- 2026/01/21 掲載
【建設業向け】約40年ぶり「労働基準法」大改正、給料はどうなる? 影響大の4ポイント(2/3)
【労基法改正の要点整理】国は何を「問題だ」と考えたのか
1.労基法改正の出発点現在の議論の出発点となっているのが、「労働基準関係法制研究会」です。
この研究会は、働き方改革関連法が実際にどう運用されているかを踏まえ、今後の労働基準関係法制の在り方について、中長期的な視点から検討を行うために設置されました。
ここで議論された内容は、次に説明する労働条件分科会などでの検討を経て、最終的に国会に法律案として提出されます。
そのため、建設業の経営者はこの議論の内容を確認し、自社にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを今のうちに検討しておくことが必要です。
研究会の特徴は、単に「規制を強めるか、緩めるか」という二項対立で議論を進めている点ではありません。
軸になっているのは、次の2つです。
・労働者を適切に「守る」こと
・多様な働き方を制度として「支える」こと
これらをどのように両立させるかという考え方を軸に、議論が行われています。その背景には、少子高齢化の進行や担い手不足、副業・兼業の広がり、デジタル技術の進展など、労働環境を取り巻く急激な変化があります。
2.労働条件分科会との関係
労働基準関係法制研究会が「これからの労働基準法はどこに向かうべきか」という制度の方向性を整理する役割を担っているのに対し、具体的な制度設計や法改正の内容について議論を行う場が、労働政策審議会の「労働条件分科会」です。
現在は、研究会報告書で示された考え方を踏まえつつ、労使(会社側と労働者側)と公益の立場が集まり、具体的な論点について意見が交わされている段階にあります。
3.法改正案の現在地
現時点では、直ちに労働基準法の改正案が国会に提出される状況ではありません。しかし、次の3点については、将来的な法改正を見据えた検討テーマとして明確に位置づけられています。
・年次有給休暇制度
・副業・兼業の場合の割増賃金の取り扱い
・労働時間管理の実効性確保などについて
建設業においても、これらの動きを「まだ先の話」と捉えるのではなく、今後の実務への影響を意識しながら、早い段階から備えていく必要がある局面に入っていると言えるでしょう。
“建設業の実務”に特に影響が大きい「4つの論点」
これまで見てきたように、労働基準法を巡る議論は、すでに具体的な制度論点の検討段階に入っています。建設業の実務にとって特に影響が大きいものは、主に次の4点です。(2)年次有給休暇を取得した場合の賃金を、どう算定するのか
(3)労働時間をどこまで正確に把握し、労働者に開示すべきか
(4)「管理職」として扱われている人が、本当に管理監督者に当たるのか
以下では、これらの論点について、建設業の実務に即して見ていきます。
ポイント(1):「1人親方」はもうグレーでは済まない?
労働基準法が適用されるかどうかを判断する上で最も重要な概念が、「労働者性」です。労働基準法では、労働者を「事業に使用され、賃金を支払われる者」と定義していますが、実際の判断は、この定義だけで判断されているわけではありません。
現在は、いわゆる昭和60年(1985年)の労働基準法研究会報告に基づき、指揮命令関係の有無や報酬の性質などを総合的に考慮して、個別具体的に判断されています。
しかし、この判断基準が示されてから約40年が経過し、働き方は大きく変化しました。建設業においても、1人親方や個人事業主として働く人が増え、形式上は業務委託契約であっても、実態としては労働者に近い働き方が行われているケースが見受けられます。
研究会報告書では、こうした現状を踏まえ、現代の働き方に即した「労働者」概念の在り方について、改めて検討する必要性が指摘されています。
特に建設業では、偽装1人親方と評価されるリスクが以前から問題となっていました。今後、労働者性の判断基準が整理・明確化された場合、これまでグレーとされてきた働き方が、より厳しく見直される可能性があります。
その結果、労働基準法のみならず、労災保険、社会保険、安全衛生といった分野にも影響が及ぶことが想定されます。
重要なのは、「請負契約だから大丈夫」「1人親方だから対象外」といった形式的な判断が、今後はより通用しにくくなる点です。
元請け・下請けの立場を問わず、実態としてどのような指揮命令関係があり、どのように労務が提供されているのかが、これまで以上に問われる時代に入っていると言えるでしょう。 【次ページ】ポイント(2):有休を取ると「なぜか給料が下がる」問題
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