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- 2023/01/05 掲載
ソフトウェア・デファインドとは?「ものづくりの常識」も変える重要キーワードの本質
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
ソフトウェア・デファインドとは
ソフトウェア・デファインド(Software Defined)とは、サーバーやネットワーク、ストレージといったハードウェアを仮想化技術で抽象化し、これらのコンピューターリソースをソフトウェアによって制御しようという考え方や仕組みを指します。従来、高度なITインフラを構築するためには費用をかけて機器を導入していく必要がありましたが、ソフトウェア・デファインドの考え方に基づき汎用的なハードウェアとソフトウェア制御を組み合わせれば、仮想的に高度なITインフラを比較的安価に構築できるようになります。
たとえば、「ソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS:Software Defined Storage)」とは、ストレージのソフトウェアをハードウェアのコンポーネントから分離してデータストレージを管理する方法を指します。これにより物理的なハードウェアを追加することなく、必要なストレージ容量を必要なタイミングで拡張できるほか、必要に応じてハードウェアのアップグレードやダウングレードが可能になります。
また、「ソフトウェア・デファインド・ネットワーク(SDN:Software Defined Network)」は、物理的なネットワークとは異なる構造のネットワークをソフトウェア的に作り出すネットワークの制御技術を指します。ルーターやスイッチなど、ネットワークを構成する機器をソフトウェアで一括制御することにより、仮想的なネットワーク構成を作り出し、物理構成に依存せずネットワーク構成を自由に変更できるようになります。
このように、SDSやSDNは、従来のハードウェアのような物理制約を受けずに、より効率的な管理やリアルタイムでの拡張が可能になるという点が特徴です。
近年の製品のソフトウェア化やネットワーク化の進展により、現在ではソフトウェア・デファインドという言葉は、「アプリケーション、ソフトウェア、ハードウェアをそれぞれ分離する仕組み」という意味でも用いられるようになってきました。
ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)とは
自動車業界では、米国EVメーカーのテスラが、事故発生の実績をもとに自動運転モードの機能強化を行い、それを反映したソフトウェアを遠隔で更新するなど、走れば走るほど機能が微調整され性能が向上するといった価値を顧客に提供しています。このような、ソフトウェアが製品の進化をけん引する新しい概念の自動車「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV:Software Defined Vehicle)」が、自動車産業の新たな発展の方向を示すキーワードとしてクローズアップされてきています。
数年前から自動車産業に起こっている変化の潮流として、CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared & Service(シェアリング)、Electric(電動化))が取り上げられてきました。この潮流は、自動車を新しい姿へと変化させるにとどまらず、自動車産業の構造をも大きく変えようとしています。
CASEを実現するためには、自動車がソフトウェア・デファインドの世界にシフトする必要があります。そして、ソフトウェア・デファインドへのシフトは、自動車のアーキテクチャだけでなく、産業構造や市場の競争原理にも大きな変化をもたらすことになります。
たとえば、燃料から走行まで、トータルで自動車の環境負荷を低減させていくためには、電動化(EV化)によって自動車自体が走行時に排出するCO2を削減するだけでなく、供給電力発電時のCO2削減、自動化やシェアリング、信号機などの都市交通インフラとの連携による自動車自体の運行効率化といった、産業界が一体となった取り組みが必要となりますが、これらの取り組みはソフトウェアの助けがなければ実現することが難しいと考えます。
このように、自動車業界にも浸透しはじめているソフトウェア・デファインドの考え方ですが、このキーワードが注目されはじめたキッカケは何だったのでしょうか。
【次ページ】ソフトウェア・デファインドが注目されはじめたキッカケ、ものづくりを変えるかもしれない理由とは? まとめて解説
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