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  • 2019/07/24 掲載

CIO補佐官が今明かす、日本政府の「クラウド・バイ・デフォルト」の全貌と実践

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2018年6月にクラウドサービスの利用を第一とする「クラウド・バイ・デフォルト」方針が公表され、既存の行政システムを含めたシステム刷新が「クラウドを最優先の選択肢」として進められることになった。ただし、実質的にどのように作業が進められるかは現時点で不透明な部分も多い。経済産業省 CIO補佐官の満塩 尚史氏とアマゾン ウェブ サービス パブリックセクター営業本部長 大富部 貴彦氏の対談から、その具体的なロードマップを探る。日本政府の「クラウド・バイ・デフォルト」戦略とは?それはどのように実践されていくのか?

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経済産業省
CIO補佐官
満塩 尚史氏

クラウド・バイ・デフォルトの5つのメリット

 日本政府は2018年1月のeガバメント閣僚会議で決定された「デジタル・ガバメント実行計画」に基づき、2018年6月、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に関わる基本方針」を決定。これにより、「クラウド・バイ・デフォルト原則」が、政府方針として明示されることとなった。

 経済産業省 CIO補佐官 満塩尚史氏は、政府情報システムがクラウドサービスの利用を第一とすることのメリットとして「生産性の向上」「セキュリティ水準の向上」「技術革新対応力の向上」「柔軟性の向上」「可用性の向上」の5つを挙げる。

「クラウドはセキュリティが不安視されがちですが、適切に利用すればシステム全体のセキュリティ水準の向上に極めて効果的です。また、膨大な行政データの活用に向け、クラウドにはあらかじめ分析ソフトウェアが用意されていること、さらに短期的な政策をスピーディーに実施していくために、システムの早期立ち上げが可能なことなどもメリットとして見逃せません」(満塩氏)

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デジタルガバメント実行計画の全体像

 デジタル・ガバメント実行計画には、オンライン原則を徹底する「デジタルファースト」、添付書類を撤廃する「ワンスオンリー」、民間サービスとの連携を含めた「ワンストップ」を3本柱とする、省庁横断の行政サービス改革も明記されている。そのため、システム改革が、今後、クラウドを中心に進むことが想像される。

 加えて、満塩氏によると、現在、経済産業省と総務省はクラウドの安全性担保に向けた各種の取り組みを進めているという。その1つが、クラウドの「安全性評価」だ。「具体的には米国のFedRAMP(フェドランプ)などを参考に策定される基準に基づいて、監査人が各サービスを監査し、“技術”・“オペレーション”・“組織”の各基準を満たすサービスを登録して公開し、いわゆるマーケットプレイスになるのではないか」と満塩氏は述べる。

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クラウドサービスの安全性評価フロー

 また、行政サービスの利用拡大を念頭に本人確認ガイドラインも策定し、従来の電子署名による本人確認の見直しにも取り組んでいる。具体的には、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の基準を参考に、グローバルスタンダードに沿った多要素認証が新たに採用される見通しだ。 これにより、すべての手続きで重厚な本人確認を求められることがなくなり、手続きのリスクに応じた本人確認手段が用いられ、利用者の利便性と安全性を考慮したサービスを提供するための下地が整えられることになる。

経済産業省によるクラウドの実践

 経済産業省では、自身がサービスプロバイダーとなって、「法人デジタルプラットフォーム」として法人の行政手続きに関するデジタル基盤の提供を企画している。その全体像は、事業者向けと民間向けのシステムを融合させた構成となっている。

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法人デジタルプラットフォームの全体像

 まず、事業者向けシステムは、「認証システム」と補助金申請や許認可を行う「手続システム」、各種データを蓄積する「データベース」(DB)で構成される。民間向けシステムは、民間向けにデータを開放する基盤システムと、ワンスオンリーのためのデータ交換基盤、DBで構成される。必要に応じて、事業者向けシステム、民間向けシステムはDBを共有することが可能になる。

 これまでも事業者向けの各種手続システムは存在していたものの、連携されておらず、複数の手続きをまとめて行うことは不可能だった。しかし、上述したプラットフォームが稼働を開始することで、来年度には、同じ認証により異なる手続きの利用が実現される。なお民間向けシステムはすでに一部が稼働を開始しており、その一部である「法人インフォ」では、法人番号を入力することで、過去に行政が公表した法人情報を確認できる状態にある。

 今後は本年度の実証実験の後、民間の会計ソフトと連携を視野に入れ、シームレスな電子申請を可能にするなど、サービスのワンストップ化に向けたさらなる機能拡張を順次、推し進めていくという。

硬直化した「調達」「契約」がクラウド移行の壁に

 一方、アマゾン ウェブ サービス ジャパン パブリックセクター営業本部長 大富部 貴彦氏は、クラウドプロバイダーの立場から、行政システムのクラウド移行に向けた課題と解決策を解説した。

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アマゾン ウェブ サービス ジャパン
パブリックセクター営業本部長
大富部 貴彦氏

「行政システムがクラウドを活用するメリットはすでに述べた通りだ。必要なときに、必要なだけ、低価格で利用できる上、リソースの共有が進むことで個別最適化の問題も回避できる。ただし、これらのメリットを享受するには、行政の構造的な課題を解消する必要がある。すなわち、調達や契約でのさまざまな制約だ。 たとえば、利用した分の料金を都度支払う、クラウドの従量課金制度は、年度ごとに目的別の予算が割り当てる予算執行法になじみにくい。同様に、システムの柔軟性を高めるには、クラウドの特徴であるリソースのスケールインやスケールアウトが有効だが、これも硬直化した調達体制ではなかなか採用が困難だ」(大富部氏)

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クラウドの普及には契約や調達体制の整備が不可欠だ

 さらに大富部氏は、こう強調する。

「クラウドのイノベーションの原動力は、絶えまない機能の進化にあります。対して、行政システムの調達は、事前に仕様を明確にすることを基に行われています。その対応も新たに求められている点です」(大富部氏)

クラウド移行と利活用の鍵を握る「クラウド標準の策定」

 海外では、欧米を中心にクラウドへの移行と利活用を促進するための制度側の対応も進みつつある。たとえば、従量課金制に対応するため納期と数量が未確定のまま契約するIDIQ(Indefinite Delivery Indefinite Quantity)の採用、単年度契約に対して年度末に翌年分のITリソースを先買いすることの認可、利用可能なサービスが固定化しないようG-Cloud上に用意されているクラウドサービスカタログを動的に更改などの対応が挙げられる。

 さらには、すでに巨大なIT資産が存在する行政システムのクラウド移行は、実際のところ、レガシーシステムが残ってしまう課題もある。これについても、米国やシンガポールではガイドラインや推奨レベルではなく、強制力を持つ大統領令などによって、クラウド移行を強力に促進している。

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 この点、満塩氏は、「日本では行政システムのクラウド化は初めての取り組みであり、政府や公共機関も現時点ではどう進めるべきかの明確な解を持ち合わせていない」と話す。

 しかし、「だからこそ、円滑な移行のためにセキュリティの実装方法などの各種標準の策定に力を入れている」とも述べる。クラウドの本格展開までを見据えると経験やノウハウの蓄積も必要とされることから、ゴールまでの道のりは決して短くない。

 経済産業省の法人デジタルプラットフォームについても、利用者拡大と機能の拡充で鍵となるのは、標準の策定となる。満塩氏は最後に次のように強調して締めくくった。

「いずれのシステムでも、最重視しているのは皆さんに広く利活用してもらうこと。行政にはさまざまな業務が縦割りで存在していますが、それらをどう標準化し、どのように政府内で使っていくかについて、できる限り早急に取り組んでいきたいと考えています」(満塩氏)



●デジタル・ガバメント実行計画
https://cio.go.jp/node/2422

●政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針(クラウド方針)
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/cloud_%20policy.pdf

●行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン(本人確認ガイドライン)
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/hyoujun_guideline_honninkakunin_20190225.pdf

●法人インフォ
https://hojin-info.go.jp/

●アマゾン ウェブ サービス :
https://aws.amazon.com/jp/government-education/

●本件に関するお問合せ:
aws-jpps-qa@amazon.com

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