• 会員限定
  • 2023/01/05 掲載

ソフトウェア・デファインドとは?「ものづくりの常識」も変える重要キーワードの本質

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
ストレージやネットワークの仮想化技術として「ソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS)」や「ソフトウェア・デファインド・ネットワーク(SDN)」が広がりを見せる中、近年これら技術のベースとなっている「ソフトウェア・デファインド(Software Defined)」という考え方が、自動車などにも採用され「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」というキーワードも登場しはじめています。そもそも、このソフトウェア・デファインドとは、どのような意味なのでしょうか。自動車産業だけにとどまらず、ものづくりの常識を変えるかもしれないキーワードの本質を解説します。
執筆:アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO 福本 勲

アルファコンパス 代表CEO
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)

 1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。同年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げに携わり、その後、インダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「 DiGiTAL CONVENTiON」の立ち上げ・編集長などをつとめ、2024年に退職。
 2020年にアルファコンパスを設立し、2024年に法人化、企業のデジタル化やマーケティング、プロモーション支援などを行っている。
 主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。2024年6月より現職。

photo
「ソフトウェア・デファインド(Software Defined)」とは、どのような意味か?従来のものづくりの在り方を変えるかもしれない重要キーワードを解説する
(Photo/Getty Images)


ソフトウェア・デファインドとは

 ソフトウェア・デファインド(Software Defined)とは、サーバーやネットワーク、ストレージといったハードウェアを仮想化技術で抽象化し、これらのコンピューターリソースをソフトウェアによって制御しようという考え方や仕組みを指します。

 従来、高度なITインフラを構築するためには費用をかけて機器を導入していく必要がありましたが、ソフトウェア・デファインドの考え方に基づき汎用的なハードウェアとソフトウェア制御を組み合わせれば、仮想的に高度なITインフラを比較的安価に構築できるようになります。

 たとえば、「ソフトウェア・デファインド・ストレージ(SDS:Software Defined Storage)」とは、ストレージのソフトウェアをハードウェアのコンポーネントから分離してデータストレージを管理する方法を指します。これにより物理的なハードウェアを追加することなく、必要なストレージ容量を必要なタイミングで拡張できるほか、必要に応じてハードウェアのアップグレードやダウングレードが可能になります。

 また、「ソフトウェア・デファインド・ネットワーク(SDN:Software Defined Network)」は、物理的なネットワークとは異なる構造のネットワークをソフトウェア的に作り出すネットワークの制御技術を指します。ルーターやスイッチなど、ネットワークを構成する機器をソフトウェアで一括制御することにより、仮想的なネットワーク構成を作り出し、物理構成に依存せずネットワーク構成を自由に変更できるようになります。

 このように、SDSやSDNは、従来のハードウェアのような物理制約を受けずに、より効率的な管理やリアルタイムでの拡張が可能になるという点が特徴です。

 近年の製品のソフトウェア化やネットワーク化の進展により、現在ではソフトウェア・デファインドという言葉は、「アプリケーション、ソフトウェア、ハードウェアをそれぞれ分離する仕組み」という意味でも用いられるようになってきました。

ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)とは

 自動車業界では、米国EVメーカーのテスラが、事故発生の実績をもとに自動運転モードの機能強化を行い、それを反映したソフトウェアを遠隔で更新するなど、走れば走るほど機能が微調整され性能が向上するといった価値を顧客に提供しています。

 このような、ソフトウェアが製品の進化をけん引する新しい概念の自動車「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV:Software Defined Vehicle)」が、自動車産業の新たな発展の方向を示すキーワードとしてクローズアップされてきています。

画像
自動車業界の発展において無視できない超重要キーワード「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV:Software Defined Vehicle)」とは?
(Photo/Getty Images)

 数年前から自動車産業に起こっている変化の潮流として、CASE(Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared & Service(シェアリング)、Electric(電動化))が取り上げられてきました。この潮流は、自動車を新しい姿へと変化させるにとどまらず、自動車産業の構造をも大きく変えようとしています。

 CASEを実現するためには、自動車がソフトウェア・デファインドの世界にシフトする必要があります。そして、ソフトウェア・デファインドへのシフトは、自動車のアーキテクチャだけでなく、産業構造や市場の競争原理にも大きな変化をもたらすことになります。


 たとえば、燃料から走行まで、トータルで自動車の環境負荷を低減させていくためには、電動化(EV化)によって自動車自体が走行時に排出するCO2を削減するだけでなく、供給電力発電時のCO2削減、自動化やシェアリング、信号機などの都市交通インフラとの連携による自動車自体の運行効率化といった、産業界が一体となった取り組みが必要となりますが、これらの取り組みはソフトウェアの助けがなければ実現することが難しいと考えます。

 このように、自動車業界にも浸透しはじめているソフトウェア・デファインドの考え方ですが、このキーワードが注目されはじめたキッカケは何だったのでしょうか。

【次ページ】ソフトウェア・デファインドが注目されはじめたキッカケ、ものづくりを変えるかもしれない理由とは? まとめて解説
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます

製造業界の関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます