- 2026/02/13 掲載
下請けでもなぜ儲かる…? 奈良の運送会社が「15年で8倍」成長、その秘密はたった3点(2/2)
連載:「日本の物流現場から」
「運賃、意外と高くないですね?」
トラック輸送から始まり、やがて倉庫、3PLへと事業を拡大していく──これは、運送会社における事業拡大シナリオの定番である。トラック輸送の前後には必ず倉庫や物流センターがあり、これをビジネスターゲットとするのは、営業戦略上のメリットも大きい。フジトランスポートは、あえて「倉庫業・3PL業を行わない」という経営戦略上の縛りを設けたことで、独自の進化を果たした。結果、「日本最大の純粋な運送会社」というユニークなポジションを獲得したのだ。
そこで気になるのが、運賃の設定だ。実は、フジトランスポートの運賃は決して高くない。筆者は先の社内システムとともに、運賃も見せてもらったが、思わず「意外と運賃は高くないですね?」と質問してしまった。
松岡氏は、「うちは大手元請事業者の下請け仕事も多いですから。運賃が高かったら、仕事をもらえないですよ」と笑った。
率直に言えば、筆者はフジトランスポートというブランドと独自の営業力をフル活用し、高い運賃の仕事をバンバン獲得しているものと考えていた。
「競争力の高い運賃で勝負するためには、徹底的にコスト削減を行う必要があります」(松岡氏)
トラックでわかる、徹底した「コスト削減」
車両1つを見てもそのコストへの考え方が見て取れる。最近、トラック輸送業界では庫内長さ10メートルの大型トラックが注目されている。
従来のトラックは庫内長9.6メートルがスタンダードだったが、この車両だと、1100ミリ×1100ミリサイズの標準パレットを平積みで16枚しか積めない。しかし庫内長10メートルであれば、平積みで18枚積むことができる。つまり、2段積みすればパレット4枚分、より多くの貨物を積むことができるのだ。
単純に考えれば、このトラックの優位性は明らかなのだが、実は庫内長10メートルのトラックを持て余している運送会社も少なくないという。
「トラックのスペック上は、たしかにより多くの貨物を積めるのですが、荷主側が必ずしもプラス4枚分の貨物を出してくれるとは限らないんですよ」と、ある大手運送会社関係者は筆者の取材に答えてくれた。
加えて、庫内長10メートルのトラックはショートキャブになる。ショートキャブとは、通常運転席の後部に据えられる寝台スペースがない車両で、寝台を設ける場合には、運転席の上部、従来の風防部に設置する。
ショートキャブのトラックは、運転席をリクライニングできる角度が狭まるため、ドライバーによっては嫌がる。その上、車両価格も高くなる。結局、先の運送会社は、「ドライバーの満足度も下がるし、費用対効果も得られない」として、庫内長10メートルのトラックを今後導入しないことにしたという。
フジトランスポートでは庫内長10メートルのトラックを次々に導入するだけではなく、架装メーカーの協力を得て、庫内長10メートル5センチの車両を独自開発し、コスト競争力を高めている。
トラック購入先は「2社限定」の深い理由
トラックの調達や整備に対する考え方もユニークだ。国内には4つのトラックメーカーがあるが、フジトランスポートは、三菱ふそうと日野自動車の2社からほぼすべてのトラックを集中的に購入している。
フジトランスポートでは、自社で整備工場を持っているが、トラックメーカーが増えると、その分、スキャンツール(車両に装備されたコンピューターに接続し、診断を行う道具)や部品在庫などが増えてコストアップにつながる。一方で、調達先を1社に絞ると、今度は価格交渉で不利になり、また昨今頻発する生産停止などによる調達リスクも高まる。
こういった事情を勘案し、最もコスト削減につながるのが、「トラックの調達先を2社に限定する」という選択なのだ。
さらに言うと、同じメーカーの同じ車両を多数保有していることで、故障や、早めの交換が必要な部品などの知見を得ることができる。結果、故障や定期点検等によってトラックを運行に使用できないダウンタイムを極限まで低下させることができる。
このような精度と品質の高い整備を行ってきた車両は、走行距離で比較しても程度が良い。そのため、フジトランスポートの中古トラックは高値で売買される。またグループ企業では、トラックのレンタル事業を手掛けているが、中には走行距離100万キロを超えた車両も対象にしているという。
正直に言うと、筆者は「走行距離100万キロを超えたトラックを借りるの?」と思ってしまったが、こういった整備事情を知っている同業他社には好評だそうだ。
これらの施策や営業戦略は、ボロ儲けができるという類のものではない。しかし、フジトランスポート・グループの経営においては、利益の積み上げに貢献しているのだ。
日本最大の純粋な運送会社になれた「3つの理由」
ほかにも、フジトランスポートには、安全マネジメント、ドコマップジャパンというグループ企業がある。前者は公的機関が運送会社に対して行う監査と同レベルの予備監査を提供しており、後者はドコモグループからの出資の下、フジトランスポートが行ってきた車両動態管理の仕組みをパッケージ化し外販するビジネスを行っている。これらは、「倉庫や3PLではない、運送会社がトラックを軸としたビジネス」を考え抜いた結果、生まれたビジネスと言えよう。
(1)経営をシンプルにするビジネス選択、(2)「倉庫と3PLを行わない」ことで得たユニークな経営戦略、そして(3)徹底したコスト削減。
フジトランスポートを国内最大の純粋な運送会社としてたらしめているのは、この3つが理由だと筆者は分析する。
そして、これらを実現しているのは「他社とは違うユニークな発想」と「決めた方針を徹底すること」である。特に、原価意識に対するフジトランスポートの徹底ぶりは、運送会社のみならず、すべての企業にとって学ぶべき点があるだろう。
さらにユニークなのは、2代目にしてフジトランスポートを急成長させた松岡氏のパーソナリティーである。これについては、また別の記事でお届けしよう。
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