確認するところから始めるのがスタートだと考えます。

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